創造の方法学(高橋正昭)という本がある。
この本は、著者のフルブライト留学経験話から始まる。
著者は安保闘争に参加したいわゆる左翼だったそうだが、アメリカ留学時にアメリカ人の分け隔てない人当たりのよさ、アメリカ人学生の読書習慣、大学図書館における組織的読書への支援などを書きつづっている。
当時の日本の大学生とは大違いだということはちょっと読んだだけでわかる。
著者が体験したことを率直に書いている点において、これから大学で学ぼうとする方、特に海外留学し海外で修士号、博士号を目指す方にとっては参考になる点が多いと思う。
そして、日本の大学教授はなぜ社会で役に立たない無用な存在になるのか、その原因と対策もこの本にはしっかり書いてあるし、学生時代に経験したことなども正直すぎるぐらい正直にまとめている。
だが、この著者は、アメリカ留学で得た経験のノウハウを米軍基地反対闘争に当てはめて例示してしまう。これでは、教官として学生に勉強はほどほどにして平和運動をしっかりやろうと呼び掛けたも同然ではないかと思うのであり、仮に、そう思ったとしても本に書くべきことではなかったのだ。
選ばれて留学し、日本のエリートなのだから、学問に関連する話をする際は公私の区別の自覚くらいはあってほしいものだ。
これだけを読んだだけで、当時の日本の学生が安保闘争デモに明け暮れ、勉学を放棄し卒業し、そのうち一握りの者が、民主党政権のち中枢にいて震災がおきようと何が起ころうと、傍観していた雰囲気と対比せざるを得なくなる。
私は、大学時代、学業についてはともかく、とにかく本は読んだ。大学図書館に入り浸り、ジャンルに関係なく、本を手に取った。
従って、その習慣は卒業後も続いている。大学の教官として、書き手を認識するなら、もっとしっかりとした価値観で書いてほしいものである。
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