うんたま森のキジムナー

黒砂糖

宮古島の観光名所のひとつになっている
近くに実家がある知り合いがいる。
実家のすぐ近くに観光バスが止まるそうだ。
バスから降りてきた人の中には、物珍しそうに、
わざわざ家の中をのぞきにくる人がいると
言う。実家にはオバァが一人で暮らしている。
オバァは、いつ誰が来るかわからないので、
いつも黒砂糖を用意しているらしい。

博物館に行けば、数十年前の宮古島の暮らしが
模型で作ってある。「宮古島の暮らしを見た
ければ、博物館へ行けばいいのに」と息子に
あたる知り合いが文句を言っていた。
ミクロネシアのある島で、「集落探検ツアー」と
いうオプショナルに参加したことがあった。
ツアーに参加している人はヨーロッパ系の人が
多く、日本人は撮影で参加している、私を含め
わずか数人。普通に生活している人の家を覗き
込んで、家の中の写真を撮ったり、今、思えば
失礼なことを平気でしたもんだ。

観光が大きな収入源となっている国なので、誰も
文句を言う人などいない。知り合いの話を聞いて
いて、ふと、そんなことを思い出した。
宮古島は日本本土から遠く離れたところにあるが、
ここも日本である。観光産業が大きな財源と
なっているけれど、普通に暮らしている人たちは、
直接、恩恵を受けているわけではない。
誰だって、家の前をウロウロされたり、
のぞかれたりしたら嫌でしょ。都会なら警察に通報
されてもおかしくないと思う場面に出くわす
こともある。それでも、オバァは黒砂糖を用意して、
家の前に来られる人に「疲れがとれるよ」と
配っているそうだ。

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