ヴェネチアから南下してファッションの街、ガイドの説明では近郊には沢山の革製品工
房があり、ヴェネチアのガラス工房と同じく隣接の店屋に連れいかれる。私たちはブラン
ド品も革製品も興味はないのにツアー客は強制的に、こうした店に引き込まれる。
この店は流石にファッション大国、美女とハンサムなモデルさんが音楽に合わせて革製
品の紹介をする。背丈があり足が長く格好いい人だから、革を纏っても違和感のない姿
に見とれてしまい、ひょっとして私が着ても似合うのではないかと錯覚させる。
とは言え、その後に値札の付いた商品を見せられる正気に戻り、似合いもするはずの
ない衣服売り場から離れ外で一服する。イタリアは喫煙に関して寛容だから移動中のバ
スの中にいる間だけ我慢すればよかったから、ヘビースモーカーには悩みの少ない国
である。革工房を出て目的地に向けてバスはひた走り、似たような風景ばかりで瞼の逢
引きが始まる。やがて街を東西に走るアルノ川に沿って町の中に入って行くと、段々と賑
やかさが増し観光客らしい人が行き来していた。バスは人の行きかう隙間を縫うようにし
て建屋の横に停止、ガイドに急かされて降りた先に古代建築物のようなヴァザーリオの回
廊がある。ここを通り奥に行くとシニョリーア広場があり、地元の人や観光客が思い思いの
形で寛いでいる。広場には銅像や彫刻が飾られており、そうした場所を白馬に乗った警
察がパトロールする風景を日本で見ることはないから、異国であることを強く意識させる。
こうしたことは演出ではないだろうが、外国ではよく見かける光景だ。
広場周辺の説明、散策後に昼食時間を兼ねた自由行動となり、再集合場所の説明を受
けて各人が散らばった。時間的には遅くなった昼食。私たちは昼食場所のことなど何一
つとしてリサーチしていなかったから、パカパカさんたちと一緒に行動することにした。
パカパカさんたちは事前にガイドブックでチェックし、ヴェッキオ橋の先にあるレストランが
良いらしいとの情報を持っていたので、橋の向こう側にある店を捜しに向かう。橋ではある
が川の上に建屋がある橋で、遠くから見ると橋には見えない、実際に建屋の中は貴金属
店がずらりと並んでいるから中にいると橋を渡っている感覚はない。今はお腹を満たすこ
とが優先、店屋の商品を眺める余裕はなく、急いで橋なのか店屋なのか分からない所を
通り過ぎた。