日本語を母国語にする人間同士なら、日本語の表現は、基本的に理解しあえるものと、単純に考えてしまいがちだが、案外、そういうものでもないようだ。
理解不能な言語表現にも、その表現意図によって、二通りに分けるのがよいと思う。
その一つは、意図的に、分かりにくくする場合である。この典型例は、不祥事を弁明したり、重大な問題に関する閣僚の答弁などである。相当にたちが悪い。
首相によって、「丁寧」、「真摯」という語の意味は、辞書に載っていないものに変質してしまったし、「戦闘」ではなく、「武力衝突」であるなどと途方もない言い訳をする閣僚が居て、国会での議論の信頼を失ってしまった。また、問題発言体質の政治家が、「そういう意図でいったのではない。もしもそれを不快と思う人が居ればお詫びしたいし、発言を取り消したい。」というのが常套手段になっている。意図しないことをいってしまうのは、母国語能力が低レベルであり、それに応じて内言活動たる認識・思考能力のレベルも低いということになるのではないか。また、いったん口にしたものは、消しゴムで消すようになくなるものでもない。
もう一つは、悪意はないが、意図通りに表現できていない例である。
わが家の近くに、私立大学の学生寮がある。その入り口に、かなり大きな、しかも古びた注意書きの板(看板とでも言おうか)が二枚掛かっている。ずいぶん昔から使用されているもののように見受けられる。その板に、大きな赤い文字で書かれていることは、次の通りである。
「部外者以外立ち入り禁止」
思わず、?であり!である。「部外者だけが入ってもよい」という建物に、関係者である学生は入れないことになるのだが、だれも気づいては居ないようだ。
「関係者以外立ち入り禁止」あるいは「部外者立ち入り禁止」の誤りである。
先日、高速バスに乗った。車内の料金表示板の横に、次のような注意書きないしはお願いがあった。
「バス車内では、2,000円以上の紙幣の両替はできません。」とある。二人分の料金の用意をするために、千円札を二回両替はできるのかできないのか。ちょと分かりにくい.一般に、バスの運転手は、運転に神経を使っているので、乗客の応対に無頓着、無神経であり、説明が下手である。しかも表示の有無に拘わらず、両替の内容は知悉しているから「そんなことも知らないのか。」という態度になることが多く、乗客も不愉快になる。この表示の場合も不親切、不適当である。どうすればよいか。
おそらく、2,000円札、5,000円、10,000円札はだめだといいたかったのだろうから,
「バス車内で両替できる紙幣は、1,000札だけです。」
とすればよい。何の問題もないではないか。しかもちょっとだけ短くて済む。
こういうことの教育は「言語形成期」(小、中学校段階)に行うべきことである。不確かな日本語を、意図的あるいは不用意に使用する人間を放置している国語教育は、理屈に合わないだけでなく、倫理的にも問題がある。
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