昨夕、鹿児島に台風が上陸するかも知れないというので、
外回りに有る風に飛ばされてしまいそうな物たちの片づけをしていたら、
錆びた南部鉄の風鈴をデッキの片隅に見つけた。
学園寮からの夏休みの帰省中、娘(中3)が
「ねえ!風鈴、下げたいね!あの風鈴どこにある?」と訊いてきたので、
そのとき思い当たる所を探してはみたのだけれども、
結局見つけることは出来ずにいた風鈴だった・・。
軽く錆を手でぬぐい、糸先の短冊も無くなってしまっているその風鈴を、
「これじゃあ、役立たずの風鈴だな・・」と、苦笑いしながら
そのままデッキの釘にぶら下げ、しばらく曇った空と重ねて眺めていた・・。
瞬間、一陣の風!
その風鈴をそのままゆらりと揺さぶり、
揺れた風鈴が「チリン!」と鳴った!
それがなんだか嬉しくて、もう一度聞けたらと、しばらく待ってはみたけれど、
もう、同じ勢いの風は吹かず、短冊を無くした糸だけが、
所在無さ気にくるくると回って見せるだけだった・・。
それを見ながら僕は、
「ああ、さっき風鈴を鳴らしたあの風は・・、この夏が、
夏として最後まで頑張ろうとしている最中に、思わずついてみせた、
一度っきりの、ため息だったのかも知れないな・・」と、そう思った。
一つため息をついた夏は、今は一休みしているように思えるけれども、
9月に入っても、まだまだその頑張りを見せて来るはずだ。
新しく短冊を付け変えて、「チリ~ン、チリ~ン!」の風鈴の音を、
9月の娘の帰省日には、頑張る夏と一緒に聞きたい・・。