一晩泊まり、翌日はスイス国境に近いコモ湖観光に出かける。バスがコモ湖に近くなる
と鉄条網の張られた国境が見える。私たち日本人は島国だから陸にある国境は映画や
テレビの世界でしかお目にかかれない。このように国境を鉄条網で区分けするにしても
延々と張られているのか、一部なのか知らないが、費用は折半なのだろうか。
下種は大したことを考えないものだ。
コモ湖は歴代の王や有名人たちの保養地として使われてきた。ヨーロッパは都会地でも
田舎でも古くからの建物や広場などがそのまま残されており、そうした所に現代が入り込
んだ特有の雰囲気を持っている。ここでも歴史上から言えば由緒あるところでありながら、
おしゃれなブティックやカフェが並んでおり庶民の観光客にも楽しめるし、パンフレットな
どで宣伝するセレブ達が楽しむプライベートな豪華な庭園などと幅広いリゾート気分が
味わえる場所だ。湖上クルーズやゴンドラ観光もあるらしいが、私たちは湖周辺の公園
やショッピングで観光気分を味わったが、有名な湖と言われなければ、ミラノから時間を
かけてワザワザ出かけて来る程のことはないと思った。
ミラノへの帰りはラッシュアワーとぶつかり、渋滞しながらのドライブとなった。少し暗くな
ってからホテルに到着し、レストランまでの道中は徒歩でドゥオーモを横目に見ながらの
ものだった。夜に見えるドゥオーモは所々に灯りがつけられており、昼間よりも幻想的で、
しかも上から覆いかぶさってくるような威圧感があった。コモ湖に出かける時、ドゥオーモ
に立ち寄り聖堂内の観光をさせて貰った。綺麗なステンドグラスが何故、多く飾られてい
るのか不思議に思ったことはなかった。説明によるとステンドガラスは順々に見ると一つ
の物語になっており、それを見ればキリスト教の良さがわかるように描かれている。当時
は識字率が低かったから字では布教が難しく絵で説いたとの理由だ。
それにして、こんな大きな聖堂をよく作ったものだと感心ばかりしていた。一番困るのは
写真に撮り切れないしビデオでも部分々の絵にしかならないから面白くはない。
遠くに離れて全景を撮ろうとすると人が小さくなり過ぎて、観光記念の写真にはならない
から、ここで撮る写真はただのアリバイ作りのようなものだった。
今宵のメニューはミラノ名物、ミラノ風カツレツ。仔牛の肉をカツにしたもので結構、大き
なものが出された。日本で食べるカツレツとそんなに差が分からず、普通に美味しくパス
タを出されてイタリアでの食事を感じさせる。昨晩のホテル、今日のレストランと出された
料理は、私たちの口に合い、この様子だとこれからも食事で悩まされることはなさそうだ
った。2日目になるとツアーの仲間と少しずつ打ち解け合うようになり、出されたものの好
き嫌いなど話し合うようになっていき、シェアすることにも抵抗が薄れてきた。レストランの
最初のオーダーは水を買うか食前酒を買うかの選択になる。
初めてのヨーロッパで知ったことはワインも水も値段が余り変わらないということで、日本
は如何にワインが高価で水は如何に疎んじられているか。日本人にとって、水は高価な
ものと考えるよりもワインは暴利を貪っているのではないかとの疑念にかられてしまう。
食事を終えて来た道を帰りながらドゥオーモを見上げる。
夜も更けてきてブルブルっと首すくめる。