輸入学問の功罪 この翻訳わかりますか?/鈴木直/ちくま新書/2007
マルクス資本論、ドイツの哲学書の翻訳書と翻訳家を素材とする、逐次翻訳のあり方について問題提起した好著。
逐次翻訳については、原文と一対一の関係で翻訳することから生じる、日本語としての表現制約の問題を指摘している。
もう一つは、翻訳が、同業者である翻訳家の目を気にすること、読者層が労働者まで及ぶのか、学者レベルなのかによって、翻訳文が学術的になる傾向を問題視している。
さらに、著者は、資本論の翻訳については、逐次翻訳という手段が帝国大学教授のアカデミズムと結びついた権威として機能しているとしている。
つまり、資本論やドイツ哲学の翻訳が難解であるのは、アカデミックな権威を示す一環としてそうなっているという見方ができるのである。
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