研修会に参加した旅先での夜。
飲み会を済ませてホテルに帰ると、TVにライブ映像が映し出されていた。
煙を上げるアメリカのワールドトレードセンタービル。キャスターの喋りとテロップでアメリカで同時に数か所でテロが生起したことを知る。
TVニュースに釘付けになる。繰り返し流れる旅客機がタワーに衝突するシーンや、サウスタワーとノースタワーが白煙をはきながら崩落する。その衝撃に胸を痛めた。ビジネスホテルの一室で長い夜を過ごしたことを鮮明に覚えている。
テロの犠牲者は2,977人。日本人も24人が命を奪われた。
「9・11」あの日から20年が過ぎた。
アメリカはテロの首謀者アルカイダの温床となっていたアフガンへ侵攻。それからアメリカのアフガンにおける対テロ戦争は20年間も続いてきた。
アメリカは対テロ戦争で何を得、内を失ったのだろうか。
この20年間でアフガンでの戦死者は2,500人、負傷者も2万人を超えている。費やされた戦費は220兆円という膨大な額だ。それはフィンランドやインドネシアの国家予算の20年分という、とんでもない巨額だ。
また、米ブラウン大の研究チームによると、米国が9・11からの20年間に費やした、対テロ戦争費用は約880兆円だとしている。戦争によって亡くなった人は90万人に達するという。
この戦争費用は、米が国外での作戦にかけた費用と、2050年までにかかる退役軍人の療養費なども計算されている。戦死者は米兵が7,052人。敵対した兵士が30万人。市民が36万~38万人だという。
だが、これでも戦費は部分的な費用にすぎず、もっと多い戦費がかかっているという。
20年の節目を機にバイデン大統領はアフガンからの撤退を決断した。その決断の大きな背景には、7,000人を超える若い兵士の犠牲、880兆円という巨額の損失が国家を苦しめているということがある。
8月末の米軍の撤退が近づくと、一夜にしてタリバンが政府軍を蹴散らかし国を制圧してしまった。多くの命の犠牲と220兆円にも及ぶ巨額をかけて民主主義を根付かせようとしたが、その犠牲と巨額戦費の対効果は虚しい限りだ。
ベトナム戦争の幕引きを彷彿させたアフガンからの米軍の撤退。アメリカが負った痛手は大きい。これからのアメリカの対テロ戦争や対外政策に大きな影響を与えることは間違いない。
日本も8,000億円もの金を費やしてきたが、現地におけるその効果は見えない。
「9・11」犠牲者の冥福と世界平和を祈る。