最新の研究によると、ヒトの新しい性ホルモンが発見された。研究者自身は明言を避けているが、この自然ホルモンの発見は待望の男性用経口避妊薬の開発につながる可能性もあるという。
今回発見された性腺刺激ホルモン放出抑制ホルモン(Gonadotropin inhibitory hormone:GnIH)は、約10年前に鳥類で初めて確認されていたが、最近になってヒトの脳の視床下部でも発見された。視床下部では睡眠、性欲、体温などを司るホルモンが作られる。
GnIHは、性と生殖に関わる各種ホルモンの放出をうながす性腺刺激ホルモン放出ホルモン(Gonadotropin releasing hormone:GnRH)を抑制する働きを持っている。そこでこの新発見のホルモンを使って避妊が可能になる日が来るかもしれないという声が聞かれるわけである。
「確かにそれも考えられるが、実現するにはまだわかっていないことが多すぎる」と今回の研究の共著者であるカリフォルニア大学バークレー校の生物学者ジョージ・ベントレー氏は語る。
アメリカ国立衛生研究所の生殖科学部門を率いるルイス・デパオロ氏も同意見で、男性用経口避妊薬のことを考えるのはまだ「時期尚早」だという。
動物がGnIH(抑制ホルモン)を持っていることは2000年に判明しており、ヒトにもGnIH遺伝子があることも知られていたが、このホルモンがヒトでも作られるのかどうか、またその役割は何なのかは、これまで明らかになっていなかった。
しかし今回の研究で、ヒト5人の視床下部からGnIHが検出され、このホルモンが生殖力増進効果を持つGnRHを作る神経細胞に影響を及ぼすことが証明された。研究結果では、GnIHは乳癌や前立腺癌などホルモン感受性のある癌の治療に取り入れられる可能性があるとしている。
現在、生殖力を高めるGnRH(放出ホルモン)の抑制には人工物質が使われているが、アレルギー反応、体重増加、ほてりなどの副作用が見られる。一方でGnIHは、副作用を伴わずに生殖器官の働きを自然に抑えることができる可能性があるとしている。
しかし「まずヒトの体におけるこのホルモンの働きと他のホルモンとの関係を理解することが先決だ。まだ先は長いが、ヒトにもこのホルモンがあるという事実は役に立つ」と研究の共著者のベントレー氏は語る。
今回の研究には関わっていないアメリカ国立衛生研究所のデパオロ氏も同意見だ。「使い道はわかっているが、その重要性や役割は依然としてよくわかっていない。しかし何らかの重要性があるはずだ。そうでなければ、そもそも存在していないだろうから」。
~NGより~
Photograph by Arthur Tilley, Taxi/Getty Images
今回発見された性腺刺激ホルモン放出抑制ホルモン(Gonadotropin inhibitory hormone:GnIH)は、約10年前に鳥類で初めて確認されていたが、最近になってヒトの脳の視床下部でも発見された。視床下部では睡眠、性欲、体温などを司るホルモンが作られる。
GnIHは、性と生殖に関わる各種ホルモンの放出をうながす性腺刺激ホルモン放出ホルモン(Gonadotropin releasing hormone:GnRH)を抑制する働きを持っている。そこでこの新発見のホルモンを使って避妊が可能になる日が来るかもしれないという声が聞かれるわけである。
「確かにそれも考えられるが、実現するにはまだわかっていないことが多すぎる」と今回の研究の共著者であるカリフォルニア大学バークレー校の生物学者ジョージ・ベントレー氏は語る。
アメリカ国立衛生研究所の生殖科学部門を率いるルイス・デパオロ氏も同意見で、男性用経口避妊薬のことを考えるのはまだ「時期尚早」だという。
動物がGnIH(抑制ホルモン)を持っていることは2000年に判明しており、ヒトにもGnIH遺伝子があることも知られていたが、このホルモンがヒトでも作られるのかどうか、またその役割は何なのかは、これまで明らかになっていなかった。
しかし今回の研究で、ヒト5人の視床下部からGnIHが検出され、このホルモンが生殖力増進効果を持つGnRHを作る神経細胞に影響を及ぼすことが証明された。研究結果では、GnIHは乳癌や前立腺癌などホルモン感受性のある癌の治療に取り入れられる可能性があるとしている。
現在、生殖力を高めるGnRH(放出ホルモン)の抑制には人工物質が使われているが、アレルギー反応、体重増加、ほてりなどの副作用が見られる。一方でGnIHは、副作用を伴わずに生殖器官の働きを自然に抑えることができる可能性があるとしている。
しかし「まずヒトの体におけるこのホルモンの働きと他のホルモンとの関係を理解することが先決だ。まだ先は長いが、ヒトにもこのホルモンがあるという事実は役に立つ」と研究の共著者のベントレー氏は語る。
今回の研究には関わっていないアメリカ国立衛生研究所のデパオロ氏も同意見だ。「使い道はわかっているが、その重要性や役割は依然としてよくわかっていない。しかし何らかの重要性があるはずだ。そうでなければ、そもそも存在していないだろうから」。
~NGより~
Photograph by Arthur Tilley, Taxi/Getty Images