それ、問題です!

引退した大学教員(広島・森田信義)のつぶやきの記録

関係を捉える力-「コロナ」と「五輪」から学ぶ

2021-02-11 11:48:10 | 教育

 A,B,Cという物事があるとする。それぞれを切り離して(個別に)認識することは大切であるし、世の中の物知りは、このような認識に基づく知識をため込んでいることが多い。

 しかし、A、Bや A、Cをどのような関係にあるのかという観点から認識する方法もある。これを「関係的にとらえる方法」すなわち「関係認識」の方法と呼んでおこう。世の中の物事は、他の物事と無関係に独立して存在していることは少ない。むしろ個々の物事も、他の物事との関係で、本質や特徴、問題等が明らかになることが多い。

 例えば、今日、避け得ない問題になっている「経済」と「生命」(コロナ克服)の関係について考えてみよう。経済それ自体、コロナ自体に関する知識・理解が大切であることは言うまでもないが、当面、そのことでなく、両者の関係について考える。

 両者は、車の両輪のように考えがちである。両者とも重要であるから、「両立」が重要だとする考え方である。「withコロナ」という言葉が用いられるようになって久しい。両者が同時に機能していることを理想とするものである。withとは、「共存」「手を携える」の意味であり、具体的な施策としては、「Go to トラベル」と「Stay home」などのキャンペーンに具体化された。過去1年余の取り組みを反省的に振り返ると、到底、正しい関係認識とは言えない。安易な「with思想」は、矛盾を抱え込むだけでなく、国民、市民の気の緩みをもたらし、問題を複雑化し、解決を遅らせる結果を招いた。

 「Go toトラベル」と「Stay home」の関係は、両輪の関係ではなく、「アクセル・ペダル」と「ブレーキ・ペダル」の関係を意味する。コロナに対する姿勢は、withではなく、againstである。相反するはたらきの両者を同時に踏み込めば、車は困惑しよう。同時並行的に捉えるのでなく、時間軸に沿って、「前後関係」で捉えなくてはならない。そして、言うまでもなく、「生命」尊重を優先せざるを得ないであろうが、実際にはそうならず、国や自治体の対応は事態に効果的な対応ができないことが多かったし、今も続いている。

 新型コロナ対応で言えば、様々な部署が関わったり、新設されたりした。厚労大臣、経済再生担当大臣、官房長官、ワクチン接種担当大臣、医学関係者による専門家会議、その後の分科会、医師会、さらにアドバイサリー・ボード(諮問委員会の意。なぜ横文字なのかは不明)などが関与する。難事、国家的一大事に対して総掛かりの態勢を造ることは大切である。しかし、多くの部署や組織が、共通理解のもとに、効果的、創造的に機能していなくてはならないが、意思疎通ができていない事例が多く見られた。それぞれが、自分の守備範囲を理解すると同時に相互の関係を頭に入れて行動しなくてはならないのである。
 
  今、オリンピック・パラリンピック組織委員会会長の女性蔑視発言が物議を醸している。自分の発言が女性の尊厳を傷つけるということに認識が及ばなかったのが原因である。かつて若い女の子の間で、「KY」と言う言葉が流行した。「空気が読めない」という意味だった(「空気が読める」も「KY」だからこの造語法は問題なしとは言えないが)。自分の判断や発言が、空気というその場の「状況」とどう関わるのかということを見誤っていることを示している。これも関連的思考・認識の問題である。もっとも、当の会長は、失言で有名な人物のようであるから、もともと関連的に物事を捉えることの不得手な人で、組織の長たる資格に疑問があったのではなかろうか。2020五輪はご難続きである。招致決定にいたる初期段階から問題を抱えていた。東京五輪の意義については最初から疑問を持っていたが、日本の抱える諸問題を浮き彫りにしてくれる機会にはなっているようである。


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