自分以外の
誰かになりたくて
知らない街を
さまよい歩いていました
人魚から
白い顔を盗み
こおろぎから
足を盗みました
恐ろしく
下手なことをして
ばかみたいなかたちになった
わたしを
隠すために
いろんなひとから
いろんなものを盗みました
きれいだと思うものを
たくさん自分にくっつけて
みっともないくらい
完璧に
自分をきれいにしたのです
そして
見知らぬ街の
洋装店に立っている
マネキンの両親から
生まれてきたのです
かたちだけの
なにもないひとたちから
わたしは
なんにもない
からっぽの人形になって
両親と一緒に
流行らない洋装店のウィンドーの中に
ずっと立っている
時々人が振り向いて
馬鹿みたいだと言う目で見ていく
こんなものは全部嘘なんだよと
だれかがわたしを指さして
子供に教えている
恥ずかしくて
でも
ウィンドーから逃げることができない
風の中で
店が倒れて
崩れてしまうまで
ずっと
このままでいなければならない