「尊いもの」を知っておくこと

比叡山の千日回峰行を２度も成し遂げた大阿闍梨（だいあじゃり）である酒井雄哉（さかい　ゆうさい。８７才）氏が、９月２３日にお亡くなりになりました。
ご冥福をお祈り致します。（過去記事http://blog.goo.ne.jp/isehakusandou/e/0293e9505b88f7ce9bab95a978a95cd3）

千日回峰行は、比叡山中を７年間掛けて総計で千日間も駆け巡るのですが、問題は5年目の700日の回峰を満行した後に行なわれる、自分の生死を神仏に判断して頂く「堂入り」です。
「堂入り」は９日間、断食、断水、不眠、不臥（ふが：横に寝ない姿勢）の状態で真言を唱え続けることと、不動明王に捧げる御水を汲むために歩かなければいけません。
人間としては、「断水」が最も過酷だと思います。

医学的にも腎臓への致命的な影響を与えかねません。プロボクサーの談話では、減量でも断水が最も嫌であり、精神に異常をきたしそうに成るとも言われます。
数日間も断水しますと、水の匂いが離れていても分かるそうです。
比叡山の過酷な修行では過去に死者も出ており、千日回峰行を２回も達成した行者は、千年を超える比叡山の修行歴史でも３名しか存在しません。

修行により生死を彷徨った酒井氏の発言、
「生死のふちを感じてみると、なんと尊いものをいただいているかと思うよ。だから、簡単に命を殺すようなことを決してしてはいけないんだよな」

このことを私たちも思い知らなければ生けません。
自分が生死を懸けた修行を体験しなくても、体験者の言葉を素直に聞くことが出来ますと、自分が思い知る深さにもよりますが自分自身も修行した人と同じ徳が身に付くことに成ります。
「なんと尊いものをいただいているか」・・・・まさに内在神のことです。命の元です。

この言葉が身に沁みれば、自殺などは絶対にしては生けないと分かります。
「尊いもの」を殺せば、自分の魂だけではなく、子孫縁者にも悪影響を残すことに成ります。自分だけの問題では済まないのです。
すべての生き物に、「尊いもの」は宿っています。

若い頃の酒井氏は、自ら志願して熊本県人吉の予科練の神風特攻隊に入隊しています。
若気の投げやりな気持ちを持ったこともあるのでしょうが、若い頃から生死と向き合った人物でした。
そして、過酷な修行を経験した結果、
「なんと尊いものをいただいているか」という心境に至られたのです。

私たちも、自分の右胸に内在する「尊いもの」を大切にしながら、今日を精一杯に生きましょう。
この「尊いもの」とは、アノ世でも驚くような尊い存在なのです。
だから、今でも大安心していれば大丈夫なのです。

生かして頂いて　ありがとう御座位ます

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