私たちが泊まったアンコール・シティーホテルは繁華街から少し外れた所にあり、値段の
割には設備の整った過ごし易いホテルだった。朝食にご飯、味噌汁、漬物、海苔など和
食もどきのものも用意されており、内容はいつも同じものだったが、それでもこれで満足し
ていた。ホテルの真向かいに小さな市場があり生鮮食料品や衣料品を売っていた。市場
の前は広場になっていて、個人がバイクに積み込んだ商品を売る店を出している。500m
l、1㍑ペットボトルに入れたガソリンを売る店や産直の果物を売る店などがある。
ここで物を買う時には現地の人用の値段と観光客用の値段2つの値段があると思えばいい。
商品に値段表は表示していないから聞くと、観光客にはドルで言う。そして、その値段は客
が値切ることを見越してのものか、客がスンナリ払えばラッキーとしたものなのか不明なれど、
数倍の掛値を平然と告げる。この国はリエル通貨のはずなのにドルが溢れており、この地で
値段表示のあるものはドル。
さて、言われた値段について考えてみなければ、それが妥当なものか判断できない。例え
ば、普段着のTシャツにアンコールワットのプリントがしてあるものを『How much ?』とやると
『3$』と言う。『No thank you』と市場のおばちゃんに応える。すかさず『1$ OK ?』とくる。
売りにかかっていると今度はこちらが足元を見て『No』と帰る素振りをすると『1$ 2』とシャツ2
枚を1ドルで手を売ってくる。こんなやり取りは最初の内は幾ら値切ったなんて喜んでいたが、
発展途上国の国をからかっているようにも思うことと、毎回やるから面倒になったことで、後に
なってから値切り合戦は止めにして、適当な所で手を打つようにした。
市場のお婆ちゃん相手の買い物、ニコニコしながら品定めをして値切りもせず『これ頂戴』と
言う、粗末な袋に入れてくれながらおまけをつけてくれたりする。大したものではないのに妙
に有り難く思えくるから、目を吊り上げたような顔をして値切っていることが馬鹿らしいと思え
ることもある。
ドルで買うと値段の上下は0.5$単位になるから、0.6$のものは1$になるから、細かいことを言
うとリエルで買い物した方が少しだけ損をしない。オールドマーケット周辺にある観光客向け
の土産物屋や現地のアクセサリーの店などは値札が付けられているから、こうした所では値
切っても相手にされない。
余りふっかけられないように値段交渉