Dr. Jason's blog

IT, Engineering, Energy, Environment and Management

夏休み読書月間 (7) 女性専門家の半生記

2005-08-05 | Weblog
 本書は,日本を代表する物理学者である, 米沢富美子 先生 の半生記的なエッセイである.

 米沢先生は,慶應義塾大学名誉教授で,日本で初めて,女性として日本物理学会会長の会長も務められている.さしずめ,日本のキューリー夫人というところ.
 物理の研究の話しも少し含まれているが,全体としては,女性が専門的な職業人(米沢先生の場合は物理学者)として一流の仕事をしながら,結婚,出産,子育てなどをしていく上での色々な問題や体験的方策について述べられている.
 # 亡くなった御主人への,オノロケもたっぷり :-)
 

 何かの分野の専門家を目指す女性,あるいは,専門家を妻や恋人に持つ人.専門家になるかもしれない娘を持つ人に,オススメである.

二人で紡いだ物語
米沢富美子
朝日新聞社

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戦闘機や潜水艦やミサイルを買うためのお金は援助しない!

2005-08-03 | Weblog
 あちこちで 中国の軍事費 の伸びと金額について話題になっている.

 日本の防衛予算は約5兆円程度だが,これは,国のGNPを基準に考えれば多い金額ではない.
 中国のGNPは,まだ日本の1/3程度,国民一人当たりでは日本の1/30以下であるが,それでも,中国は防衛費として,公式の発表で3兆円以上,米国の推定では10兆円近い金額を使っている可能性があるらしい.

 最近は小さな会社や個人でも警備会社のサービスをうけているところが増えたが,その手の予算は,その収入や守りたい財産の大きさにある程度比例するというのは,比較的普通の感覚だと思う.このような考えは国にも当てはめることができる.
 国における収入や財産をGNPに例えるとすると,日本の1/3程度のGNPの国の防衛費が,日本の倍かもしれないというのは,非常にアンバランスな「防衛費」ではないだろうか? むしろ,すでに「防衛費」というよりは,より広い意味での対外活動を含む「軍事費」と考えるべきだろう.実際,中国がロシアから購入している新しい戦闘機や原子力潜水艦は「防衛」のための装備とはとても言えないものである.

 少なくとも,そのような国に,政府開発援助(ODA)として,何兆円も出す理由はない!

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夏休み読書月間 (6) 「話が通じない」お話し

2005-08-03 | Weblog
 最近,生業としての仕事の上でも,その他の団体での活動等でも,「話が通じない」と思うことが多い.

 もちろん,私の説明不足によるもの等も少なからずあるだろうが,明らかに先方が「相手の話しを聞いて理解しようとしていない」と思われることが多い.
 議論の論点の相違の前提について「説明は聞きたくない」と明言された人がいて驚いた話しについては, 7/10 の blog に書いた.

 そんなところに,産経新聞の書評欄で,『なぜ「話」は通じないのか』という本が紹介されていた.タイトルに惹かれたので,すぐに Amazon に注文してしまった.8/2に届いたが,夜帰宅して,一気に読んでしまった.
 筆者の 仲正昌樹氏 は,金沢大学法学部の教授だが,法学者というよりは社会思想史の研究者のようだ.何が専門かなと思って,学位論文について調べると「<隠れたる神>の痕跡 -ドイツ近代の成立とヘルダリン」という題目であった.ヘルダリンは小説家,詩人のようだが,教養のない私には,この論文題目からはどんな研究か見当がつかない.

 肝心の本の内容は,ややくどい感じはあるが,私には面白い内容だった.
 だれにでもオススメという本ではないが,最近「話が通じない」と思うことがある人は,楽しめると思う.

 それにしても,最近,「話が通じない」ことが多い.


なぜ「話」は通じないのか―コミュニケーションの不自由論
仲正昌樹
晶文社

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夏休み読書月間 (3) 女性の視点と生活

2005-08-01 | Weblog
 いつもとちょっと違うシリーズその2.女性筆者の本.
 普段,仕事関係の本や趣味の本ばかり読んでいる方にオススメ.

ヒヨコの猫またぎ
群ようこ
文芸春秋

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女の底力、捨てたもんじゃない
岸本葉子
講談社

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ことば美人は一生の得
広瀬久美子
幻冬舎

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いいかげんに片づけて暮らす
岩里祐穂
集英社

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夏休み読書月間 (2) リラックスと元気

2005-08-01 | Weblog
 いつもとちょっと違う,大人も子供も楽しめる本.
 リラックスしたい人,元気を出したい人に,オススメ.


リラックマ生活―だらだらまいにちのススメ

主婦と生活社

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だららん日和―リラックマ生活 2

主婦と生活社

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トリダヨリ

主婦と生活社

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元気を出して

PHP研究所

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そっと心にささやく元気が出る50の言葉

PHP研究所

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日本と米国,世界における日本,混沌とする世界

2005-07-24 | Weblog
  News Week 日本語版 の 2005.7.27 号には,興味深い記事が多かった.

 まず,特集 (Special Report) は,『知られざる在日米軍の素顔』(pp.42-57)と題した,在日米軍についての記事だ.第二次世界大戦が終わって60年,冷戦構造もくずれた今,日本の安全保障の戦略としての米軍駐留について,根本的に考え直す時期にきているのではないだろうか?

 さらに,国連関係の話題として,『改革を「阻む」アメリカの本音』『国連分担金以外に日本が支払うもの』(pp.34-37) という記事もあった.日本の政府/外務省のやり方の問題もあると思うが,あれほどのお金を拠出していて,それに応じた発言力が認められないというのは,どんな組織でも,根本的におかしいと思う.
 この際,国連への拠出金(分担金)を,せいぜい,フランスやイギリス並みに減額してはどうだろうか?ちなみに,現在の日本の分担は約19.5%であり,イギリス,フランスは,それぞれ 6.1, 6.0%にすぎず,中国,ロシアを合計しても,日本よりもだいぶ少ない分担である.


 『中国人ハッカー日本攻撃計画』(pp.20-21) という記事も,非常に物騒な内容だ.中国の近代化の中で,法律とそれに関連する行政の整備の遅れが一番の問題であることは,一部ではよく知られている.麻薬,密輸,コピー商品,その様々な犯罪が横行しているが,このような,情報システム上での犯罪への取り締まりには,技術的にも行政的にも,もっと力を注いでほしいものだ.

 イギリスでの爆弾テロについては,『テロ実行犯を操った黒幕の正体』(pp.28-31)という解説がある.本当に,イスラム急進派グループの洗脳によって,過激派ではない若者が自爆テロを行ったのだろうか? そうだとすると,再発を防ぐのはそう簡単ではないだろう.


 テロの爆弾といい,ハッカーのサイバー攻撃といい,全く物騒な世の中だ.



追記:
 IT業界の用語としては,ハッカー(hacker) という用語は,コンピュータ技術全体に非常に精通した,ソフトウェア技術者,特に達人的な技量をもったプログラマーのことだ.ハッカーは,同僚から尊敬されるような存在であり,その技術を悪用する者はハッカーとは呼ばれない.
 これに対して,他者の情報システムに対して,悪意をもって,侵入,情報入手・漏洩,妨害・破壊工作等を行う者は,クラッカー(cracker) という.
 本来,ハッカーとクラッカーは別けて表記すべきと思うが,この記事では,引用元の表記を踏襲した.


 *ついでに,誤字も直しました.
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ちゃんとした日本語をあやつるアメリカ生まれの詩人

2005-07-17 | Weblog
 先日,調べものをしていて, 小学館のWeb日本語 を訪れた.そのとき,初めて アーサー・ビナード氏の「アーサーの日本語つれづれ草」 を読んだ.

 米国のミシガン生まれの普通の米国人で,日本人との混血だとか,子供のころから日本に住んでいたというわけでもなく,大学の卒論で日本語に接したというビナード氏は,驚くほどちゃんとした日本語文章を書く.イタリア語もできるようだが,言葉に関しては「特別な才能」に恵まれているようだ.
 文章だけみると,「とても英語が達者な日本人」が書いたと信じても不思議ではない.
 


 休日に読むエッセイとして,だれにでもオススメできる一冊.


日本語ぽこりぽこり

小学館

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EUの抱える問題

2005-07-15 | Weblog
  7/14 の記事 に,ドイツの保守的傾向のと環境問題への対策への国民の声等について,経済の視点から意見を述べた.

  SAPIO 7/27 号 pp.71 - 89 には,「ユーロの幻想から目覚めよ」題された,EU特集がある.現在のドイツをとりまく問題や,EU全体の問題についてとても参考になった.

 簡単にいえば,
  「EU東方拡大」:旧東欧諸国,旧ソ連諸国のEU加盟 -> 安い労働力
  「イスラム教」:トルコなどのイスラム教国加盟候補
  「主要国指導者の黄昏」:ドイツ,フランス,イギリスの指導者の任期と影響力の低下
  「歴史と文化の軋轢」:第一次大戦,第二次大戦等の経緯,終わり方
 などの,問題がからみあっているという.

 欧州合衆国の理想への道は遠い.


 SAPIOは,やや偏った意見の記事もあるが,日本の新聞では判らない色々な記事がある.

 中学校,高校の社会科でも,ぜひこのような問題をちゃんと教えてほしいものだ.
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異分野の専門家との交流と「考えあう技術」

2005-07-11 | Weblog
 私は,自分の普段の守備範囲外,専門外分野の専門家の話しを直接聞いたりするのがとても好きだ.話しだけでなく,自分の知らないあるいはあまり詳しくない分野について,その分野の第一人者の書いた解説書等を紹介してもらうと,とて嬉しい.
 それは,学術的専門分野と,生業としての専門分野が異なるという,学際的な生活を20年も続けてきていることも影響しているかもしれない.


 世間には,自分の知らないあるいはあまり詳しくない専門領域の専門家の話しを聞くという場合に,極端に言えば二種類のパターンの人がいる:

 A) 異分野の専門家から,自分の知らない分野の生の知識等が得られて,嬉しい,楽しい.

 B)自分の知らないこと専門でないことを異分野の専門家から聞くと,相手が偉そうにしていると感じる,あるいは,自分は無知だといわれているように感じて,不快だ.

 私は,専門家,特に知的職業の専門家は,その業界や職位に関わらず、基本的に A)のタイプだと認識していた.「新しいことを,見聞きして吸収するのが,嬉しい,楽しい」というのが,専門知識で勝負している人の本質だと思っているからだ.
 私にとっては,「異分野の専門家との交流」は,「学び」そのものである.


 たまたま最近,長年専門家としてやってきているような人,工学博士の学位をもっているような人で,B) のタイプの人に遭遇する機会を得た.
 この B) のタイプの人の場合,ごく一般に広く知られている事実や考え方を確認のために淡々と説明されたような場合でも,「君はこんなことも知らないのか」と言われているように感じるらしい.
 
 何かの議論の中で,議論の前提となるような,事実や考え方を論理的に列挙するような説明を,そのような事実や考えかたたあることを,確認あるいは認識してもらいたいために説明をすることがある.
 私の限られた経験の範囲でも,特定の分野の専門家ではないような人の場合,あるいは,いわゆる文系の大学教育だけをうけている人の場合,このような説明を「私が知らなこと==無知であることを指摘するために説明してる」「私をばかにしている」と被害妄想的に取る人はいる.
 しかし,今回のようなケースは,非専門家,文化系の例とは違う.理工系の専門家の場合である.これは,単に「プライドが高い」というようなこととは,少し違うように思われる.むしろ,なにかのトラウマやコンプレックスの現れかもしれない.

 日本のにおいては,業界によっては,強い封建的な階層構造がのこっている.そのような業界では,普段は必ず,
   発注元:出入り業者
   上司:部下
   先輩:後輩
 というような,人間関係の上での力学の場がコミュニケーションの前提となっている.また「年功序列」も根強い.しかし,長くこのような場の中で活動していると,このような階層的な力学場が成り立たない,一般の世界でのコミュニケーションでは「何は普通か」が判らないということもあるだろう.そのことも,上記の B) のタイプの人の考え方に影響があるかもしれないと感じた.

 * 上記の記述については,是非,昨日の記事もあわせてご覧ください.


 以下の「考えあう技術」は,「知識の共有」「教えあう」「学びあう」ということについて,学校の中だけでなく広く社会の視点で,議論している.非常に興味深い内容である.

 教育だけでなく,広い意味での,学び,知識社会に興味のある方にオススメの一冊.



考えあう技術

筑摩書房

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この違和感は何だろう...

2005-07-10 | Weblog
 最近,ある団体での委員会的活動にかかわるやりとりで,色々と勉強になることがあった.

 
 [会議と実際の仕事,参加の立場]
 まず,委員会活動のあり方について.委員会では「会議で色々相談したい」という面もたしかにあるが,各委員に何らかの具体的な仕事をアサインした場合には,(時間的なリソースが限られている場合)どちらかと言えば,「会議」よりも「アサインされた仕事==作業を実際に行う」ということがより優先であると思う.なぜなら,会議は他にも沢山出席者がおり私が欠席することの損失の大半は私の意見が反映されないという部分だけだが,アサインされた仕事は私がやらなければ他の人は(特に補助や後任としてアサインされなければ)やらないことは自明である.(少なくとも,私にとっては,このことは「自明」である)

 団体の性格や委員会の内容によっては,各委員は勤務先の体面,名誉,社会的責任,間接的な利益等を担っている場合がある.例えば,勤務先が,地元の大企業や,地元の教育機関だったりする場合には,明らかに,委員の活動に勤務先の看板が否応無しについてくる.そのような場合には,会議への参加そのものは,(その人ではなく,その人が所属する勤務先とともに)非常に重要な意味をもっているだろう.
 しかし,大半の委員がそうであっても,委員によっては,その団体や委員会の活動が,完全に個人的なものである場合もある.そのような場合には,私の意見が反映されないことは,私だけの個人的な問題に近いだろう.この立場の違いについて,理解できない,もしくは,無視する人もいる.

 このような状況においては,委員会活動の委員としての,役割あるいは貢献について
   会議への参加
   委員としてアサインされた仕事==作業の実行
 とは,別々に評価されるべきものであると,私は考えているが,人によっては,そうでないと考えている人もいる.
 会議に出席せず,実際の仕事も何もアサインされていない人も沢山いる状態で,私が委員としてアサインされた仕事については,少しづつではあっても,目に見える形で実行されているのに,それには言及せず,「(貴方は会議に)参加されていないから...」というフレーズを使う人を見ていさかか驚いた.


 [忙しい]
 このような社会情勢であるので,大都市近郊では,程度の差はあれ「忙しい」と感じている人は少なくないはずだ.昔から「貧乏暇なし」ともいう.
 人によって,業界によって,実際に何時間働くと「忙しい」と感じるかは大分差があると思う.「忙しい」という言葉は,本来,相対的,主観的なものであるはずだ.
 一日に50通しかメールを受け取らないには一日に200通以上メールがくる人の忙しさは理解できないかもしれないし,残業しても一月200-250時間までしか働かない人には一ヶ月で350時間以上働く人の忙しさは想像できないかもしれない.

 そいういう中で,
  『「忙しい」というのは,「私は,貴方よりも重要な仕事をしているので忙しい」と聞こえる,よって,失礼である.』といった人もいる.
 これは,場合によってはもちろん一理あるだろう.

 しかし,一般的には,ざっと考えても,様々なパターンや意味があると思う.
  単に忙しいといいたい (口癖敵な発言)
  (同僚,同業者への牽制として)私は忙しといっておきたい
  (自分の能力が相対的に足りないので)忙しい
  たまたま(今は)忙しい
  (定常的に)いつも忙し
  私の業界は(貴方の業界より)忙しい
  私の役職は(貴方の役職より)忙しい
  私は(デマンドが高い仕事をしているので)忙しい
 
 このような,言葉の意味や状況の多様性は斟酌せずに,ただ
  「私は忙しいので...」
 と言われたり,書かれたりすると
  「私は貴方よりも重要な仕事をしていて,貴方よりも忙しいので...」
 と読めてしまうというのは,とても違和感を感じる.何かコンプレックスやトラウマがあるのだろうか?
  

 [事前の打診]
 ある種の委員会では,委員に,色々な役割,役職等を割り振ることがある.役職の中には,形式的なもの,実務的なもの,名誉的なもの,様々である.
 一般に,ある会議の席で,ある役職なり委員の「候補に推挙したい」「XXXX委員一覧案に名前を載せたい」などという場合には,事前に(その会議の前に),「貴方を,XXXX委員の候補としたいが,いかがか?」というような,打診が,メールや電話であるのが,普通であると考えている.たとえ,その会議が,準備会議的なものであっても,何らかの「事前の打診」があるのが,普通だと考えている.(少なくとも,私のまわりで活動している色々な団体では,そのようにしている.逆に,準備会議をメール上の討論ですませることはある.)
 しかし,これも,「こっちだって忙しいだから,そんなことしてられないでしょう~」ですませてしまう人もいる.同じ勤務先の上司と部下,先輩後輩,同じ出身大学の先輩後輩,仕事上の貸し等,しがらみがある場合には,「多分OKしてもらえると思った」ということで「事前の打診」を省略するということがあるのは理解できるが,そのような関係が一切ない,委員相手の場合には,やはり,予備会議の場合でも,「事前の打診」は礼儀だと思うが,そうは思わない人もいる.


 [前提の共有,異なる意見の説明]
 委員会の活動の中で,意見の相違あるいは,意見のすれ違いがあるときに,私は,前提なり,スタンスなりもふくめて,こちらの趣旨を説明して理解がされるように努力する.つまり,「前提を共有」することが重要であるという,考え方で行動している.
 しかし,ある人に,色々なやり取りの過程で「私の立場あるいは主張について,その前提がそちらに通じていないと思う.前提やスタンスは重要なので,それを改めて説明しようとしている.というのは,ご理解いただけますね?」というと,
 前提の説明などはどうでもいい
 そんな議論は不毛だ
 落としどころが聞きたい
 結論がききたい
と言われたので,非常に驚いた.

 確かに,同じ職場の,上司と部下のような関係で,上司が「結論が聞きたい」ということはありうる.また,判断の単純化/高速化ということが,ある場面で最も重要であるということもあろう.
 しかし,同じ勤務先の中での職位などの関係が無い場合に,つまり,特別な上下関係や貸し借りがない場合の,少なくとも,私のまわりで活動している人々(企業人も,大学人ともに)で,このようなことをいう人はいない.今回初めて遭遇した.
 この人が,会社の中でどのような立場で,どのような業務をされているのかは,実際には全くわからない.しかし,なにかの議論について,自分の判断の単純化あるいは高速化を強く指向して,表面的な結論だけを求め「その前提となる事項の共有」を軽視するスタンスは,今日的な「組織における知識共有」「組織における学習」「組織における知的生産」などの最新の知見からは,だいぶ違和感がある.

 もしかすると,本質的に,「意見の多様性」そのものを認められないということか?


 ご意見,コメント,ご遠慮なくどうぞ!
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山本寛斎氏のエネルギー!

2005-06-07 | Weblog
  早稲田大学情報通信研究センター 主催の GITIフォーラム に参加した.

「ディジタルコンテンツの生成,流通における課題と情報化がもたらす社会的変革」というテーマで早稲田大学の情報通信研究センターの先生方を中心にした講演があった.

 また,以下の二つの「特別講演」があった.

  Adam Hume氏 
   TV-anytime Forum副議長,
   Head of Digital Publishing and Futurology,BBC Broadcast Limited
   "Making content work harder in the new communication age"


  山本寛斎氏 デザイナー・プロデューサー
   "人間讃歌-デジタルとアナログ"


 Mr. Adam Hume は,英国BBCの,次世代技術と戦略に関する責任者であり,この2-3年のうちに実現するであろう,「新しいTV放送とコンテンツ」について講演した.

 山本寛斎氏は,世界的なファッション・デザイナーであり,イベント・プロデューサーでもある,あの, 山本寛斎 その人である.
 テレビのインタビューなどの印象で,ファッションだけでなく,非常に多面的に「クリエイティブ」な人であるという印象はもっていた.名古屋で行われている,「愛・地球博 オープニングイベント とぶぞっ ~いのちの祭~」も,山本氏のプロデュースだ.

 テレビの印象以上に,ご本人の話しを直接まじかできくと,情熱と生きるエネルギーがあふれている.

 村岡洋一早大副早朝の前にたち,「今日のフォーラムの成功は,私を読んだことです!」と言い切るあたりがまた凄い.

滅多なことでは人の話しを聞いて驚かない方だが,今日の山本氏の講演には,ちょっと驚かされた.
 とても印象深い講演であった.

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偽物が横行する国は大国にはなれない.

2005-06-06 | Weblog
 2005/6/5 の産経新聞に「日本製プリンター インク海賊版横行 中国で数百億円の被害」という記事が出ていた.
 
 昔から,香港では,プランドもののバッグや時計のニセモノが横行していることは,よく知られている.
 また,近年では,中国のオートバイメーカーが,日本製のオートバイのコピー的な製品を販売していることが問題となっていた.

 カラープリンターのカートリッジは,位置づけとしては,消耗品だが,継続的に繰り返し購入されるため,メーカーに取って重要な利益の源泉となっている.
 プリンターのトナーやカートリッジに関しては,安い「互換製品」は以前から,あちこちで販売されている.これは,ニセモのではなく,あくまで「メーカー純正品」に対する,「サードパーディの互換製品」であり,ユーザが購入する場合には,品質と価格のトレードオフの中で,それを選択している.
 今回問題になっているのは,パッケージなどの外見もそっくりに模倣した,ただの「ニセモノ」である.互換製品を,本物そっくりのパッケージにいれて販売しようとしているものである.
 これに対して,キャノン,エプソンなどの日本メーカーは,本格的な対策に乗り出すということだ.


 中国政府は,これまで,ブランド品の偽物,オートバイ等のコピー的製品,音楽CD,ソフトウェアの海賊版などを,ほとんど,野放しにしてきた.

 http://bizns.nikkeibp.co.jp の過去の記事
 「コーエー、中国の海賊版ソフトに一撃」
に,以下のような記述があった.
-----
 中国政府は、3年前の世界貿易機関(WTO)加盟時に知的財産権保護の強化を公約。知財権保護に関する法律を整備し、海賊版の摘発に力を入れているが、業者とのいたちごっこが続いているのが実態だ。
-----
 しかし,実際のところ,中国での,知的財産権保護の強化は,実質的には進んでおらず,欧米の政府や大企業がそれを放置しておくとは,考えられない.


 これまでの,人権問題,エネルギー問題,環境問題に加えて,今後は,
  「知的財産権問題」
 が,中国政府の「アキレス腱」になっていくだろう.
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探検,植民地 / 租借地,貿易,戦争...

2005-06-05 | Weblog
 一見、相互に関係なさそうな事象でも,複数の角度や断面から観察/考察すると,それまでに見えなかった背景やストーリーが見えてくることがある.

[ヨーロッパ列強とアフリカ]
 従妹が,アフリカの探検やイギリスの経済の歴史について研究しているのにつられて,いくつか参考書を買って勉強している.
 当初の探検は,地理的,科学的興味や,宗教的な目的(布教)から端を発している.
 しかし,そのうち,政治的,経済的目的が第一となり,結局は,植民地争奪戦やその後の大きな戦争につながっていったことは,歴史が示している.
 
アフリカ大陸探検史

創元社

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# 表紙の画像が出ないのは残念ですね.


自由貿易主義と大英帝国―アフリカ分割の政治経済学

新評論

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[日本と中国,台湾,韓国]
 父の兄弟は,みな戦前の朝鮮で生まれた.祖父が,仕事で朝鮮に赴任していたためだ.
 最近,叔父と日清戦争やその後の日本の植民地政策などについて議論する機会があった.(叔父は戦後の韓国で,日本人として初めて,韓国の大学から「法学博士」の学位を授与されている法学の研究者である.) 歴代の中国政府の要人達のアヘン戦争への評価と日清戦争や日中戦争への評価の違いについて,興味深い意見交換ができた.
 祖父母,伯母,叔父らの実際に見てきた話しを補完する意味と,ヨーロッパの列強と日本との比較という意味で,台湾,朝鮮,満州についてもいくつかの参考書をあらためて読み直している.

明治の冒険科学者たち―新天地・台湾にかけた夢

新潮社

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韓国は日本人がつくった―朝鮮総督府の隠された真実

徳間書店

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満州国の遺産―歪められた日本近代史の精神

光文社

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[アメリカと日本]
 少し前に,知人とのメールのやりとりで,「第二次世界大戦に於ける軍事的攻撃による民間人の被害」について,意見交換をした.私の意見は,以下のようなものだ.
----------
 被害者のオーダーだけがすべてではありませんが,20世紀の戦争における,一つの都市への1回の攻撃による民間人の被害者(死者)の数でいえば
 1) 広島
 2) 東京 (東京大空襲)
 3) 長崎
が,Top 3 でしょう.
ロンドンや,ドレスデンの被害は,これほどではないとおもいます.
特に,1), 3) は,米国はちゃんとデータもっているはずです.軍港の呉ではなく,近くの広島を狙ったのは,人口が多いからだそうです.
# 事前に,スパイ活動で,色々な情報を入手していたのです.
----------

 このやり取りのあと,興味深い視点でまとめられた本を発見した.
 アメリカの戦略にとどまらず,中国の内戦の状態やソ連の状況認識についても,日本の政府/軍部の問題など,大変勉強になる参考書である.
 
原爆を投下するまで日本を降伏させるな――トルーマンとバーンズの陰謀

草思社

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Jason's Library 文化としての科学

2005-05-23 | Weblog
 知人から教えられて,プロセス工学や遺伝子工学の専門家である,東京大学名誉教授 西村肇先生 のエッセイを読んだ.

 西村先生は,機械工学科の出なのに学部時代は物理ばかり勉強されていて,後に化学工学の教授になった少し変わった経歴の先生である.
 公害の研究では特に大きな業績があり,助教授時代に,本当のことを言い過ぎて,あちこちから圧力がかかり危なく東大から追い出されそうになったという話しは有名.
 水俣病の研究では,東大定年後に,チッソの工場内でどのようにメチル水銀が生成されたかを明らかにして,「水俣病の科学」(日本評論社)としてまとめ,毎日出版文化賞を受賞している.
 
 本書は,西村先生の戦争体験から,日本の将来,科学,科学者,ノーベル賞,教育,語学,日本語,日本人,歴史などなど,色々なテーマについて,経験と信念に基づいて書かれている.

 個人的には,私が普段から考えていている「もののみかた」で,どうも多くの人と意見が会わないことに関して,多くの点で西村先生と合致している点があったので,「私の独りよがり」ではないことがわかった.


 科学や教育に携わっている人,現代の日本に疑問を持っている人,日本の将来を心配している人,大学生などに,広くオススメの一冊.


日本破産を生き残ろう

日本評論社

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中央官庁に各分野関連の理工系修士レベルの事務官を!

2005-05-18 | Weblog
  5/16の記事 へ,きさらぎけいすけ氏から,以下のようなコメントをいただいた.
-------
 環境省の担当者に対して、ご指摘のような要望をしても無理だと思います。http://blog.goo.ne.jp/keisukekisaragi/d/20050430 で書きましたように、彼らは数年で担当を変わります。なおかつ多くが文系出身です。基本的なことが分かっていません。
極論すれば、今の日本のひずみの多くは、いわゆる「お役人」の専門性の無さと、理系的な知識の欠如にあると、僕は思っています。
-------
 おそらく,ご指摘のとおりだろう.
 昨今の,交通,エネルギー,環境,医療などの問題をみると,日本を動かす中央官庁の官僚(事務職)の方々こそ,ある一定レベルのそれぞれの本務たる省庁の分野にかかわる専門知識が必要不可欠であると思う.

 例えば,以下のような省庁では,後述のような分野で,修士レベルの教育をうけている人材が,事務官の半数程度は必要なのではないだろうか?

  国土交通省: 自動車工学,交通工学,交通システム学,土木工学,環境学...
  資源エネルギー庁: エネルギー学,エネルギー変換工学,電力工学,地球科学...
  環境省:   環境学,地球科学,地学,生物学,化学...
  厚生省:   医学,公衆衛生学,薬学,生物学,化学,環境学...

 これらの「人間や地球を相手にする」ような分野では政策を検討するにも法律を立案するにも,「相手」とそこでの「現象」を理解するために,ある程度の科学的,工学的な知識が不可欠であることは容易に理解できるはずだ.
 事務官が,その役所の担当分野について,ある程度の,科学的,工学的な知識がなければ,専門の技官や研究官,さらには外部の諮問員の専門家の先生方と,話しも通じないことになってしまう.

 交通災害,エネルギー問題,環境問題,薬害などのトラブルや,将来の課題への戦略の欠如は,このような,事務方の,広い意味での理工医系的な専門知識の欠如が,原因の一つであるという指摘も多く聞かれる.


 ここで,教育上一つはっきりしていることは,「学習の順番」の実質的な制限である.
 現在の我々の高等教育の技術では,科学,工学,医学等の分野に関して,若い時期に,各専門分野ごとの,演習,実習,実験,研修などのタイプの一定のトレーニングが不可欠である.
 それに対して,経済,法律,政策,行政などの,社会科学的分野は,ある程度の年齢になってから,再度専門の学習をしても,ほとんど問題はない.
 
 つまり,上記に上げたような,分野の省庁においては,事務方であっても,上述のような科学,工学などの分野の修士卒程度のものを採用して,何年間か実務経験を積んだのちに,必要に応じて,法律や政策などにかかわる修士課程の勉強をする方が,効率的かつ,実利的であるということになる.

 もちろん,ある程度は,最初から,政策のプロ,法律のプロとして訓練された人材も必要であろう.しかし,現在のように,大半が「法学部」という状況では,交通,エネルギー,環境,医療などの必然的に先端の科学や技術と結びつく分野の政策立案などは「無理」だ.問題が科学的に理解できなければ,対策がうてるはずはない.

 
 中央官庁だけでなく,各都道府県でも,同様の人材の問題があるようだ.いずれも,その仕事を目指す若者の勉強の仕方,人材の集め方等根本的な見直しが必要だと思う.

  
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