すべての作品が、小学五年生の「少年」を主人公とした短編集。
表紙からページをめくっていくと、目次の前のページの真ん中に、「少年は、小学五年生だった。」とだけ書かれています。主人公がすべて小学校五年生の少年であること、そして作品中では、氏名が明らかにされている場合もありますが、「少年は…」という具合に、主語は「少年」になっています。
そんな作品が17編。年度初めが舞台の「葉桜」に始まり、季節が一回りして春先が舞台の「タオル」まで、17人の小学五年生が、バトンタッチをしながら季節を追うように駆け抜けていきます。高校の教科書にも載せられているという「バスに乗って」もあります。
小学五年生の少年を主人公にしたてた理由を、作者は「人生で大事なものは、みんな、この季節にあった」と考えているからだということです。
重松さん、描写がうまいなぁと感じます。よくできているって、私のような素人が書いてもほとんど意味を持ちませんが、小学五年生の微妙な子供心を文字にするのがうまいなぁと思います。
17の作品の中で、私が一番好きな作品は、「おとうと」。明日、目の手術のために入院する弟を、彼の希望を叶えるべく二人乗りの自転車で、海が見えるところまで連れていくというお話。弟って、兄からすれば面倒くさくて、かわいくて、やっかいで、愛おしい存在。こんな年になった私でも、自分の弟(だってそんな年であるのだが)のことを考えると、胸がキュンとするような作品でした。
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