高校「倫理」(人の命の比較)

今年、いつかも記したが何十年ぶりで(高校)「倫理」をもつことにした。これは選択科目だったので「選ぶ生徒などいないだろう」と思っていたが、案に相違で2年生6人も参加する授業になった。
教科書の内容を説明したりする時間はもちろんとるのだが、それ以上に「討論」の時間をとろうと思って、意見の出しやすいテーマがないだろうか、と探すことにしている。

まず思いついたのは、例のサンデル教授の「白熱教室」である。この書にはたくさんの「哲学思想」関連の例がある。その冒頭にある「命の数」にかかわる話である。
これを利用させてもらった。
「君は電車の運転手で今運行中。突然ブレーキが利かないことに気づいた。前方に5人の作業員がいる。このままでは5人をはねた殺してしまう。ふと左折できる待避線があった。ブレーキは利かないがハンドルは利く。しかし左には1人の人がいる」。「さあ、君ならどうする、そのまま直進して5人を殺すか、それとも左折して1人に死んでもらうか」。サンデル教授のような哲学的説明はできないが、問題は簡単だ。ほとんどの生徒は左折して1人の命を奪うことを選択する。5人よりも1人の命の方が自然だ。5人を救うために1人を犠牲にする、という誰もが思う理屈である。

ところが生徒たちの議論の中で、そう簡単ではない、という意見が出てきた。作業しているのが若いバイト程度の若者であり、1人は今一番大事な立場にいるお父さんだったとしたらどうか、ということである。それ以外にも条件をあげだしたら切りがない。しかし大方は5人を助けて1人の犠牲をやむを得ないとした。

サンデル教授は命に関する例を他にいろいろあげているし、それぞれ非常にわかりやすいので生徒たちと意見をたたかわせるには都合がよい教材だ。
そんなことから今年の倫理は、私からしても楽しみの授業になってきた。

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