Aquascooter Maintenance for Spearfishing アクアスクーターで魚突き 全76回

使いこなそう、アクアスクーター整備ノートby KosakaNatsuki

**全76回で終了済み**

Blog 第4回「現地でのトラブル対策 始動不可」その2=小坂夏樹= #4 Hard Starting at Site ②

2015年02月11日 | マニュアル
 「尻引き紐」"Hip Harness"とでも言へば良いか、腕の疲労軽減に大きな効果があるハーネス。股に挟んで操縦すると片手運転でも安定走行が出来る。PescaSubApneaの投稿を真似したが、仲間は類似のアイデアで独自に自作していた。銛を抱えて走行中でも脚を開くだけで外れるから、そのまま潜ることが出来る。球は発泡材


=始動不可・前頁からの続き=
2、スノーケルと空気室は、点検も簡単で、通常は陸上での始動トラブルに無関係と思われる。しかし、時には珍妙な失敗もある:

私の遠征時には、長さが丁度ぴったりのこのスノーケル内に、銛先の中柄(押し棒と言う者が多いが)を数本入れて両端を粘着テープや発泡材で塞いで持参する。宿での荷ほどき時に、塞いでいた粘着テープがパイプ内部を塞ぐ状態になっていたのに気づかず海岸へ行き・・・・一瞬始動してすぐエンストを繰返してしまい、中々気が付かなかった。
ごみを吸込むのも困るから、取付時には無駄と思わず中を覗いてみることだ。

空気室には水が溜まっていることがあり、うっかりすると燃料通路に侵入してしまうことがある。毎回使い終わったら必ず点検すればこんなことは防げる。
また、気が付くとガソリンが溜まっていることもある。これはキャブからエンジン回転に伴う圧力変化で霧化した燃料が押出されてくるものと、燃料タンクの口元にある小さなゴムバルブ=タンク内圧を保つ一方向弁が不良で逆流して来るものがある。これ自体は始動にそれほど影響しないようにも思うが、プラグ被りの原因になりかねないから逆さにして排出しておくのが望ましい。


なお、吸気系統は 「水中(正しくは水面)実走行中の浸水トラブルが多い」 ので、別のページで詳しく取上げる予定




3、キャブレタ調整は、なかなか思うように行かないものだ。チェンソーが同じ膜式キャブレタを使っているので、或いは経験者にはたやすい作業かもしれない。しかしクラッチもなく、水中排気式のアクアスクータは初めから水の抵抗が掛かり遥かに厄介だ。
何にせよ、本ブログはエンジンの専門家でもない利用者の私が、これまた専門でない利用者の利便のために書いているので、内容は各自が実機を運転して検証して欲しい。

現場でのキャブレタ点検調整はチョークを掛けるかどうかということと、 L と H のネジを調整することに尽きる。その下にある大きなネジは機械的にアクセル(スロットル)の戻りを規制してアイドリングの回転を維持するだけの ISC=アイドルスピードコントロールネジだ。これは現実には常に高めの回転となるようネジを締め気味にしておくのが良い。そうすればアクセルを握らなくても始動は容易だ。水中では水の抵抗が掛かってもエンストし難くて安心感がある。但し、始動した途端にエンジンは吹かした状態となり轟音を発してしまう。

さて L と H の2本のネジだが、その位置つまり何回転戻したかは、運転の振動があってもずれたりしないと思うのだが、いつの間にか動いていた?ということがある。実は水面で、使いながらちょこちょこ調整したことを忘れているのか、えっ!と言うほど標準位置からはずれていたりする。
いずれにしろ前回使用時とは燃料の混合比や温度など条件の変化が考えられるから、始動が不調と感じたらすぐに初めの "標準位置"に戻してからネジを調整しよう。

今さら不要とは思うが、マニュアル指定のネジ標準位置は:

   AS500以前 ティロトソン(Tilotson)キャブレタ
    調整ネジは1本だけしかなく、閉めてから 1-3/4 回転戻す

   AS600 ウォルブロ(ワルボロ)Walboro キャブレタHDA-115形 
    L,Hネジとも 1-1/8 回転戻す

   AS650 ウォルブロ(ワルボロ)Walbro キャブレタHDA-233B形 
    Lネジ 2回転、 Hネジ 1-3/4 回転戻す   

ただし、スクータ本体の型式は同じでも、キャブを載せ替えてあれば、そのキャブに合わせる必要がある。
キャブの詳細は別途「整備編」で作動図などと共に紹介するが、その調整ネジは文字通り、主としてLがアイドリング、Hが中~最高速に影響する。どちらのネジも閉めるにつれ燃料流量が減少する。

始動性にはL/Hネジ両方とも影響するので、どちらも過剰に閉めず、「標準位置」に戻して始動ロープを引く。

それで始動できなければ:    
チョークを掛けてみる・・・・これで始動すれば、燃料流量が少な過ぎたと判断し、Lネジをゆるめた上、チョークなしで再度試してみる。私の経験では、ゆるめるのは1/4回転づつなどと大雑把で構わない。それでも駄目なら、H ネジも半回転ほどゆるめてみる。

これで始動すれば一安心だが、駄目なら次項のプラグ・高圧の点検と、面倒な作業が続く・・・・

さて、始動出来たとしても、L ネジの位置はマニュアルでは、「アイドル回転が安定する位置に設定する」などと簡単に書かれているだけだ。
そこでウォルブロ社や他の機器の記述を参照すると、次のように説明されている:
 
「Lネジ(アイドリング)の調整は、左へ回してネジを緩め、混合気を濃くしていくと回転が上がり、更に回すと回転が低くなり始めるから、この時の最高点より少し右へ締め戻したところにする」 実地でもこの通りの動作となるから、試して欲しい。

H ネジは、アイドリング調整にはほぼ使わないが、最高速の調整には専らこちらを使う。始動後、アクセルを一杯に握りながら、右回しで締めていくと燃料流量は減るが、逆に回転が上がってくる。これは空気と燃料の混合割合=空燃比=が「薄い」効率の良いほうへと変わるからだ。
これだけなら調整も簡単だが、H ネジも上記の通り始動性に影響するので、それを調整して燃料が全体的に薄くなりすぎると始動しなくなる。従って、始動が出来て高回転も出るという位置に調整することが肝要だ。薄いなら濃くしようと L ネジのほうを更に左に大きく戻すと、回転の低い領域に入ってしまい、始動出来ないことになる。

エンジンを回しながらの調整は必ず水中で行うこと!
水中でといっても、操縦しながら細かく調整するのは意外と難しい。波静かな岩場であれば、岩に先端を押し付けながらエンジンを吹かすのがやり易い。砂地の浅場では砂を吸込んだりと厄介だが、膝などに押付けて吹かしながら調整する。
後端を水面上に出し、壮大な噴水を楽しみながら調整することも出来そうで、そんな画像が(2015年2月現在)YouTube に投稿されている。しかし画面で判断できるように、うっかりするとスノーケルから浸水しかねないから注意が肝要だ。
https://www.youtube.com/watch?v=a6dNdfMV3v4

YouTube の画像は時々で削除されたりするのであまりあてにならないが、時には参考になるものが投稿される。他の情報同様、直接URLだけの引用をしない方針だが、時には紹介したい。
つい最近気づいたものに、VIDRAX FISHING というブルガリアの業者(販売HPあり)がキャブレタの調整をしている場面がある。素晴らしい調整設備を備えていて驚きだが、調整には手間を掛け過ぎのようでもある。水中で調整すればより簡単だと私は感ずるのだが、どうだろうか。
https://www.youtube.com/watch?v=LXg-HD0SmF8




4、プラグと火花電圧

キャブレタの調整をしてもエンジンが始動できない時は、点火プラグを点検しなければならない。今までは各点検事項を紹介してきたが、予め調整も済ませて海岸へ持って来たのに始動できないという時は、実は他のことを放っておいて、さっさとプラグをみたほうが良いとも言える。この点は、臨機応変に対処して欲しい。
プラグレンチは必ず本機と共に持参することが最重要だ。

プラグ被り=濡れ 
本機の使用にあたって常に悩まされるのがこのプラグ被りだ。私の場合海岸到着後2回に1回はこの原因で始動が出来ないと言っても過言でないくらいだ。始動しないから何度も紐を引き、諦めてプラグを外すと案の定、べったりと燃料で濡れている。流量などを詳細に点検調整すればこんなことも起きないのかと訝りながら毎度繰り返している。

外したプラグの電極が濡れて(被って)いれば、燃料過剰の可能性があるが、点火しないから燃料が溜まっただけとも考えられる。濡れていては火花が飛ばないから、口で吹いたり、拭き取るなどして碍子部分を乾燥させようとするが、中々きれいになってはくれない。ティッシュペーパーなどあれば好都合だ。一案としてはプラグ孔にねじ込まず、載せておくだけにして、始動ロープを引くと圧縮空気で少しは付着燃料を吹き飛ばすことが出来る。憎むべきタバコ用のライターで焙るのも悪くはない。

手っ取り早いのは新品の予備プラグに交換することだ。
これだけでたちまちエンジン始動、何の問題もなし!ということが実に多い。つまり1発目の始動がうまくいけば、本質的な不調でない限りその後の問題なしと感ずる。
余りにもそうした頻度が高いので私は今では、5~6回始動ロープを引き、だめならチョークを掛けて2~3回引いてみる、それでも駄目ならすぐプラグを外してみる癖がついてしまった。
 
なお、プラグキャップを外すときは、端子とプラグ頭が固着したままケーブルから抜けてしまうことがあるので、キャップを何度か、動く範囲で少しねじり、ゆるめてから引抜くのが安全だ。




プラグレンチに何度も言及するが、これは鉄にメッキしたもので、海ではすぐ錆びてしまう。しかし機能には関係ないので、スクータのハンドル、取っ手などにねじ止めしたり、テープで留めておく事ができる。私は取っ手に脱着式結束バンド(リピートタイ)で簡単に留めている。
レンチの柄は銛の中柄で代用できる。ナイフも使えるように、レンチに切込を付けておくと楽だ。邪魔でなければ柄を差し込んでエポキシ接着剤で固めて置く手もある。全体に錆止めを塗っておくのが良い。


プラグ汚れ具合
私のスクータは新品プラグを取り付けて、1日使っただけでも白かった碍子がこげ茶色などに汚れて、カーボンが溜まっている。今まで使ってきた5台全てが同じ傾向だったのでそんなものかと思っていたところ、仲間のプラグはいつまでたってもすっきりしたキツネ色のようだ。キャブ設定が悪いか、混合オイルが悪いか、或いは使い方が悪いのか・・・・

この写真に示したのは、BP-4HSで右から新品、1番は1日使っただけ、2はちょっと使ったが不調で交換、3は20回以上使ったと思うもの。すべてパーツクリーナを吹き付け、ブラシなどで清掃してあり、3は少し不安ながらそれでも全てが使える。しかし、時間が勿体ない現場では予備プラグを用意して置き、交換しながら使うのが一番だ。
なお、左端はイリジウムプラグで、仲間内では一発始動が可能で素晴らしいというので、試してみたが、他のみんなとは違い、私のものでは始動はするが回転が不調になって使えなかった。原因は未解明。

仲間のプラグはこんな焼け具合で、かなり使い込んだネジ部の汚れ=カーボン付着に比べると、碍子はきれいだ。これは付属のボッシュプラグ


道具を持って来なかった!
という場合は、取敢えずプラグが被っていると仮定して燃料コックを閉じ、アクセル全開で繰返し始動ロープを引く。これによってキャブレタからシリンダまでガソリンを出来るだけ早く空にし、更に引き続けることで多量の流入空気によって付着燃料を吹飛ばしプラグを乾燥させる。何度も引いているうちに始動の兆候があればしめたものだ。燃料コックを開けて更にロープを引き、始動させる。
内部の燃料を早く空にするには、既に触れた方法だが、燃料コックのところでキャブレタと繋ぐゴムの燃料チューブを外し、チューブ内のガソリンを捨てて燃料系を素早く空にする。ゴムチューブはただ差し込んであるだけなので、ダイビングナイフなどでこじれば簡単に外すことも出来る。こうして同様に数十回もロープを引きプラグが乾燥出来たなと想像できたら、またチューブを元に戻してコックを開け、始動を図る。アクセルは基本的には開くのだが、私は再びプラグ被りが起きることを心配して全開にはしない。

暫く放置して自然にプラグが乾くのを待つということも考えられる。運転直後で内部に余熱がある場合は良さそうだが、数十分待ってもうまくいくとは限らない。従って、プラグレンチは必ず本機に付属させておくべきだ。


火花点検
点検は取説にあるので省略するが、現場で点検するのは昼間が殆どだろうから、火花が飛んでいても日射などで目に見えないことがある。特に狭い火花ギャップでは難しい。衣類などで光を遮って観察するとよい。
火花放電は自作で簡単に銅線を向い合せ、何ミリ火花が飛ぶかで確認できる。数ミリ以上のギャップにすると火花が良く見える。また、火花距離=ギャップは電圧に比例するから、高圧部の健全さの推定にもなる。写真の下のものはネオン検電器で、橙色に光るので分かり易い。ネオン管に抵抗をはんだ付けしただけのもの。安価な市販品がある。
本当に火花が飛ばないようでは、簡単に修理出来ないので、その場は使用をほぼあきらめと言うことになる。

以下次回
             =小坂夏樹=


Blog=第4回「現地でのトラブル対策 始動不可」その2 終り=






Blog 第3回「現地でのトラブル対策 始動不可」その1=小坂夏樹= #3 Hard Starting at Site ①

2015年02月08日 | マニュアル
イザという時に始動できないのがアクアスクータか?

と呟きたくなる程、アクアスクータは何と言っても 始動出来ないことが多過ぎる。海外のネットでも、「故障が多過ぎる、電動式でまともに使える物はないのか」などの質問が飛び交っている程だ。

事実、取扱説明書に従って問題なく始動できれば良いのだが、家で充分整備したのに、いざ海へ来てみると始動できないことがしばしばある。それだけではなく、つい先程まで調子良く使っていたのに、さっぱり掛からないということも多い。

このブログを始めるそもそもの動機もその通りで、私は出版物やネット情報で何とか問題解決の情報を得ようと期待したが、さっぱり見当たらない。



そうした中で、唯一詳しい情報源となり得るのは、アクアスクータ生産国イタリアのネットフーラムである、
PescaSubApnea=素潜り魚突き だけだった。
膨大なネットフオーラムだが、残念ながらイタリア語なので私は自動翻訳に頼るしかない。日本語に翻訳すると殆ど読解不能の文章になってしまうが、同系統である英語にすれば想像力を最大にして何とか理解ができる。

URLを直接記しても変更されたりするので、この表題で検索して欲しい。Topページから登録を済ませ、フォーラムページトップから、Aquascooter Comer - Arkos をクリックして目的のフォーラムに入ることが出来る。私は閲覧ばかりで投稿しなかったためか、現在画像の閲覧が制限されてしまったが、興味ある向きは試してほしい。歴史、使用法、修理、改造などあらゆる情報が満ちている。なお、”Arkos”はAS600型までの製造会社で、旧型の情報も取り上げられていることを示している。
このフォーラムで私なりに理解した情報は最大限利用させて貰っている。


さて、本題に戻ってとにかく「現地でエンジンを始動」するためにはどこから何をすれば良いのか?魚突きに逸る気持で、スクータ使用を諦めるならどこで見極めるのか?考えられることを挙げてみるなら:

点検或いは調整の順序としては:
1燃料系統の確認、タンク水混入有無
2スノーケルの詰まり、空気室
3キャブレタ調整ネジ位置
4プラグと火花電圧
5排気口とバルブカップ
とすればよいと思う。まあ言わずもがなで誰でもこれらの点検をすることとは思う。

以下、それぞれの要点は:
1、燃料系統は、空のタンクに新たに燃料を入れた場合は除き、燃料を注ぎ足しながら何日も使っているような場合は水が溜まっていないか確認する。短時間であれば燃料をペットボトルに移して確認し、燃料だけをタンクに戻す。ペットボトルはガソリンで溶けるから、長時間放置してはならない。

容器が無ければタンクの下から光を当てて覗いてみる。もやもやとしたものがタンクの底に見えたら水だと確認できる。少量であれば無視するが多い場合は水抜きをしなければならない。困った時の荒技としては、燃料キャップを閉めるか、もっと良いのは掌でタンク口を押えたまま全体をひっくり返す。底に溜まっていた水分は、今度はキャップ部に集まるので、集まったと想像できたらキャップを一瞬緩める、或いは掌を一瞬浮かして排出する。勿論燃料も一緒に流れ出してしまうので、手早くしなければならない。
前に紹介したスポイトがあればこの作業は簡単だ。

・・・・余談だが、夜のバイクツーリング中にトラブルがあり、燃料切れか?と確認のためタバコの火をタンクの口にかざしたところ、爆発炎上した・・・・などという誠にお目出度い実話がある。燃料系統の扱いには注意して欲しいものだ。

さて、燃料が送られないというトラブルもごく稀に起きる。ロープを引いてプラグ孔から霧状に燃料が噴出すことを確認するとマニュアルにはあるが、目で見て分かり辛いのが難だ。
誠に馬鹿馬鹿しい経験だが、燃料タンク内のフィルタ=吸込口が液面上に露出していたことがある。それでもフィルタに付着した僅かの燃料と気化した燃料が送られるらしく、一瞬だけは始動する。そして暫くするとまた一瞬始動を繰り返していた。
これは燃料チューブが経年で柔軟性を失い、均圧用のチューブと干渉していたのが原因だった。同様に、フィルタがタンク前面に押付られた状態になっており、全体を後ろに傾けるとこれも液面上に露出してエンストを起こすことがあった。

整備項目から考えると、フィルタの目詰まりを心配しなければならないが、経験上も清潔な我国では殆どその可能性はないと思う。怪しいと思ったら燃料チューブを抜いて、燃料がポタポタとこぼれ出ることを確認すればよい。
チューブを抜き、コックを ON にしてポタポタガソリンが出てくるか。

=以上燃料タンク系項目終わり=

中途になりましたが、次回は空気系統から    =小坂夏樹=



=Blog 第3回「現地でのトラブル対策 始動不可」 その1 終り=





Blog 第2回 アクアスクータ取扱方法=小坂夏樹= #2 Handling

2015年02月06日 | マニュアル
写真のアクアスクータは数年前のAS600型で、薄い黄緑色のタンクなので残燃料量が一目瞭然、使い易かったがすぐに廃止されてしまい残念だ。

 =初回立ち上げページは写真が表示されないなどの不調があり、あれこれと混乱したが、現在は正常に表示できると思います。=


アクアスクーターは経験的には新品のうちは簡単に始動が出来る。しかし水辺へ持参していざ始動しようとして苦労することが非常に多い。事前の点検と私なりのトラブル対策を説明したい。
以下、キャブレタのH/Lネジ調整は取扱説明書に従って事前に済ませてあるものとする。


使用時の点検項目:
1,スノーケル内部に砂・異物が無いことを確認し、流れ止め紐を掛けた上、確実に取付ける。プラグ、エルボ及びチューブ類がしっかり固定されていること。
2,排気バルブが正常に取付けられている事。ゴムカップがヘタっておちょこになったり、縁が折れ曲がっていないこと。
3,燃料蓋からの燃料漏れが無いこと。燃料コックは閉じてあること。
4, スタータロープが傷んでいないこと。私は丈夫なケブラーかダイニーマロープに交換している。その長さも、ずっと長くしてある。
5,燃料の混合比が大きく変った時はL及びH ネジ(アイドル・ISC/メインジェット調整ネジ)の再調整を念頭に置く。
6,一旦始動し、スノーケルを手で塞いですぐ停止すること。そのまま手が吸付けられる陰圧状態が続けば、スノーケルが確実に締め付けられており、吸気系には“急激な”漏れはないと確認できる。
7,時々燃料タンクに水混入がないことを確認する。これは、空気室に入った水が右側の緑色チューブを通じて燃料タンクに吸込まれて自然に溜まる、或いはタンク中での結露があるからだ。荒れた海で、点検せず連日使用したら、1週間後には1cm程も水が溜まっていたことがある。この時は、運転中に時々エンストしそうになって気がついた。こうした目的の為に、写真のような簡単なスポイトを用意しておくと好都合だ。水はタンクの底に溜まるので、吸い込んだガソリンに混入があるかの確認が簡単にできる。また、後述する様に、シリンダにオイルを入れるなどにも使える。



8,スタータロープが全く引けない(ガシッと止ってしまう)時はクランク室やシリンダ内部への浸水なので急いで!排水して再始動を計る。無理に引いてもスタータ部を壊す事ぐらいにしかならない。
9,水に入ったとたんに止まったり、始動出来ないことが多いが、現場ではボートダイビングやら、崖を降りて入水の場合など、事前確認が困難なことも多い。そんな場合には事前に、簡易的な確認として、一旦始動して排気バルブ=ゴムカップをある程度強く押付けてもエンストしないことを確認しよう。ゴムカップのみを嵌めて指で押付けるか、或いはバルブのプラスチック製止め栓の穴に(写真参照)ドライバーなどを差し込み、ゴムカップの尻を押さえることが出来る。これは排気抵抗を大きくすることで、エンジンの健康状態を推察しようというものだ。キャブ調整が悪かったり、点火時期が狂っていたり、圧縮不足などがあるとすぐエンストしてしまう。


現地での始動法と入水

必ず!水に入る前に始動してみること:
車の振動を受けながら海岸に到着した本機の内部では、場合によっては大量のガソリンがキャブレタや流路に垂れ込んでいることがある。そのまま水に入って使おうとしても始動しないことがしばしばあり、点火プラグを外してみると電極に燃料が水玉のようにくっつき、完全に被ってしまっている。
このような、「プラグ被りで始動出来ない」というのが最大の難問で、当たり前に起きるので、現場での最初の始動は重要だ。一発始動ができればいつも安心する。

そこで、必ず水に入る前には陸上で一旦エンジンが始動することを確認する。その時、砂浜ではスノーケルに砂を吸込まぬよう注意が必要だ。細い管を使っていたAS400のスノーケルには金網のフイルタが入っていたが、その後のモデルではパイプが太くなり、逆にフィルタは廃止された。砂を吸い込んだりすると、そのままエンジン内に達し、シリンダ・ピストンを傷つける恐れがある。

始動に当たっては、先ずは既に点検が済んでいても、燃料タンクキャップは一旦緩めて内部圧力を抜く。その後燃料コックを開ける。燃料系・キャブレタに燃料が残っていると思われる時は燃料コックを閉めたままでも構わない。
チョークは掛けず(つまりレバーは Run 位置)、アクセルを少し握って紐を引いてみる。燃料コックから先の燃料系が完全に空になっていれば、燃料が廻るまで5~6回は紐を引くことになる。反応があればそのままアクセルで回転を上げる。燃料コックを閉じたままの場合はすぐエンストするから、開けて再度始動する。
これで暖機も出来るわけだが、始動確認程度にとどめ、数秒で停止しないと加熱によってシール類変形の不安がある。アルミの胴体部を触ってほんのり熱くなる程度で停止しないと不安だ。
キャブレタまで燃料は廻っている筈なのに5~6回引いても掛からなければ、チョークを掛けた(Start‐Stop位置)上で紐を引く。チョークは殆どの場合は不要だ。
しかし陸上であろうと水面であろうと、常にチョークを掛けて一瞬始動音を聞いてからでないと正常に始動しないことが結構起きる。この場合はキャブの調整が狂っていると思われるので、その場で或いは後でねじを再調整するか、燃料流量調整膜の交換を検討する。

入水したら本体を冷やさないつもりで出来る限り急いで始動させ、暫く吹かして様子を見る。
また、岸辺で始動させ、そのまま入水して吹かしてみるのは望ましい方法で、調子が悪ければ入るとエンストするので、作動確認には最適だ。
どちらの場合も、そのまま水中で一旦停止し、再始動が問題なくできるか確認する。水中での始動には、腕を一杯に伸ばして本機を体から離し、そしてロープを大きく引くと良い。

これで数分間も最大速で運転できれば、温度も上昇し内部各所に付着した水分、燃料やオイル残滓などが吹き飛ばされ、調子が上がる。
なお、使用中は高回転を保つことでスパークプラグの温度が高く、煤などは再燃焼し、灰などの燃焼生成物は付着せず再始動に有利だ。取説にも低速運転を続けるとエンストすることがあるとの注意書が有るが、それは内部が冷えていけばプラグに煤や未燃成分が付着しやすくなるからだ。吹かすか、さもなければ止めるという、低速運転を避ける使い方が良いと思われる。


エンジン停止法:
エンジンの止め方によって、プラグ被りを起こし易いらしく再始動に大きく影響するようなので、停止法にも気を配る必要がある:
停止は、短時間ならスノーケルを塞いで空気を止めて停止させる。しかしスノーケルに延長パイプを付けている場合は通常手が届かず、チョークで止める。

マニュアルに依れば、エンジンが冷え切る程止めるなら、本体にRun・Stopと表示されている通り、レバーを停止側、つまりチョークを掛けた状態にする。そうすると濃い混合気で点火プラグが濡れて(被って)失火、停止となる。プラグはその後余熱で乾燥するが、水分・不純物が残って絶縁低下状態のままということもある。内部全体に残留する混合気は潤滑を保つには役立つのだろうが、再始動には濃過ぎて却って不利なのではないかとも感じている。

私は、キャブも含めた内部をできるだけ乾燥させるために、燃料コックを閉じて止めることが多い。こうして止めると再始動時には、燃料過剰によるプラグ被りが生じ憎いとの素人考えからだ。しかし、この方法では魚を見つけても瞬間的にエンジンを止めることは出来ず、燃料系が空になるまで数秒は掛かってしまう。また始動する時には4~6回ほども紐を引かないと始動せず、頻繁にやると肩・腕が痛くなる。

そこで私が常用する方法は、先ずコックを閉じ、続いてスノーケルを塞いで止めるというもの。その間一瞬の遅れがあるので、エンジンは廻り続けて燃料系の中身が減り、再始動時には過剰燃料によるプラグ被りを起しづらいという考えだ。この場合、普通は1発再始動が出来るが、結局プラグ被りを起こしてしまう時もあるので、万能だと言うつもりはない。

なお、空気を止めるのも、燃料を止めるのもエンジンに悪影響を及ぼすと言う論者も居るし取説(マニュアル)でも時によりチョークだったり空気だったりと混乱を来すが、私の経験的にはチョークで停止するより空気を止める方が再始動のトラブルが少ない。

魚突きでは停止・再始動が頻繁で、短時間での再始動はあまり問題ない。しかし長時間停止状態でエンジンが完全に冷えてしまう(5分以上か?)とプラグ被りを起こして再始動出来ないことが増えるようだ。従って、大物を見つけて狙う場合などは、出来る限り燃料コックを閉じて止める方が良さそうだ。
ボディーボードなどを曳いていれば、本機を倒して載せておくとトラブルを起し難い。

どんな止め方をしても、再始動するときには、チョークレバーを忘れずに Run 位置にしておくこと。さもないと燃料過多ですぐにプラグ被りを起こしてしまう。

出水・上陸時:
停止して上陸したら早めに再始動し、空吹かしして排気口から残滓を吐き出しておく。マフラ内部に設けられた凹凸に廃液が溜まるので、本体後部(尻)を下げたり上げたりして吹かすと排出し易い。
可能であればエンジンを回したまま上陸し、同様に空吹かしする停止法を採るのが最良だ。これだと停止に伴う陰圧で排気バルブから海水を吸込む心配が無くなる。

1日の終りには:
エアタンクに浸水があれば排出する。
注水しながら、或いは水に漬けて暫く運転する。
排気バルブを外して更に残滓を排出する:遠征中には面倒だが毎日注意した方が良い。この時、止めリングとバネを取り外すだけでゴムカップは浮いた状態になるので残滓は出てくる。外したリングとバネは無くさぬよう紐に通すか容器に入れておくのが安全だ。

タンク内の燃料への水混入の有無を確認する:一旦他の容器に移す必要があるがペット(PET)ボトルは樹脂が溶け出して燃焼に影響するというので短時間の使用に止めたほうが良さそうだ。



数ヶ月以上使わぬ時は;
まず清水中で運転する。
燃料タンクを空にし、燃料コックを開けたまま始動してキャブ内を空にする。1分以上掛かることもあるので水中で或いは水を掛けながらすること。もっと容易なのは、燃料チューブをコックのところで抜き、チューブ内のガソリンを排出してから始動することだ。これでキャブレタ内のガソリンが短時間で完全に無くなり、流量調整膜の劣化を遅らせる効果がある。また、キャブなどに燃料が残留していると、ガソリンが蒸発し、粘度の高い潤滑オイルが流路に残留するのを塞ぐことにもなる。
次に、プラグを外し、逆さにして始動紐を何度も引いてクランク室に残留しているかもしれない水を排出する。マフラを通しての排水も考慮して、プロペラ側を下にした姿勢でも同様にする。
プラグ穴から内部に潤滑油を滴下し、始動紐を数回引いて内部に行き渡らせる。
排気バルブ(=ゴムカップ)を外して保存し、本体を前後に傾けてしばらく置き、マフラに残留している廃液を排出させる。適当に水中で運転して放置すると、いつまでたってもこの廃液が出続けて不思議な感じがする。        
可動部分に注油
ビニ袋などに入れて収納

毎週のように始動させた方がエンジンにとって良いとの意見もある。これはキャブレタを頻繁にガソリンが通ることで清浄を保つからという。しかし保存が長期に亘る場合はそうも行かないであろう。


次回以降は:現場でのトラブル対策(現地で可能な応急措置)を紹介の予定。

その後は各種整備情報源の紹介
    整備・修理手順として
        キャブレタ
        スタータ
        プラグ・高圧部 
        エンジン本体
などと進めていくつもりです。排気バルブ廃止の改造もあり。
また魚突きそのものは関連事項として適宜紹介予定です。

    =小坂夏樹=


=Blog 第2回「アクアスクータ取扱方法」終り=





Blog 第1回 初めに =小坂夏樹=  #1 Preparation

2015年02月05日 | マニュアル
魚突きに大変有利な道具である、Comer社製 アクアスクータはトラブルがあまりにも多くて使いこなせないという声をしばしば聞きます。そこで魚突きをしたいばかりに18年に亘って苦闘した、素人の使い方とメンテナンス方法を少しずつ紹介していきます。何らかのヒントになれば幸いです。なお、画像は必要に応じて動画でも紹介するつもりです。

更新は時々気紛れにということになりますから悪しからず。


Note:
Japan is a historical fishing country that makes the amateur fishing condition rather complicated.
Spearfishing is legally allowed only in the limited prefectures in Japan for us. Even in that case, the spearguns are illegal so that you should only rely on polespears.
Crustacea and shellfishes are too strictly prohibited. There is no licensing (ie seasonal permits,etc….) system like in other countries.
Should you wish, consult an experienced local person to find out required places for you to avoid troubles and resulting criminal cases.
By KosakaNatsuki, an amateur spearfisher, Tokyo, Japan



使用前の準備



本格的に魚突きで本機を使うには予めこの写真に示すような配慮が望ましい:

1,スノーケルは大波、衝突などで脱落する事があるので、「流れ止」として把手に紐で結んでおく。細紐を輪にしておき、もやい結びで簡単に留めておく。

2,プラグレンチは本体に取り付けるなどして必ず携行する。魚突きの場合は常時携帯しているダイビングナイフで回せるように切込を入れておけば回し棒は不要だ。場合によっては銛先を差込んで回すことも出来る。交換用の点火プラグも携行すると安心。

3,横倒しすると燃料がタンクキャップから漏れる場合があるので、必要ならビニル片を噛ませるなどして漏れ止めとする。AS650の新品でも縁にこのような傷があって燃料漏れを起こしていた。


4,曳航ロープは燃料タンク固定腕に縛る。曳く時の姿勢変化を嫌って後尾のスカート(上の写真では黄色い部分)に穴を開けてロープを通している場合も多い。


5,燃料タンクには残量が分かるように、0.5リットル毎に目盛を付ける。燃料を入れながら目印を付けていけば簡単だ。本体を立てた状態と水平に置いた状態で目盛を付ける。但し、モデルによっては透かしても残量が全く見えないタンク材料が使われているのが残念だ。


他にもまだまだ工夫しておきたいことがあれこれある:
6,キャブレタ(燃料気化器)調整ねじ回しは使い易い様に丈夫な紐で本体または梵天紐=フロートロープに絡げておく。AS650型以後の物では専用が必要だが(写真は銅パイプで自作のねじ回し)、600型以前のものはねじが露出しているのでナイフでも回すことができる。


                                
7,AS650型以降では調整ネジは専用ねじ回しを無くすと回せなくなるので、写真のように、普通のマイナスドライバでも回せるよう、頭にヤスリで切込みを入れておくと安心。

8,危険予防で旗を付ける場合は小型のものをスノーケルに差込むと簡単

9,魚突きの場合は必ず梵天=フロートを一緒に使う。大物に引き込まれたり、碇を打ったときに潮流で引っ張られて沈んでしまわぬよう、浮力は梵天で確保するのだ。梵天の替わりにボディボードを曳いて移動するスタイルにすれば沖で本機を再始動出来ない場合には、本体をそのままボードに載せて押すか曳いて泳ぐことができる。



エンジンオイルについて



混合オイルは2サイクル船外機用で、Comer社の純正なら1%または1.5% その他なら2%と推奨されているが、その他オイルでも1.5%程度で使用している者が多いようだ。その都度純正油を入手するのは大変で、そのせいもあるだろうが、イタリアのネットでは、Castrol製よりMOTULの方が良いなどの記述が見られたり、各自が入手し易い品を使っている事が解る。鉱物油でなく、合成油が好ましいとの記述があるが、以前は逆の記述もあり、正直なところ良く解らないままだ。

海洋汚染防止の観点からは自然界で分解の容易?な合成油のほうが良いらしい。海洋汚染対策としてTCW3という等級が使われてもいるが性能には議論があるようだ。
ドイツの販売業者はCastrolの2サイクル船外機用TCW3を売っており、イタリアの業者はIP Pro GPX2であったり、QUICKSILVERであったり、様々だ。米国の業者はスペシャル品と称しているから余計分からない。結局のところマリン用を謳っている限り何でも構わないのかもしれない。
少し割高だがスチールやハスクバーナなど高回転チェンソー用が良いはずだとして使っている仲間もあり好調だ。私のプラグがすぐに真っ黒に燻るのに比べ、キツネ色を保っている。しかし普通の2サイクル船外機の回転域は4500-5000rpmで、アクアスクータと同じだからチェンソーのような高回転用に意味があるか私には解らない。使用条件の違いとかエンジンの調子或いはキャブ調整自体の問題かも知れない。
そんなこともあり、私は今のところは標準的?な価格のヤマハマリン用青缶を、表示通り2%で使っている。各種の混合油を作って比べるのが正解かも知れない。なお「混ぜるな危険」ではないが、異種のオイルを混ぜるのは好ましくないとのこと。


次回はいつになるか?実戦的な使い方を紹介するつもりです。




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