先日の至仏山のクモイイカリソウの記事で、同定のポイントとして
葉の縁の赤褐色の縁取りをあげた。
だから上の二つの写真は、クモイイカリソウと判断しているのだが
実を言えば、同定のポイントは他にも有ったのだ。
たとえば2008年5月に出版された偕成社の「新・尾瀬の植物図鑑」
には、147ページに「キバナイカリソウ」の写真と説明が載っていて
観察の要点として「花は淡黄色で錨形をしています。葉の下面に微毛が
あって、ふちにはとげ状の毛が有ります。」
と書かれている。
そして「近似種」として、クモイイカリソウが書かれていて「小葉のふちに
とげ状の毛のないものを言います。」と書かれている。
これから判断すれば、同定のポイントは次のようになる。
キバナイカリソウ→ふちにとげ状の毛が有る
クモイイカリソウ→ふちにとげ状の毛が無い
それから言えば
この写真の葉は、とげ状の毛が有るのでキバナイカリソウ
こちらはとげ状の毛が無いのでクモイイカリソウと判断
しても良いと思うのだが、ところがどっこい事はそう簡単では
無かったのである。
2006年4月に発行されたJTBパブリッシングの大人遠足BOOK
「尾瀬植物手帳」(猪狩貴史著)の52ページにクモイイカリソウの
写真と説明が載っている。
そこには次のように記載されている。
「至仏山塊や谷川連峰の蛇紋岩地のほか岩手県にも産する。
葉の縁に刺状毛があり赤褐色の縁取りが有るタイプと
刺状毛と縁取りの無いタイプがある。」
まさしく「はあ?!」である。
ついでにもう一冊図鑑を紹介する。
メイツ出版から2007年6月に出版されたネイチャーガイド
「尾瀬の自然図鑑」(前田信二著)には、クモイイカリソウについて
次のような説明がなされている。
「蛇紋岩変形植物の一つで、キバナイカリソウが変形したもの。
草丈30~40cmほどになる多年草。葉のふちが赤褐色になるのが
特徴。花は淡い黄緑色で錨の形に似ている。」
以上を参考にして考えると、とげ状の毛のない物と縁取りの有る物は
クモイイカリソウと考えて良いと思うが、とげ状の毛は遠くからは
判別しにくいので、縁取りのある物を同定のポイントとしたのである