昨晩のNHKスペッシャル、天才絵師「若冲」の謎 科学が迫る!驚異の技発見 ご覧になられましたか。江戸時代に若冲は京都の青物問屋に生まれましたが、若くして家業を弟に譲り、絵画の道に入りました。数多くの作品がありますが、相国寺の釈迦三尊像三幅と動植綵絵三十幅はその華麗な色彩と超細密な描写で世に知られています。私は九年前に、相国寺承天閣美術館で開催された、開基足利義満六百年忌記念の「若冲展」で拝見しました。会場の正面に釈迦三尊像が三幅、左右に十五幅ずつ一堂に展示されていましたが、その迫力に圧倒されました。花に光が当たる陰影もヨーロッパの印象派の画家たちが、油絵具を塗り重ねて表現するよりも以前に、日本の絵具で絹の画布に一度も失敗をすることなく、光の具合を表現しているといいます。孔雀の白い羽を構成する線も0.2ミリの間隔で描き、これも描き直しなどは見られないという恐るべき精神力です。迫力のある群鶏図や小さな昆虫の絵などもすごい写実的です。牡丹小禽図の花の雌蕊も非常に小さな点にまで色を重ね、見る者の視覚に訴える効果を出しています。紅葉も赤色の絵具一色のみですが、二度三度と色を重ねたり、絹布の裏側からも同じ色を塗るなど技法には光るものがあります。南天の実の赤も同様に赤い絵具ですが、顔料を変えて作品を見る者に立体感を感じさせます。しかし、若冲が絵画を誰に習ったかはよくわからないそうです。動植綵絵の群魚図の左下に描かれている魚の青い色は、この度、光線を当てた分析で鉛が含まれていることが判明しました。当時の日本には珍しい顔料で、長崎の出島に一キロのみ入荷したことが記録にあるそうです。また若冲は生き生きとした草花を取り上げるだけでなく、虫に食われたりした病葉をも細密に描いています。絵を通して私たちに生老病死を語りかけていたのでしょうか。若冲はこう言っています。「私の絵は、千年後に理解される」
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