ホテルからドンコイ通りを歩くルートはホコ天に近いからブラブラ歩きでウィンドー・ショッピングも可能だ。しかしホテ
ル前にある国道の向こう側に行こうとしても信号機はないし横断歩道も整備されていない。渡る人は次々やって来る
バイクの群れに恐れることなく、堂々と歩いて渡って行く。私たちは真似をしようとしても怖くて最初の1歩が出て行か
ない。ガイドさんが歩き方を教えてくれた。渡ると決めたら、向こうからやって来るバイクのことは気にしないで、同じ速
度でスムースにわたり切る。途中で止ったり、歩く速度を変えない、特に危ないのは急な変化を作ると必ず事故になる。
相手は今進んでいるスピードに合わせて避けようとしているのに、こちらがそれと違う動きをすることが一番危険という
事だ。何だ簡単な事ではないか、理屈では分かるが洪水のように押し寄せてくるバイクの渦の中に向かう度胸がつか
ないと、とてもじゃないが足は出せない。これさえ守れば相手が避けてくれと信じるしかないと腹が据われば問題なく
渡ることができる。
ガイドについて渡ってみると、少し要領を覚えるが、後ほど自分たちだけで渡ろうとすると、未だ迷いがありぎごちない歩
行。何度か練習する内にコツを掴み、連なるバイクの群れを横目に堂々と歩けるようになった。やっと私たちも市民権を
得たような気分だ。
所が市内のある地域のバイク洪水はホテル前の国道と大違いで、こんなものではなかった。地下トンネルの帰り道、ラッ
シュアワーでもないのに片道1車線の道は両方とも、隙間のないほどバイクに埋め尽くされていた。私たちの乗る車もバ
イクの渦にのみ込まれてノロノロ軍団の一員になった。すると後ろから救急車が渦の中を突き進んできた。ここでも救急
車がくれば優先させるような行動をとるはずと見ていたが、バイクも避けるだけのスペースはないから救急車はピーポー
を鳴らしながら、私たちの前までやって来たものの、足止めを喰い進むことは出来ない。
暫くの間、膠着状態が続き何かの拍子でピーポーは前に進んで行った。
自動車は高根の花だから、タクシーや特別な人以外はすべてがバイクを使っている。1家に1台のようだから1台のバイク
に夫婦、子供2人が乗っていることも珍しくない。雨降りだと運転手の着るポンチョのような雨具の中に子供たちが雨宿り
しながら走り去る。荷物にしても載せられるだけ載せることが日常だから、バイクの何倍もの容量を縛り付けて運ぶ、生き
た豚でも縛り付けて走っている。ナンバープレートはついているがバイクに乗るのに免許は不要だと言っていた。カンボ
ジアでもここでも自動車は高級な乗り物だから、庶民の足はバイクで昔の日本のマイカー時代到来の如く、ここではバイ
クがそれだ。
夜もバイクで一杯