■コロナの陰で、安倍官邸「やり放題の官僚人事」その厚遇ぶりに呆れる
~国民の目が逸れているのをいいことに~
週刊現代(講談社)2020.03.31
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/71481
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・当の官僚も「おかしい」と警告
「今に始まったことじゃないが、おかしな役人人事が次から次へと行われている。新型コロナウイルスの話題で国民の目がそらされているのをいいことに、安倍政権はやりたい放題だ。何とかしないと、中央省庁全体がおかしくなってしまう」
さるキャリア官僚が危機感もあらわに、そう警告した。
これまでも安倍政権では、安倍晋三首相の“お友だち”や覚えのめでたい役人たちが、報酬のいい国家の要職に抜擢されたり、栄転したりしてきている。
それが新型コロナウイルスの騒動に紛れて、さらにひどくなったというのだ。
同キャリアが続けた。
「検事総長の人事に絡んで、政権に近い黒川(弘務)氏の定年を脱法的に延長したことが問題視されているが、政権の奔放さはそんなレベルじゃない」
最近の主要な人事を調べてみたところ、以下のようなことがわかった。
まずは報酬のいい要職への抜擢――論功行賞とみられる人事。
政府は3月17日、古谷一之官房副長官補を公正取引員会委員長に据える人事案を提示した。
古谷氏は財務省主税局長や国税庁長官を経て、2013年4月に官房副長官補に就任したのだが、2017年の総選挙の際に「教育無償化」や「子育て支援」、「大型の経済対策」などの知恵を授け、自民党圧勝に貢献したとされる。
今回の人事によって、古谷氏の報酬はアップ。年間約2800万円になるという。
実際の勤務日数で割ると、日額10万円を超える。
「退任する杉本(和行)前委員長は、菅(義偉)官房長官らが肩入れする楽天などにも果敢に切り込んだが、今後はどうなることか。検事総長人事と同じようなにおいも感じられる」
先のキャリアは、そう語った。
・警察庁でも、どさくさに紛れ…
横畠裕介内閣法制局長官も、同日の人事案で国家公安委員への就任が示された。
検察官から内閣法制局に転じた横畠氏は、安倍首相が最重要課題としてきた安全保障法制で、法制局がこれまで堅持してきた「集団的自衛権の行使は違憲」との見解を捨て去り、集団的自衛権の限定行使を容認。法の成立をバックアップした。
その横畠氏が就く予定の国家公安委員は「警察の目付け役」とされるが、実務はほとんどない。
にもかかわらず、年間報酬は約2400万円。
委員の資格要件には「任命前5年間に警察・検察の職歴のない者」とあるが、横畠氏は2011年に内閣法制局次長に就任しているため、セーフだったという。
まだある。
いまや政権の御用聞きと化しつつある警察庁では、問題のある幹部の「在庫一掃セール」に近い人事が断行されたというが、そのどさくさに紛れてカジノ管理委員会の事務局長に「パワハラ四天王」と言われている者のひとりが抜擢されていた。
徳永崇氏のことだ。
同氏は、青森県警本部長、警察庁官房審議官などを経て2019年4月にカジノ管理委員会設立準備室審議官に就いた人物だが……。
「パワハラが絶えないひとで、とくに青森県警時代のことは有名です。ただ、その一方で上には従順ですから、政権としては……ということでしょう」
警察キャリアの動向に詳しい警察幹部は、そう語った。
ちなみに政権人事ではないが、「パワハラ四天王」の残りも次々に栄転したという。
「徳永氏と同期の世取山(茂)氏がこの4月に東北管区警察局長になる内示が出ましたが、かねてパワハラがひどかったうえに、2014年にはついに自殺者を出した大事件に関与し、預金保険機構という外部セクションに飛ばされていました。にもかかわらず、ここまで偉くなるとは、正直思っていませんでした」(警察幹部)
2014年の大事件とは、東日本大震災の影響が色濃く残っていた福島県警で、捜査2課の警部と上司の警視が相次いで自殺した悲劇のことだ。
背景には、警察庁から出向していた捜査2課長の激しいパワハラがあったとされる。
当時、警察庁刑事局・捜査2課長の立場から県警2課長に発破をかけるなど指導していたのが、世取山氏だったのである。
そのほかの2人も、昨年の時点ですでに栄転済みであった。
・カジノ関連でも「由々しき人事」
さらには、こちらも過去の人事だが、カジノに関連して由々しき人事が行われていたこともわかった。
カジノ汚職事件への関与が取り沙汰されながらも、不問に付された財務官僚だ。
名前が浮上していたのは、財務省から内閣府大臣官房に転じ、カジノ管理委員会設立準備室室長を経て、2019年4月に特定複合観光施設区域整備推進本部事務局事務局長に就任した中川真氏である。
中川氏と言えば、元財務次官の娘をめとりながらも2007年に不倫騒動を起こして干されたが、第2次安倍政権で復活し、菅官房長官に重用されたことで知られる。ところが……。
「中川氏は、『(カジノ汚職事件で贈賄側として登場した中国系企業)500ドットコム』が2017年に主催したシンポジウムに参加し、菅長官の言葉を引用しつつ、ギャンブル依存症対策における政府の取り組みなどについて語るなど、同社と関係があった。にもかかわらず、その後、事務局長に昇格している。なぜ、こうした人事が行われたのか大いに疑問だ」
カジノ汚職事件の捜査にかかわった検察関係者は、そんな証言を寄せた。
こうしたことが影響したのか、中川氏は2020年3月、スロバキア大使に転出した。
これについて、前出のキャリアが語る。
「論功行賞を兼ねたところ払いだろう。政府からは遠ざけられるものの、大使は何といっても厚遇。報酬も高いのだから」
現在、大使の平均年収は月額110万円。ボーナスを加味すると、年収1800万円程度。
これでも高給だが、ここに「在勤基本手当」と呼ばれるものが加算される。
派遣先の国によって額は異なるが、スロバキアはギリシア並みの月額60万円。
さらに、配偶者手当も支給される。
大使の「在勤基本手当」の20%であるため、こちらは月額12万円。
これらを合わせると、2600万円を超える。
仮に小中学生の子供がいた場合には、一人当たり月額15万円弱の手当ても出る。
パート労働者の月給並みの金額だ。
以上のような経緯を見ると、目を光らせるべきは、検事総長人事ばかりではないことがわかる。
・厳しく監視するべき
ところで、ここで取り上げたのは、「特別職」と呼ばれる国家公務員に抜擢された人事だ(警察庁のものは除く)。
この来歴等について調べてみると、官邸のHPに以下のような記載があった(注記は省略)。
《国家公務員法の制定により国家公務員が一般職と特別職に区分されたことに伴い、「特別職の職員の俸給等に関する法律」が制定され、特別職の給与体系が創設された。創設当初の給与体系は、連合国の管理下にあって、行政の民主化が強調される中、政府から独立した機関、あるいは行政委員会の委員等に、給与体系上高い格付けがなされていた。中でも、検査官、人事官及び国家公安委員会の委員については、それぞれの設置法において、国務大臣と同額の給与を受けるべきことが定められていた》
《特別職は、様々な理由により、任用における成績主義の原則、身分保障等の一般職に適用される国家公務員法の原則が適用されない諸々の官職であり、任用、服務等に関する制度についても官職ごとに様々である。(中略)様々な官職が含まれる特別職の幹部公務員を、あえて類型化すると、次の二つに区分することができる。
ア 職務の性質から一般職の任用手続を経ないことを適当とする官職(内閣官房の特別職、大公使等)
イ 職務遂行の独立性及び任用手続の透明性を確保する等の観点から任用に当って国会同意を必要とする官職(検査官、人事官、委員会委員等)
ただし、こうした類型化は、それぞれの職務の性質に由来するものであり、職務の重要性や責任の重さに由来するものでは必ずしもないことから、上記のような特別職の類型化と、職責に応じて定められる給与の在り方との間に、直接的な関連性を見出すことは難しい》
つまりは、戦後に国家公務員という制度が整えられて以来、「特別職」は独立性が重んじられてきたということだ。
高額の報酬が支払われる根拠も、そこにあった。
ところが、いまや論功行賞と言われても仕方ない、官邸の恣意的な任用が目立つ。
制度の原点に立ち返って、厳に監視の目を光らせるべきである。
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■コロナの陰で、安倍官邸「やり放題の官僚人事」その厚遇ぶりに呆れる
~国民の目が逸れているのをいいことに~
週刊現代(講談社)2020.03.31
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/71481
■安倍政権の執着が招いた黒川元検事長人事騒動の本質
~権力についての見識と自制心を欠く安倍政権の現実~
論座(朝日新聞)2020年05月24日
https://webronza.asahi.com/politics/articles/2020052400002.html
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・官邸の意向にひれ伏す官僚たち
いまの安倍政権は、官邸に設置された内閣人事局を中心に霞が関の官僚支配を強めてきた。
各省の事務次官、局長、審議官など約600人の人事は、内閣人事局の了承を得なければ進まない。
人事局のトップは現在、杉田和博官房副長官(事務)だが、杉田氏は主要人事については菅義偉官房長官と安倍首相に相談する。
実質的には菅、安倍両氏が霞が関の人事権を握っている。
政権発足から7年半、霞が関の官僚たちは、官邸の意向にひれ伏すようになった。
安倍、菅両氏にとっては予想以上の「従順さ」と映っただろう。
・官邸主導人事は、具体的にはどう運用されているのか。
各省庁は、事務次官や主要局長について複数の案を官邸側に提示。
その内容を説明しながら、官邸側の判断を仰ぐ形となっている。
杉田副長官は、あらかじめ安倍首相や菅官房長官の意向を聞き、各省庁との折衝に当たる。
多くの場合は役所側が「本命」としている人事が通るが、時には本命以外が指名されるケースもあるという。
さらに、役所が提示した候補以外を官邸が要求する例もある。
その場合、役所は持ち帰って再検討するが、最終的には官邸の案が採用される場合が多い。
それぞれの人事の折衝経過は、役所内に伝えられ、広がっていく。
「〇〇次官案がつぶされた」「××局長案は菅さんの意向らしい」といったうわさは、霞が関の格好の話題となる。
それが、安倍官邸の権力の源泉となるのである。
・官邸の意向をすり抜けるために
官邸と各省庁との駆け引きが繰り広げられるが、なかにはしたたかに官邸の意向をすり抜ける役所もある。
例えば財務省。
事務次官にたどり着くのは、多くの場合、官房長、主計局長経験者。
早い段階で次官コースを固めて、政治の介入を弱めようという手法だ。
それでも安倍政権は、森友問題の国会答弁で「交渉記録はない」などと言い続けた佐川宣寿理財局長を国税庁長官に抜擢する人事に踏み込んでいる。
官僚の政策立案力より「国会答弁で安倍首相を守った」という点が重視された人事だった。
外務省の幹部人事でも、事務次官の交代を求めたり、安倍首相の秘書官経験者を主要局長に押し込んだりしてきた。
ある外相経験者は「官邸の執拗な要求に悩まされた」とこぼしている。
・長官人事で内閣法制局を「制圧」
安倍政権の矛先は、これまで「中立」とみられてきた組織の人事にも向かった。
2013年、安倍首相は集団的自衛権の行使を容認するための憲法解釈の変更と関連法案の作成に着手。
それまで集団的自衛権は憲法9条に反するという見解を維持してきた内閣法制局との対応が注目された。
内閣法制局は、政府の憲法や法律の解釈を担い、「憲法の番人」とも言われてきた。
法制局長官は法務省、財務省、総務省などの出身者が交代で務め、政治とは距離を置いた機関と位置付けられてきた。
集団的自衛権をめぐって、安倍首相には二つの選択肢があった。
一つは内閣法制局を理論的に説き伏せ、解釈を「合憲」に変更させること。
もう一つは法制局長官を集団的自衛権合憲論者に交代させることだった。
安倍氏は後者を選択。
集団的自衛権行使=合憲を唱える小松一郎駐フランス大使を法制局長官に起用した。
小松氏は外務省条約局長などを経験。
外務省出身者の法制局長官就任は極めて異例だった。
これによって、内閣法制局は「制圧」され、憲法解釈は変更された。
集団的自衛権の行使を容認する安全保障法制は国会に提出され、反対する野党を押し切って可決、成立した。
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■安倍政権の執着が招いた黒川元検事長人事騒動の本質
~権力についての見識と自制心を欠く安倍政権の現実~
論座(朝日新聞)2020年05月24日
https://webronza.asahi.com/politics/articles/2020052400002.html
■ありえない手口で安倍首相が″お友達″を検察トップに!
仰天人事に元検察同期も怒り爆発! さよなら、三権分立
livedoorニュース(2020年5月12日)
https://news.livedoor.com/article/detail/18248121/
~~~
日本の「三権分立」が今、深刻な危機に瀕(ひん)している。
三権分立とは、統治機構を支える3つの権力、すなわち「行政」「立法」「司法」の三権を、それぞれ内閣、国会、裁判所という独立した機関が担うことで、権力の乱用を防ぐ仕組みのこと。
だが、安倍晋三政権の下で2014年に設置された内閣人事局による「人事権を介した官僚支配」が着々と進み、政府・与党の意をくんだ官僚が大量発生。その"忖度官僚"たちは公文書の改竄(かいざん)や破棄にまで手を伸ばし、森友・加計問題から「桜を見る会」まで安倍政権をめぐる数々の疑惑はうやむやなままになっている。
それに、本来は政権のチェック機能を担うはずの国会でも噛み合った議論はまったく行なわれることなく「三権のバランス」は大きく崩れているのが現状だ。
そんななか、2月8日に63歳で定年退官を迎える予定だった東京高検検事長の黒川弘務氏について、政府は1月31日、前例のない「定年の半年延長」を閣議決定した。
黒川検事長は安倍首相や菅 義偉・官房長官に近く、法務省官房長在任時には、甘利明・元経済再生担当大臣の口利きワイロ事件や、小渕優子・元経産相の公選法違反などが不起訴になるよう、捜査現場に圧力をかけてきた人物とされる。
「その忠勤ぶりが認められたのか、甘利事件が不起訴になった2ヵ月後、黒川さんは昇進がほぼ確実視されていた林 眞琴・法務省刑事局長(当時)を差し置き、法務省事務次官に就任しています。
それで司法記者の間でついたあだ名が『安倍官邸の番犬』(笑)。
そして、現在の彼の東京高検検事長というポストは、検察のナンバー2。
ここで彼の定年を半年延長すれば、この夏にも勇退予定の稲田伸夫・検事総長の後を継ぎ、黒川さんが検察トップの座に就く可能性が大です」(全国紙政治部デスク)
東京地検特捜部副部長や東京高検検事を歴任した経験を持つ弁護士の若狭 勝氏もこう憤る。
「これは検察の独立性を踏みにじり、政治が検察の人事に露骨に介入した、あってはならない話です。しかも政府は、検察官も一般の国家公務員と同じであるかのように定年延長を決めてしまった。これは違法の可能性もあるのです」
元共同通信社記者でジャーナリストの青木 理氏もあきれた表情でこう語る。
「ここまでやるのか......というのが率直な印象ですね。確かに、以前から『安倍政権が黒川氏を検事総長に据えようと動いている』という情報は耳にしていました。
しかし、現職の稲田検事総長にはまだ任期が半年近く残っており、稲田氏が自ら退任しない限り、2月8日で定年を迎える黒川氏には検事総長の目はないとみられていた。実際、法務省記者クラブは黒川氏の送別会まで予定していたといいます。
それを、政府がこれほど強引な手段を使ってまで、黒川氏を検事総長に据えようとしていることには驚きました。
検察は容疑者を刑事裁判にかける権限をほぼ独占していて、必要なら身柄拘束もできるし、強制捜査もできる。
特捜部に至っては政治家の捜査も行なうという強大な力を持つ組織です。
その検察に、政治が人事権を介して手を突っ込み、自分たちの息のかかった人物を検事総長に据えて操ろうというのなら、それが社会に与える害悪はあまりにも深刻です」(青木氏)
ちなみに、森雅子法務大臣は今回の定年延長について、国家公務員法81条に基づく合法的な人事だと主張し、「東京高検検察庁の管内において遂行している重大かつ複雑困難事件の捜査公判に対応するため、黒川検事長の指揮監督が不可欠であると判断したため」と説明している。
しかし、前出の若狭氏は「森法相は上の指示で仕方なく言わされているのかもしれないが、ハッキリ言ってばかげている」と一蹴する。
「もちろん検察は行政の一部で公務員ですが、その職務上、裁判官に準ずる『準司法官』的な立場にある。検察官が政治家の顔色を気にして職務にあたる必要がないよう、特別法である『検察庁法』によって身分、それに政治権力からの独立も保障されています。その検察庁法では検事の定年を63歳、検察トップの検事総長の定年を65歳と厳格に定めている。当然、東京高検の黒川検事長は、2月8日の誕生日に定年退官しなければならなかった。ところが政府は、国家公務員法の『定年延長規定』を適用して定年を半年延長することで、強引に黒川氏の検事総長就任の道を開いた。検察庁法で定められた検事の定年を国家公務員法で延長するというのは、明らかな違法行為だと私は思います」
元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士も次のように断言する。
「当然、検事の定年は国家公務員法でなく検察庁法を適用すべきで、黒川さんの定年年齢63歳を延長した閣議決定は検察庁法違反です。この決定により2月8日以降、違法に高検検事長がその職に居座るという事態になってしまった。法を厳正執行する立場の検察として、それはありえません。検察は一刻も早く、この違法状態を解消すべきでしょう」
前出の若狭氏の怒りはこれだけでは収まらない。
「そもそも違法性以前の問題として検察人事に政府が介入すれば、ほかの省庁で起きている問題と同様、検察官が政治に忖度し、政権政党の顔色をうかがって事件処理をすることにもつながりかねない。ここ数年、特捜部が扱った事件を見ても、森友・加計学園、近頃の桜を見る会やIR疑惑など、検察は『政権を揺るがすまで徹底的にはやらない』という印象です。この先も、その傾向が強まればとんでもない話で、この国の統治機構の根幹を危うくする事態です」
これまでも安倍官邸は、黒川検事長を法務省事務次官、東京高検検事長に栄進させるために、彼の同期で次期検事総長ナンバーワン候補だった前述の林氏(現在は名古屋高検検事長)の法務省事務次官就任を2度も拒んでいる。
その意味することは検事総長への出世ルートの遮断だ。
一方、稲田検事総長は三度目の正直とばかり、自分の後任に林検事長を据える腹積もりだったとされる。
林検事長が63歳となるのは今年7月30日で、稲田検事総長が今夏に勇退しても十分、後任になることが可能なのだ。
こうした検察内の事情を受け、元経産官僚の古賀茂明氏が言う。
「検事総長の任期は2年前後。林さんが検事総長になれば、22年7月の定年まで務められます。一方、安倍首相は4選せずに、21年秋で首相を辞める確率が徐々に高まっている。その時点で任期を1年残す林検事総長がどう動くか?何しろ、この政権には過去に2度も昇進を邪魔されているんです。正義を執行する本来の検察の復活も果たしたいという強い思いもある。今がチャンスとばかりに『桜を見る会』疑惑やIR汚職事件の捜査をせよと、検察に大号令をかけるかもしれない。そうなれば、安倍首相の身辺に捜査が及ぶのは必至です。歴代の韓国大統領の多くが退任後、逮捕・訴追されたのと同様、安倍さんも牢屋送りにされることを恐れているのでは?」
前出の若狭氏が語る。
「実は、僕は黒川さんも林さんも同期で、検察官になる前、司法修習生の頃からの付き合いなのでふたりともよく知っているのですが、黒川さんは優秀な上に人当たりが良い性格で、ひょうひょうとしているところがあるから政治家とすれば使い勝手がいい。逆に、黒川さんの側も政治家をうまく使っているという感じでしょうか。ただし、それほど出世に執着するタイプではないというのが僕の印象です。一方の林さんはもともと裁判官を目指していたのに、検察官になった優秀な検事で、典型的な法務官僚タイプ。同期の中でも常に一目置かれる存在でした。共謀罪法案などでも刑事局長として頑張っていたので、検察内でも林さんが先に法務次官になり、ゆくゆくは検事総長になるんだろうと、多くの人が思っていたはずです」
だが、前述のように、官邸は黒川氏を法務省事務次官に指名。
その後も東京高検の検事長として重用している。
その過程で、検察内部に「結局、自分たちの人事と将来は官邸が握っているのだ」という印象が強まっていったことは想像に難くない。
また、黒川氏を検事総長に据えたい安倍政権は、稲田氏に任期中の退任を迫ったといわれるが、4月に京都で行なわれる刑事司法の国際会議までは現職にとどまりたい意向を示して退任を固辞したため、最後は黒川氏の定年延長という禁じ手を使った。
まさになりふり構わず検察への影響力を強めようとしているわけで、そこに込められた官邸のメッセージは強烈だ。
黒川氏の定年延長が決まった直後の2月3日に、IR疑惑で逮捕された秋元司議員以外の国会議員の立件見送りが報じられたのは、偶然だろうか。
「司法に関わり、時には強い権限を持つ検事の仕事には単に『公正さ』が求められるだけでなく、多くの国民から『公正で信頼できる』存在だと思ってもらえる『公正らしさ』が求められるのです。その検察官のトップとして、検察全体を指揮する立場にある検事総長に、『安倍政権の意向で強引に指名された人』というイメージがあったのでは、誰が検察に『公正らしさ』を感じるでしょう。僕は古くからの友人である黒川さんが、検事総長になる前に自ら退任する可能性があるのではないかと思っています」(若狭氏)
「安倍政権には国家安全保障局長の北村滋局長をはじめとして、官房副長官の杉田和博、宮内庁長官の西村泰彦と、警察官僚出身者が数多く食い込んでいる。これに加えて、政権が検察への影響力を強めれば、圧倒的な情報収集力を持つ警察と、強制捜査や身柄拘束が可能で、刑事裁判で99%以上の有罪率を誇る検察の権力が、政権に都合のいい形で使われる恐れがある。もっと恐ろしいのは、こうして政権内部に食い込んだ警察や検察が政治に利用されるのではなく、その情報力で逆に弱みを握り『政治家を操る』という可能性も否定できないということ。その先にあるのは、権力が暴走する暗黒の未来です」(青木氏)
もちろん検察は「行政」の一部だが、日本の「司法」は事実上、検察が有罪か無罪かの判断をし、裁判所は量刑を決める場所になっている。
検察が司法に対して、強大な力を持っていることは否定できない。
その検察が政権と結びつくような動きを見せれば、それは国家の根幹を支えている三権分立が崩壊したと言われても仕方ないだろう。
2月12日の衆院予算委。黒川検事長の定年延長は「政権の守護神として残しておきたかったのでは?」と迫る野党議員に、安倍首相は薄笑いを浮かべながら、「なんとかの勘繰りではないのかと言わざるをえない」と反論している。
だが、果たして首相の計算どおりに進むものなのか?
前出の郷原弁護士はこう首をかしげる。
「黒川検事長の定年延長問題はメディアに報じられ、その異様さを多くの国民が知るところとなっている。これだけ世間で騒がれて、黒川さんはこれから半年間も検事長の職を続けられるのでしょうか? また、半年間を違法な状態のまま乗り切ったとしても、その後に稲田検事総長の後任として就任するのか?もし就任すれば、その瞬間に検察の威信は失墜し、誰も検察を信用しなくなるでしょう。本当にそこに黒川検事長が踏み込めるのか? ちょっと疑問です。場合によっては安倍政権の思惑どおりに事が運ばない可能性もあると感じています」
前出の政治部デスクもこうささやく。
「稲田検事総長の去就も注目されます。このまま官邸人事に従うのか? 検事総長の任期は約2年というだけで、その勇退時期や後任は総長自らの判断で決めるというのが検察の慣習です。もし、稲田検事総長が黒川検事長の定年延長期間が終了する8月7日以降に退任をずらせば、再び閣議決定をして定年を再延長しないかぎり、黒川氏は東京高検検事長のまま退職するしかない。これだけ批判が出ている。さすがに再延長はいくら安倍政権でも難しいでしょう。そうなれば、官邸人事は不発となります」
8月7日以降、検事総長の椅子に座っているのは果たして誰なのか?
そして検察による政権スキャンダル捜査はどうなるのか?
官邸vs検察のバトルから目が離せない。
そもそも検察とは、社会の悪と闘うこの国の「免疫系」のはず。
それが政府と一体化し、この国の三権分立を死に至らしめないよう、われわれはしっかりと監視してゆく必要がある。
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■ありえない手口で首相が″お友達″を検察トップに!
仰天人事に元検察同期も怒り爆発! さよなら、三権分立
livedoorニュース(2020年5月12日)
https://news.livedoor.com/article/detail/18248121/
■安倍総理の分身「官邸官僚」が霞が関を牛耳る
~省庁幹部680人の人事を握っている~
PRESIDENT 2019年9月13日号
https://president.jp/articles/-/29853
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・絶大な権力をふるう、従来の「官僚」像とは異なる存在
「今井ちゃんはなんて頭がいいんだ。頭の中を見てみたい」。
安倍総理にそう言わしめた今井尚哉政務秘書官は、経済産業省出身。
自他ともに認める「総理の分身」だ。
前川喜平文科省事務次官(当時)に、「総理が自分の口からは言えないから、私がかわって言う」と、加計学園の獣医学部新設を迫ったとされる和泉洋人首相補佐官(国土交通省出身)。
「総理の影」が官房長官なら、補佐官は「影の影」か。
警察庁出身の杉田和博内閣官房副長官は「総理の守護神」。
同じ警察官僚、北村滋内閣情報官との杉田・北村ラインで政権のインテリジェンスを一手に握ってきたという。
〈出身省庁を離れているが、官邸を根城に絶大な権力をふるう、従来の「官僚」像とは異なる存在が「官邸官僚」である〉と著者は書く。
彼らは〈決して古巣の役所のトップを走ってきたわけではない〉が、〈宰相の絶大な信を得て、思いのまま権勢をふるっている。裏を返せば、その権勢は首相の威光がなければ成り立たない〉。
「忖度」「総理のご意向」の原点はそこにある、と指摘するのだ。
問題はその官邸官僚たちが、総理や当人たちが思っているほどの結果を出せていないことだ。
今井政務秘書官が力を入れたトルコ、英国への原発輸出は、伊藤忠、三菱重工、日立が白旗を掲げほぼ全滅。
同じく今井発案の「経済成長年3%」「出生率1.8」「介護離職ゼロ」を目指す新三本の矢は、画餅に帰している。
対ロシア、対中国、北朝鮮問題と、外交政策にも首を突っ込むが、成果を上げるどころか、数々のスタンドプレーで、外務省とのあいだに深刻な亀裂を生んでしまった。
・忖度による様々な不正が明るみに出てくる
それでも霞が関が反旗を翻さないのは、安倍政権が新設した「内閣人事局」が、1府12省庁の幹部680人の人事を握っているからだ。
2017年8月、杉田官房副長官が内閣人事局長の座に就いたとき、官邸による官僚支配が確立したという。
霞が関のバランスは崩れ、忖度による様々な不正が明るみに出てくる。
その象徴が、森友学園に関する財務省の決裁文書改ざんだ。
主犯は元理財局長の佐川宣寿。
〈安倍本人や昭恵夫人のかかわりをはじめ、十四の関連文書の中で政権に都合の悪い三〇〇カ所を削除し、書き換え〉た重大犯罪なのに、〈佐川は何の刑事罰にも問われず、退職金まで手にして財務省を去った〉。
陰に見え隠れするのが、「官邸の守護神」こと黒川弘務法務事務次官。
法務省にあって、長く安倍政権を支えてきた。
検察まで忖度とは思いたくないが、〈まさに、「政治判断による捜査終結」という以外に言葉が見あたらない〉。
安倍官邸に正面から向き合い、「あるものはある」と書く気骨のあるライターがいる。
森功は間違いなく、今では数少ないその1人だ。
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■安倍総理の分身「官邸官僚」が霞が関を牛耳る
~省庁幹部680人の人事を握っている~
PRESIDENT 2019年9月13日号
https://president.jp/articles/-/29853