Light in June

文学やアニメ、毎日の生活についての日記。

音楽は終わらない

2012-01-29 01:59:06 | 音楽
音楽は終わらない。そう言い切って始まったamazarashiのライブ『千年幸福論』。
今年最大級のビックイベント、行ってきました。場所は渋谷公会堂。

午後5時開場のはずが、リハーサルが長引いているとかでかなり待たされましたが、結局開演時間は6時15分くらいでしたっけ、それほど遅れずに始まりました。突然に。

急にホール内が暗転し、ステージからボーカルの秋田ひろむ氏の朗誦が響く。爆音過ぎて明確に声を聞き取ることができなかったのが残念でしたが、彼は最後に「音楽は終わらない」と力強い声をぼくらに届けてくれました。そして続けざまに圧巻の「デスゲーム」。

amazarashiのライブは映像と演奏とが一体化していて、映像もド派手。ステージには半透明のスクリーンが張られ、その後ろに演者がいる、という配置。スクリーンには曲が変わる毎に当然別の映像が映し出され、その絵だけで見る者を圧倒する。したがって、スクリーンの向こうにいるボーカルを始めとした演者の姿ははっきりとは見えない。演出上、映像が途切れた瞬間にその姿を垣間見ることができますが、しかし顔や表情までは分からない。

ぼくは本格的なライブに赴いたのは今回が初めてなのですが、しかしこれはどうやらかなり異質なようです。amazarashiは、そのPVからして映像面にも力を入れていることが伝わってきますが、彼らのライブは、音楽だけを聴かせるというよりも、映像と一体となった新たなパフォーマンスを体験させることに主眼が置かれているのではないかと思いました。

けれども、やはりamazarashiの最大の魅力は歌なのだ。ライブで聴くと、ボーカルの声の表情が手に取るように分かって、その点では、CDで聴くよりも興奮度は高い。確かにCDの方が音程はしっかりしているし、安定しているのだけれども、ライブはむしろその不安定さがいい味を出しており、感情の強弱が直に伝わって来る。ときに絶叫するように歌う秋田氏の持ち味は、ライブでこそ最大限に発揮されると言ってよいと思う。

その意味で、圧巻だったのは「カルマ」と「ワンルーム叙事詩」だった。とりわけ「ワンルーム叙事詩」から「奇蹟」への繋ぎは神がかっており、すばらしかった。「ワンルーム叙事詩」に少しアレンジを加えて朗誦部分を付け足すことで、「奇蹟」への自然な流れを作ったのみならず、よりメッセージ性が強くなり、心に響いた。心に響いたと言えば、最初の「デスゲーム」でいきなり鳥肌が立って、それからの息もつかせぬ展開に圧倒されっ放しだったのだけど、「カルマ」直後のごくごく短いMC(このライブで最初で最後のMC)には、心を揺さぶるものがあった。

無気力な生きた死体。秋田氏はそう言いました。そんな自分がここ渋谷公会堂のステージに立っている、と。ぼくはたぶん、秋田氏を自分と重ねて見ている。ぼくのような人間が、果たして社会人として生活していけるのか、不安で堪らなくなるときもあるけれども、秋田氏の活躍を見ることで、それを望むことで、ぼくは今日を生きる勇気をもらっている。かなり陳腐な言い方になってしまってごめんなさい。でも、真理なんてものは案外にして陳腐だったりするのかもしれないよ。秋田氏が歌い続けることで、ぼくは可能性の光が皆無ではないことを知る。だからどうか歌ってください。ぼくもナイフじゃない武器を探します。

MCの後の「未来づくり」は、歌詞が一部飛んでしまったようでしたが、感動的な映像と相俟って、人間賛歌のように感じました。それは続くラストの「千年幸福論」でも同じで、人間は生きるに値するということを、熱烈に歌い上げているようにさえ感じました。

最後に新曲も聴けたし、満足。2時間足らずの短めのパフォーマンスでしたが、その分ぎゅっと内容が凝縮されていて、音楽的・映像的に中身の濃い時間を過ごせました。すげえなあ。