あの日
だれもしらない風の野原に
あなたはこっそり
小さな翡翠の種を埋めましたね
そして
古い毬のように
くたくたに傷ついた心臓から
玉のように産んだことばを
澄んだ大空に溶かしましたね
後からついてきた私は
あなたが去った後
野原が突然
咲き乱れる花園に変わるのを見ました
太陽に届くほど
緑がめりめりと
伸びる音を聞きました
そのとき私は
初めて気づいたのです
ああ あなただったのか
あなただったのか
魂の根っこを見失ったあの日から
ずっとずっと探していた
探し続けていた
悲しみも喜びも
生きることそのものも
あなたが
私のすべての始まりだったのか
(1999年)