てなワケで、行きは良い良い、帰りはコワイの、
往復15、6キロほどのウォーキングの開始。
どうせ行くなら、目的を決めて行こうという事になり、
それならば!と、ご存知、あのフーテンの寅さんの
ロケに使われたことがある、両棒餅(じゃんぼもち)のお店、中川家さんで
両棒餅を食べて帰って来ようということになった。
(実は僕とカミさんは、隠れ寅さんファン。娘は両棒餅が大好きなのだ)
少々食い意地のはった、ちょっと情けない家族全員一致の目標に向けて、
いざ出発!
両棒餅って何?ってお思いの方は
ここをクリック!
前回も書いたように、高台に有る我が家から海岸までは、ほとんどが下り道。
息を切らすこともなく、途中で見つけたドングリなどをポケットに拾い集め、
また、三人であれこれ話しながら歩く・・。
けれども僕は内心、“帰りがな~・・この道を反対に歩くということは、延々と登り坂を歩くということ・・ハア~”と、重たい気分になったりもしたのだけれど、途中、遠目に見えて来たキラキラ輝く真っ青な海を見て、“思い悩むな。帰りの道の事は、帰りの道自らが思い悩む”だ。余計なことは考えずに、とにかく歩こうと、そう自分に言い聞かせながら歩いた。
海が遠目に見えてからは、あっけないほど早くに海岸近くまで辿り着いた。
界隈に有る史跡・旧跡などを軽く見学し、そのあと、そこから少しの所に有る、
中川家さんへと向かった。
両棒餅の老舗、三代目を数えるという中川家さんが有る、この道沿いには、
他にも何件もの両棒餅屋さんが立ち並んでいて、
沿道には各お店の売り子さん達が、その手に両棒餅の皿を持ち、
立ち売りをしてたりする。この付近は、時間帯によってはちょうど車が
渋滞する場所なので、そこを狙った商売というワケだ。
見ていると結構な勢いで、車の中から注文を受けていた。
言ってみりゃ、“ナチュラルドライブスルー”といった感じですな。
目的とする中川家さんは、立ち並ぶ店の端に有った。
外観、店内の雰囲気は、なるほど寅さん映画の雰囲気にピッタリだ。
壁には、カレンダーや色んな物と一緒に、もう色褪せた当時のロケの様子の
写真が無造作に何枚か飾って有った。
他に、ここは寅さんが来た店!などと言ったような宣伝文句のような物は無く、
その、いい意味での商売気の無さが好感が持てた。
中川家さんについては
この方のブログもご覧有れ。店内の様子もわかります。
「そうか、そうか、ここで寅さんも両棒餅を食べたのだな。」と、
感慨ひとしお・・。
出て来た両棒餅の味は、言う間でも無く旨い物だった。
腹ごしらえを終えて、すぐ近くの海岸へ。
正面には、逆光を浴びた桜島がど~んとそびえ、
岸では釣りを楽しむ家族の姿や、若い男女の姿が有った。
僕はそれを見て、急にまた帰り道のことが不安になって来た。
「あの人ら・・、きっと車で来てんだよな・・。
帰りは車で帰るんだよな・・。車、車、車・・・」
まあ、いつまでもそんな事を思っていても仕方が無いので、
「さあ、頑張ってそろそろ帰ろう!」と腰を上げた。
帰りは別のルートで帰ってみましょう、とカミさんが言うので
それに付き従ってみたのだけれど、その道はどんどんと細くなり、
山道となってきた。心細く思いながら歩いていると、
フキノトウを発見!よく見ると辺りはフキノトウだらけ。
それを摘み取りながら尚も歩いて行くと、
ついには行き止まりとなってしまった。
「ま、こんな事が有るから面白いのさ。アハハ!」と
負け惜しみを言いながら、後戻り・・。
結局、来た道をまた歩いて帰ることにした。
帰りは、最初の急な坂道を登ってしまうと、あとはこれまた意外にも
それほど苦痛では無かった。
一歩一歩進むたびに、確実に我が家に近づいているのだと思うと、
歩くピッチが、むしろどんどんと上がって来てる気さえした。
けれどもカミさんは娘のピッチに合わせてゆっくりと歩いている。
「さては、さすがの娘もここに来てバテてきたか?
ムリをさせるのも良くないな。幸いこの道にはバスが通る。
おっ、あそこにちょうどバス停が有る!
仕方が無い。助け船を出してやるとするか。
そうすれば、
自分もバスに乗れるし!」と、思い娘に優しく聞いてみた。
「だいぶ疲れただろ?よく歩いたね。ここからはバスに乗って
帰ろうか?ほら、ちょうどあそこにバス停が・・」
「エ~~?なに言ってんの~!アタシぜんぜん大丈夫だよ~!バスに乗りたければ、お父さんだけ乗って帰れば?」
「ギクッ!・・」
まあ、そんだけ元気があるなら大丈夫だろうと思い、
その後はあまり二人のことは気にかけず、
途中で走り去るバスを何台か横目で見ながら、
自分の歩きやすいピッチで歩き進んだ・・。
全員無事に、何とか家に辿り着いたのは夕方前。
カミさんと娘に、よく頑張ったねえ!と声をかけ、
“そして俺もよく頑張ったよ~”と一人心の中でつぶやきながら飲むその日の焼酎の味は、いつにも増して旨かった。
目標・目的は何であれ、家族が一つとなって
行動する時間を持てること、
過ごせること・・。
これも確かに“幸せ”な事に違い無い。
写真は、山道で拾ったドングリと、海岸で拾った貝を、
娘が、“おくるみに包まれた赤ちゃん”に仕立てた物。
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記事中でご紹介した中川家さんが出てくる寅さんの映画は
ここをクリック
奇しくも“寅さんシリーズ”最後の作品、渥美清さんの遺作となった。
余談ながら、天に召される一月ほど前に、渥美清さんがクリスチャンになっていたという事は、意外と知られていない事実なり。
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