エルキュール・ポアロ。灰色の脳細胞。現場まで出かけなくても事件を解決してしまう。そんなことは知っていたのに、ポワロ氏と対面するのは初めてです。今思い出したことがあります。一口含んでワインの銘柄と製造年をドンピシャ当てることができるのはポアロ氏ではなかったでしょうか。ずっと昔、ワインの本を読んでいて、そんな記述があったような…
オリエント急行で殺人事件が起きる。映画化も何度かされたようですが、私は無縁でこの年になってしまいました。
話題性の高い作品なのに事件の被害者はたった一人。先に読んだのが、みんな死んでしまう作品だったもので、ちょっと拍子抜け。
「心理学的面」から「椅子にもたれて真相を突き止める」ポアロ。「人が見たら居眠りしている」と思われるかもしれない。これって「眠りの小五郎」を通して事件の真相に迫る『名探偵コナン』の元ネタだったんだ!とようやく気付いたような次第。そしてポアロの顔がだんだん阿笠博士になってくる。
推理を推理として成り立たせるためにはステレオタイプって重要かもしれません。「女とは…」「情熱的といわれるラテン系の人間とか…」「○○人は嘘がうまい」「アングロサクソン系の頭脳」。『そして誰もいなくなった』では気にならなかったことが見えてきます。舞台設定が国際特急、登場人物もさまざまな国から。だから「決めつけてかかる」ことは推理上必要なのかもしれませんが、あまり多用されるとねぇ。
事件の全容が明らかにされると案外シンプルな仕掛けだったんだなと思います。
私の中で一番印象に残るのは、ポアロはじめ事件解決に尽力した3人ともが犯人に同情し、せっかくたどり着いた真相を葬ろうとしたことです。真実を明らかにすることが必ずしも善ではない。作者の、弱者に向けられた温かい目を感じたことです。
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