「すばらしい自分自身」という言葉が刻まれた日記をかのじょが書いたのは、四十代に入ってすぐの頃でした。あらゆるものが、あれひとつだけで助かる、そういうものを、かのじょは表現し、世界に投げ込んだのです。
ひとりももらすことなく、すべての人を救いたいというその思いは、彼女のやさしさというよりも弱さからきていました。どんな人にも、感じる心の火が灯っているのだと思うと、誰も切り捨てることができなかったのです。
がんばって、みなでがんばって、すべてを救っていきましょう。わたしたちにはそれができるのです。
真っ正直で曲がることのできない、かのじょらしい言葉です。
愛を感じずにいられない。
しかし現実には、とても難しい問題がある。かのじょの理想を実現するには、たくさんの時間と、あらゆる存在の努力がいることでしょう。だが。
あの日記ひとつがあるだけで、誰の心にも太陽が灯る。
必ず助かる道はあるのだと、確信することができる。
どんな暗黒の道に迷い込んでいても、あの一冊の日記がこの世に存在していると思うだけで、世界が明るくなる。
一本の薔薇が咲いた小さな星がひとつ、この空のどこかにあるだけで、星空を見上げる心が、幸せに満ちるように。