藍色の
海のように深い空に
月がぽっかりと浮かんでいる
世界という貝が
せつなく孕んだ
だいじな だいじな
真珠のような
お月さまの
真円に少し足りない陰が
うっすらと見えている
あれは地球のはね返す光が
月陰を照らしているのだ
神さま 神さま
わたしたちも
こんなちいさな わたしたちも
あなたを照らし返すことが
できるでしょうか
ほんの少しの風にも よろよろと細る
ともし火のような わたしたちでも
なんてんの 冬の赤い実のように
海の底に光る小さな珠
そのようにわたしはなりたい
神さまが
空からごらんになって
ほら あの光っている小さなのが
あのこなのだよと
言ってくださる
そんなことを想像して
目を閉じれば 今もかすかに
呼ぶ声が聞こえる それは昔
ほたほたと血がしたたるほど
噛みしめた苦い砂の日々
だけどその一粒を今
この胸の貝の奥深く
わたしはそっと安らげよう
そして 暖かい乳に浸して
少しずつ 光を重ねて
かわいいかわいい 小さな珠を孕むのだ
傷に耐え 時に耐え
いつかきっと わたしは生む
小さな光の はね返り
ほんとうに 小さな その明かり
どうか 愛でてください
どうか 神さま 愛でてください
よく
生きた と。
(1997年)