※国民森林会議では会員募集中です。一人でも多くの皆様にご参加頂きたくご案内申し上げます。
<国民森林会議の設立趣意書 一部抜粋>
森林をめぐる諸問題は、決して林業関係者だけにゆだねておくべきではありません。
美しい国土と緑を子孫に残すために、日本の森林はどうあるべきか、いまこそ国民的合意を高める必要があります。
私たちは、国民的立場から、将来の森林や林業、山村のあり方を方向づけ、提言としてまとめ、その実現を期したいと思います。
このためには、広い視野と長期の展望に基づいた英知の広範な集結がぜひ必要です。
そこで「国民森林会議」を設立し、広く国民・政府に訴えることを決意するに至りました。多くの方々のご賛同とご加入を望んでやまない次第です。
1982年1月9日
国民森林会議HP http://www.peoples-forest.jp/
公開講座名:『国民森林会議2017年第4回公開講座』
講演:上山和豊氏(日田郡森林組合理事、(株)トライウッド元専務取締役)
速水亨氏(速水林業代表取締役、(株)森林再生システム代表取締役)
日時:2017年12月9日(土)13:30~17:00
場所:林野会館5階
テーマ:林野補助金問題を考える
開催趣旨:森林・林業・林産業・山村の各局面において、国からの補助金の持つ意味・意義はかつてから大きなものであったが、近年そのウェイト・影響力はさらに巨大なものになりつつある。
様々な現場では、「補助金がつくか、つかないか」で多くの事業の実施・不実施が仕分けされる。長年にわたる木材低価格容認政策の結果、森林所有者、森林経営者、林業経営者は自立した経営主体としての意欲・経営力だけでなく誇りをも徹底して削がれてしまった。その結果、主体の自立を下から支えるという補助金の本来の在り方とは異なって「補助金が現場のすべてを支配する」といった転倒した状況が生み出されてきているのである。
当会議では、平成27年度政策提言「近年の間伐を考える」において、全国各地で問題となっている「荒い間伐」について、その原因が間伐補助制度の変更にあることを明らかにしつつ、その問題点及び解決の方向を提示したところに反省点が残る。
そこで、今回の公開講座では、林野補助金問題についてさらに広く、深く検討するためにお二人の講師をお招きして、ご講演をいただく。
上山和豊氏には、長年の森林組合や第三セクター会社経営の経験を基に、現場からみた補助金問題を論じて頂き、速水亨氏には、補助金問題を俯瞰的かつ批判的に論じて頂く。
その後、参会者の皆様とともに提起された様々な論点について時間の許す限り議論を深めていきたい。
<中田メモ>
上山和豊氏(日田郡森林組合理事、㈱トライウッド元専務取締役)講演内容メモ
補助金頼りの森林組合経営に特化
国・県の意向に沿った事務執行代理機関になっていないか
森林経営計画が現実的なものから補助金目的の計画へ逸脱してきている
<林業の現場の状況>
効率化による生産コストの削減
林業の機械化
本来あるべく森林管理手法から経済優先主義の管理手法への転換
次代へ繋ぎ残すべく森づくりが現在の価値のみを求める林業へ変わってきていないか
<高性能林業機械のメリット、デメリット>
(メリット)
山からの木材生産が向上
人力的な負担が軽減
作業道とのセットが基本であり、そのことにより作業道整備が進む
機械化が進み、求人の呼びかけがしやすくなり若者が参入しやすくなった
(デメリット)
大型機械による林地損壊が発生
コスト削減優先による粗い間伐搬出
高性能林業機械で対応できない事業地が放置
林業機械が高額で償却費が負担増
<林業作業者の意識変遷>
昔の作業者はよい山をつくる山師、職人であり匠であった
現在は、生産性のみを重視した経済優先主義となり、森林はあくまで木材産出する場となってしまっている
<森林所有者の森林に対する意識の変化>
森林経営の放棄、皆伐放置林が目立つ
<今後のあるべき姿>
補助金支給先の変更 意欲のない森林所有者から意欲ある林業事業体個人へ
全国画一的な林業施策を地域の実情にあった施策へ
独占企業的な事業展開を図っている森林組合の改革
雇用の場確保と若者作業者定住事業推進
速水林業代表 速水亨氏 講演内容メモ
<国内林業のプラス・マイナス面>
プラス マイナス
・森林蓄積の増加 ・受託着工数の下落
・自給率の回復 ・木材価格の長期下落
・スギ需要の拡大 ・林業従事者の減少
・バイオマス発電の増加 ・間伐技術の単純化
・国産材利用の合板増加 ・森林所有者の所得が無い
・若干若手人材が増大 ・再造林の放棄
・クリーン木材法が成立 ・スギが最も安い木材
・森林認証の増大 ・育林の合理化が進まない
・公共建築の木造化法 ・環境の配慮が行われない
・新しい木材の使い方 ・森林管理技術の低下
・間伐が市民に知られた ・市民との関係が表面的
<H28.5.24閣議決定 森林・林業基本計画>
CLTや非住宅分野等における新たな木材需要の創出と主伐再造林対策強化による国産材の安定供給体制の構築を車の両輪として進め、林業・木材産業の成長産業化を図る
1.資源の循環利用による林業の成長産業化
2.原木安定供給体制の構築
3.木材産業お競争力強化と新たな木材需要の創出
4.これらの取組を通じ地方創生への寄与を図るほか、地球温暖化防止や生物耐用性保全の取組推進
(問題点)
・合理化への誘導が画一的
・育成複層林誘導は無理がある 現状ある森林整備センターの山をお金を掛けずに育成複層林にする?
・多様性への具体化が無いままで皆伐を進めている
・列状間伐を進めることで将来の林分の姿が見えなくなっている
・作業路を使った伐採での生産性は単なる障害木の伐採の生産性に過ぎない
・育成複層林で再造林コストを考えない木材価格ができる
(現状の間伐)
・列状間伐では伐採技術が育たない
・将来の森林の姿と実行する間伐作業の関連を考えない作業がみられる
・手入れ不足の森林より過剰な間伐を行った森林のほうが再生困難
・計画書上、森林簿上、数値データと実際の山との誤差が大きくなっている
<長伐期リスク・メリット>
リスク メリット
・育林資金の回収が長期間 ・初期育林費用が分散される
・自然災害のリスクが高い ・間伐収入が可能になる
・社会的な変化に弱い ・用材の採材の自由度が高い
・太いだけでは単価は高くない ・超長伐期は貴重材
・林道がなければ搬出は困難 ・材質の安定
・長伐期の管理技術が未熟 ・生物多様性が高くなる
・将来の管理継続の保証無 ・景観的な美しさの形成
・社会の変化が読み切れない ・搬出の生産性が高くなる
・相続税の問題 ・市場へ急激な供給が分散
<考えられる課題>
・労働に対しての補助金の手法は正しいか(直接補助)
・皆伐を進めて林家のメリットはあるか
・需給バランスの問題はこのままでよいか
・補助金が入った大型製材工場の利益の再配分は疑問
・森林組合の体制は林家のためになっているか
・森林組合の作業班は組合組織から独立させる
・公庫の造林資金の元本返済は林業経営では困難
・概算経費での納税は変える必要はないか
・環境管理・生物多様性の費用負担は林家が負うべきか
<速水林業尾で従業員に求める議論>
1.現場での会話で自らの意見と異なる意見も尊重し、自らを否定されたと感じないように
2.技術や知識が分からない時は恐れず「分からない」と言うこと、学ぶことに慣れること
3.自らの技術や知識を人に教えることができるようにし、分からない相手の責任にしないようにする
4.すぐに役立つ知識だけに重きw置くのではなく、すぶには役立たない知識も大事に理解する
5.話し合いの中で相手を補い高める努力をし、相手の足元をすくうようなことをしない
➡個々が想像力を持った行動する組織
最も美しい森林は、また最も収穫多き森林である アルフレート・メイラー(恒続林思想)
森林という命の塊に抱かれて想像という羽を背中に広げて大きく羽ばたけ!
以上