クチ・トンネルに行く時、迎えに来た車は何とベンツだった。超一流のグレードではなく、スタンダードクラスだと思
うが、ベンツはベンツ。こんな車でベトコンが暗躍したジャングル地帯もビンビンと走破する。その帰りにガイドが水
上劇の鑑賞を勧めてくれた。
ベトナムに行くと決めてからホーチミン周辺の興味ある場所や観光について調べた時に水上劇もあった。その時、
あまり興味を引くことはなかったから候補としては没にしていた。
ガイドの説明だと言葉が分からなくても十分楽しむことは出来るし、観て帰らないと損をするとまで熱のこもった勧
誘をする。今日、一日共に行動して誠実な人柄だったから嘘を言うことなかろうと、信用して水上劇に行くことにし
た。調べて貰うと帰国の日の夜しか切符は取れないが、ホテルの集合時刻に間に合うということで、詳細を聞くと夕
方に食事と組み合わせるコースが便利というから、それを申し込んだ。
食事はベトナム料理で特別変わったものではなかったが、アオザイを着た美しいお嬢さんが給仕をしてくれた。
アオザイはベトナムの民族衣装ではあるが街中で着ている女性を見ることはなく、レストランや観光施設など限ら
れた所でしか会えない。
水上劇は竹竿の先に結ばれている糸に人形をつなぎ、それを水上で操る人形劇。水面を滑らせたり、沈め気味
にして水しぶきを立たせたりして動きにアクセントをつけている。その動きは実に見事で、竹竿と人形が一体にな
っているようで、間に糸があるとは思えない。
物語の荒筋は貰ったパンフレットに日本語でも簡単に説明されていたが、それを読まなくても何となく筋は分か
りそうだった。時には、わざと激しい動きをして前にいる観客に向けて水しぶきを飛ばし、観客が出す声に呼応し
て、また大げさに動き観客の笑いをとる。約2時間の水上劇は本当に面白くガイドのいう事を聞いてよかった。
劇が終わりスタッフが登場、ここでも若い人たちばかりで伝統芸を継承しているようだ。ホテルに帰り荷物を受け取
り迎えに来たガイドと共にメコン川に別れを告げた。