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共通試験の抱える問題-記述式解答の採点

2019-11-19 23:30:47 | 教育

 先日、国会で外国語の外部試験実施の延期が決まったと思ったら、今度は、国語と数学の共通試験における記述式問題の採点の客観性に関することで揉めている。

  採点の客観性に関して、国会でのやりとりは、自己採点と専門のの採点者による採点の結果では、30%程度差があるという内容であったと記憶しているが、正確さという観点からは、自己採点と専門家の差ではなく、専門の採点者間の一致度の方が問題である。文科省が、二次試験の記述式問題について正解を公表するように求めたところ、不可能という回答や「解答例」でお茶を濁す大学があったが、当然と言えば当然の結果である。

 大学の個別入試のための記述問題を作成し、採点もした経験からすれば、記述式問題の「正解」を公表するなど思いもよらないことである。記述式問題の答えは、多様であり、一つに集約、限定することなどできはしない。同じ採点者でも、午前と午後、一日目と二日目では、微妙な差や揺れが出てきて、採点を見直し、修正することは珍しいことではない。共通試験の選択肢でさえも、微細に検討すれば、多様な意見が出てくるに違いない。問題文の原著者が、「筆者の真意は何か。」などの問いに答えられず、どれも正しいような気がするなどと漏らすようなこともある。記述式ではなおさら困難な状況に直面することになろう。

 採点はいい加減であっていいというつもりはない。真剣に、慎重に取り組んでも、なお厳密には他の採点者による評価と一致しない、差が出るということを認めざるを得ないと言っているのである。世の中には、こうしたことがよくある。本質的で、重要な価値を有するものの評価に関する場合が多い。

 すべての評価が客観的な結果を生み出すべきであるという幻想を前提にした論戦は実りあるものにならない。客観性を最重視するのなら、評価に揺れのある記述式は避けたほうがよい。予備校に依頼して、何万人ものアルバイト採点員で事を進めることで問題をクリアするなど、ほとんど「冗談(ジョーク)」である。記述式問題は二次試験段階で、各大学に出題と採点を任せ、真剣に、精一杯の努力することで、難局を切り抜けてもらうしかないようだ。