左京区・岡崎で開かれていた
「抱一に捧ぐ─花ひらく雨華庵(うげあん)の絵師たち」へ行って来た。
酒井抱一は日本画家の中で一番好きな画家と言っても良い。
この展覧会は抱一と彼の門下の弟子たち、
そして抱一の画風を継いだ江戸琳派の後継者たちの作品を、
江戸後期から明治、昭和の初めまでを辿るものだった。
細見美術館
https://www.emuseum.or.jp/
琳派展 24
抱一に捧ぐ ―花ひらく〈雨華庵うげあん〉の絵師たち―
https://www.emuseum.or.jp/exhibition/ex087/index.html
会期:2024年12月7日(土) - 2025年2月2日(日)
※一部展示替えあり
江戸生まれの抱一は吉原の近くに自分の庵を持ち、
そこを雨華庵(うげあん)と称して、そこで作画をし、
また彼を慕い、彼の画風を学ぼうとする弟子たちを指導する一種の画塾でもあった。
尾形光琳に私淑し、光琳に学んだ抱一は江戸琳派と呼ばれる。
彼の弟子たちも江戸琳派の継承者たちであった。
雨華庵は抱一が開き、弟子たちに教える画塾であったが、
抱一の死後も抱一を慕う彼の弟子たちが雨華庵を受け継ぎ、
そこで師の画風を江戸琳派として受け継いだ。
雨華庵は昭和の初め、戦前まで続いたという。
現在は東京に抱一の住居跡という石碑があるという。
抱一とその弟子たちやその一派の展覧会と言うので喜んで見に行った。
主に弟子たちの作品の展示とはいえ、抱一の作品もあるだろう。
新聞に特集されていた作品を見ていたら、抱一そっくりの作品もあった。
これは期待出来る!と大喜びしたのだ。
抱一の何とも言えない上品で清楚な作風、丁寧な筆致、
色使いの絶妙さ、構図の粋さ、などを見ていると心が洗われるようなのだ。
それくらい抱一に魅せられている身としては見に行かざるを得ない。
が、いざ行ってみると、抱一の作品はほんの少しだけ、それも墨絵が殆どで、
抱一の弟子たちや雨華庵で学んだ一派の作品は、
なんというか、平凡で魅力に乏しいと思ってしまった。
1800円ととても高額な展覧会で(最近行った中で一番高い)
割引を使っても100円引きの1700円。
(お金のことばかり言って我ながらはしたない💦が)
1700円で無名の画家たちの平凡な作品を見たのか─と、
期待が大きかっただけに始めは少しがっかりしたのだった。
が、抱一風や抱一流を期待して見に行ったのだったが、
抱一の弟子たちや一派の人たちにも彼らなりの個性がある。
抱一に倣ったとしても、抱一風ばかりではなく、
画家一人一人に画家たちなりの画風があるのだと思い直した。
それでなんとなく納得したのだった。
展覧会では抱一の作品も数点展示されていて、
殆どが墨絵の掛け軸の小品だったが、
その中で細見美術館の所蔵する「白蓮図」が展示されていた。
抱一の作品の中でもとても好きな作品の一つ。
これが展示されていたのは嬉しかった。
清楚な白蓮が上部に蓮の葉を纏うように花を咲かせている。
が、まもなく散ろうとするかのようで儚くも見える。
すっくと伸びる細い茎が意志を持つようで何とも上品で好きな作品だ。
構図も練られていて美しい。
抱一の雨華庵で学んだ弟子たちの中では、
山本素堂という画家の「朱楓図屏風」が目を引いた。
この一隻だけ独立して目立つようにガラスケースに入れられていたからだが。
琳派の画風をそのまま継承したような木の描き方や、
楓の赤い葉を散らしたさま、
背景のこんもりした山の緑の使い方、群青の水の流れ、
とりわけ抱一が好んだ銀地の背景を使っているのが素晴らしかった。
また雨華庵に学んだ酒井抱祝という抱一の名を継いだ絵師による
十二ヶ月花鳥図屛風は、大正から昭和にかけての作だが、
抱一の品格のある十二ヶ月花鳥図をほうふつとさせる作品だった。
見に行った時は右隻のみの展示だった。
描き表装(掛け軸の表装部分に絵を描く)は
琳派の画家の好んだ手法だが、この展覧会にも展示されていた。
酒井抱祝「鯉に燕子花図」というメインに鯉を描き、
表装部分に燕子花を華麗に描いていて華やかだった。
琳派らしい絵に少しうれしくなった。
(京都新聞の図版より)
ユニークだなと思ったのは、これまでの日本画の花鳥図などでは脇役というか、
決して単体で描かれない土筆(つくし)や蓮華草を、
それらのみを画題として描いている図があったことだ。
山本光一という画家の「春坡土筆図屏風」は、
野の土筆(つくし)だけを画面全体に描く珍しい図だった。
こういう絵に琳派や抱一に倣うのみでない探求心を感じた。
蓮華草のみを描いた作品もあった。
また中国の蓬莱山は古来より日本絵師の代表的な画題であったそうで、
琳派や雨華庵の絵師たちも良く描いたようだが(いくつか展示されていた)、
その中で、蓬莱山がなぜか宙に浮いている作品があった。
(京都新聞の図版より「蓬莱図」)
酒井道一という画家(雨華庵を継いだ一人)の明治期の作品で、
まるでルネ・マグリットなどのシュールレアリスムの絵のようだった。
細見美術館は私設美術館のため料金も高く、展示品も少ないし、
会場内撮影禁止だし
思っていたようなものではなかったため期待外れにも思ったが、
江戸琳派━抱一の始めた画塾・雨華庵が
昭和の初期まで続いていたことは初めて知った。
そうやって抱一の精神が戦前まで受け継がれていたことは感慨深かった。
琳派の図柄は京都でも現代まで受け継がれ、暮らしの中に息づいている。
日本人に愛され育まれて来た琳派の系譜は、
だから現代人の心に受け入れられるのだと思った。
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