
東山手から坂を下りて、南山手に向かいます。大浦天主堂下の交差点の信号待ち。
カステラの松翁軒と福砂屋の店舗が並んで見えますが、面白いのは福砂屋のロゴがコウモリであること。西洋では不吉なものとされるコウモリが中国では幸福のシンボルだそうです。昨日聞いた講演では、中国ではコウモリの蝠の字が福に通じ、幸福を招くものだと言ってました。長崎のカステラは西洋と中国を日本でミキサーにかけて生まれたものというわけですね。
東山手の長崎市古写真資料館では、南山手にベルビュー・ホテルという日本最古の外国人向けホテルが作られたと勉強しました。その場所にはANAクラウンプラザホテル長崎グラバーヒルが建っています。この洋風の建物は、かつて東急ホテルだったと思います。
祈念坂は大浦天主堂の横にある坂
ANAのホテルを周りこむように左に坂を上っていけば、観光地の雰囲気十分。土産物屋も並んでいます。外国人の家族も歩いています。正面が世界文化遺産の大浦天主堂。天主堂の前を右に進めばグラバー園です。私は左に進み、大浦天主堂横の坂道を登っていきます。祈念坂と呼ばれているようですが昔はこんな名前はついていなかったように思います。この坂の途中で、下りてくる一家族とすれ違いました。傘をよけないとすれ違えない細い坂です。
祈念坂で見つけた案内。居留地時代のものが日常の中にある不思議
振り返ると祈念坂の左に大浦天主堂
祈念坂を登りきると、少し広い場所があって、大浦天主堂の塔を見下ろすことができます。35年前に来た時ここから写真を撮ったはずです。この場所を覚えていないのですが残っている写真が証拠。塔やANAのホテルの尖塔は変わりありませんが、背景の港の景色の変化に年月の経過を感じます。
35年前に倣って撮った現在の風景
35年前の風景
またこの辺りは野良猫が多いように思われました。猫も犬も好きなわけでもない私なのに、「岩合光昭の世界ネコ歩き」気分で、シャッターを切ってしまいました。
大浦展望公園から東山手方面
大浦展望公園。ここからは東山手方面がよく見えます。活水と海星がどんと存在感を主張しています。市電のモーターが唸る音が聞こえてきて、麓には石橋という電停があるはず。長崎の中心部では、どこにいても市電のモーター音、ブレーキの軋む音、プァンという警笛音が聞こえてきます。これぞ長崎の音風景。気分だけは「長崎BREEZE」(さだまさし)。雨は上がったようですが、しかし雲は北から南へ勢いよく流れていき、風は朝よりも強くなってきました。
長崎市南山手レストハウス(南山手乙27番館)という洋館。これも自由に入ってよいみたいです。静かな、いいところです。この記事のトップに使った写真は、レストハウスの玄関のドア越しに港を見た写真です。鎧戸がスライド式というのは珍しいと書かれています。歴史的に価値ある建物が多くあると、その保存や管理もしなければなりません。長崎市も大変ですね。にもかかわらず、このレストハウスには私のほかには誰も客らしい姿はありません。南山手にやってくる観光客はグラバー園と大浦天主堂を目指す人がほとんどだと思いますが、ここはそれらの人たちの通り道ではありません。私はテラスで腰を下ろして一服しました。
レストハウスの庭にも紫陽花が咲いていますが、この紫陽花の赤いこと。ずっと、紫陽花の学名はハイドランジァ・オタクサだと思い込んでいましたが、これは正しくないそうです。シーボルトは新種だと思ってお滝さんの名前を編み込んだ学名を付けたのですが、実はすでにHydrangea macrophylla という学名がつけられていたというお話し。
(つづく)
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