ダンテ・ゲイブリル・ロセッティ
ラファエル前派の牽引者のひとりであるロセッティの作である。モデルの何げないポーズを描いたものだろう。ロセッティの絵の中の女性は、このように静謐な情感を漂わせたものが多い。
だがこの画家はモデルを愛しているわけではない。モデルの形を描きながら、自分が女性だったらこうなりたいという女性を描いているのだ。
シダルはそれに気づいている。
だが何も言わず、じっとポーズをとっているのである。
ロセッティはシダルと結婚をするが、裏切り続けた。ほかにいい女をいくつもつくり、友人の妻と浮気をしていた。シダルはそれに耐えきれずに、自殺に等しい死をとげる。
妻のそういう死にたいして、ロセッティは嘆くことさえできずに、場当たり的な対応しかできていない。愛していなかったからだろう。
彼が愛していたのは、愛人のジェイン・モリスでもない。多くの愛人たちの中に見ていた、もうひとりの自分なのである。