ぶろぐのおけいこ

ぶろぐ初心者は書き込んでみたり、消してみたり…と書いて19年目に入りました。今でも一番の読者は私です。

湯島天神

2023-05-29 22:22:51 | PiTaPaより遠くへ

 正しくは湯島天満宮というそうです。私がまだ20代の頃、会社の後輩が、東京へ出張に行ったついでに湯島天神にお参りをしてきたと言ったことがあります。「湯島通れば思い出す…」と彼は歌うのですが、「おつたとちから」が何者だか、何をする人なのかもよく知らないまま、何十年と過ぎたのでした。しかし、不思議なもので、彼から聞いたこの歌の冒頭部分だけはよく覚えていて、口ずさむことができます。


 2019年の秋。千曲川が氾濫し、北陸新幹線の長野新幹線車両センターの車両が台無しになった台風19号が通り過ぎたすぐ後に、湯島天神に初めてお参りをしました。
 そしてこのたび、ふたたび訪れることになりました。4月末、境内の梅の木は青々と葉が茂っています。湯島の白梅が咲いた頃はきっと見事なのでしょう。結婚式やお宮参り、お礼参りで訪れる人も多いようです。
 「湯島通れば思い出す…」を自分の中でなんとかするために、泉鏡花の『婦系図』を読んでおこうと青空文庫を開いてみたのですが、これが長編小説。プリントをためらうほど長い。ところが、もともとの『婦系図』には、湯島天神の場面はなかったらしいということがわかってきました。新派劇で上演されるにあたって追加されたらしい。さらに面白いことに、新派劇の初演から7年後、泉鏡花は『湯島の境内』として戯曲を発表しているらしい。小説の舞台化によって新しい戯曲がひとつ生まれたというわけです。泉さんって、小説も戯曲も書くのですね。
 それなら、長い『婦系図』はいったん置いておき、湯島天神に参拝する前に、『湯島の境内』だけ確認しておこうと、またまた青空文庫を開いてプリント。新幹線の中で読み終えたのでした。確かに台本の形式をしています。そして最後には1914年10月とありますから、先の話と合致します。
 気づいたのはふたつ。よくコメディのセリフで聞くことがある、「切れるの別れるのって、そんな事は、芸者の時に云うものよ」って、もともとは『湯島の境内』に出てくるものだったんだということ。もうひとつは、「張り倒す」という表現がこの時代にすでにあったということ。「災難なんて張り倒す」と早瀬が言います。


 お蔦が弁天様と呼ぶ不忍池辨天堂までは、湯島天神から直線距離で500mほど。この石段を降りていったわけですね。

 石段を降りたら切通。お蔦のセリフにある「切通しを帰るんだわね、おもいを切って通すでなく、身体を裂いて別れるような」の切通。わからないのは、「湯島の白梅」の歌詞に出てくる、「お蔦主税の心意気」。別れてくれと主税に言われ、事情を知ってあっさりと別れを受け入れるお蔦の心意気はわかるにしても、この場面だけでは、主税の心意気が理解できません。これは本編を確認しなければわからないことなのでしょう。
 2019年には忙しくて気づかなかったのですが、湯島天神の境内には「泉鏡花筆塚」という碑があります。近くに紫蘭やアヤメが咲いていて綺麗でした。


 後になって、『婦系図』の朗読がYou Tubeにあることに気づきました。これはラクチン。アイロンがけの間にでも耳で「読める」と思ったのですが、さすがに長編小説。この朗読では、1本20分程度で30回。これで小説全編だそうです。20回まで聞いて(もちろん、ながら聞きですからテキトーです)力尽きています。朗読した方はエライ。

 

 繋がってきました。そもそも名古屋でうどんを食べたことがきっかけで、桑名で「歌行燈」にふれ、金沢市の石川近代文学館で、泉鏡花は金沢出身なんだと気づき(石川近代文学館へは時間外だったので入館できませんでした)、湯島天神をきっかけに、「湯島の境内」を開いてみることになった。私にとってこれまで文学史の年表でしか出会ったことのなかった泉鏡花という人に、ぐっと近づいています。 

 


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