ビスクドール・雛人形店・オーディオ販売 佐久市 ヤナギダ店長ブログ

ビスクドール64体他お節句雛人形をフランスへ輸出128年、軽井沢方面がお店の場所。

「かなしみ」

2019年10月11日 13時09分41秒 | owarai
あの青い空の波の音が聞こえる
あたりに
何かとんでもないおとし物を
僕はしてきてしまったらしい

透明な過去の駅で
過失物係の前に立ったら
僕は余計に悲しくなってしまった

/ 谷川俊太郎 初期の作品
昭和二十七年、
『二十億光年の孤独』から。

小中学校の教材でもある。
膨大な宇宙の片隅に住むぼく、
時代の変化の中に埋没しながら、
少しずつ変わっていく感覚、

失った大切なものあなたにも
ありませんか。

『傷心と空虚、どっちをとるか』

2019年10月11日 12時47分36秒 | owarai
結婚を別にして、人間は、男と女の
関係が始まったらあとは別れがある
だけだ。これは体験的要素。

問題は、別れがはやい時期におとず
れるか、あるいは少しでも先にひき
のばせるかだけ。

恋の初期があれだけ甘美でめくるめ
くような興奮で満たされるのは、つ
ねにどこかに、いつかこの恋で終わ
ることを恐れる気持ちがかならずか
くされているからである。

あなたは、『空虚』と『傷心』と、ど
ちらをとる?」

「『傷心』を」

なんにもない人生なんていやだとい
うわけだ。たとえ傷ついても、なに
かあったほうがいい。

「私は『空虚』をとる。傷つくのは
いやだ」

そのころの私は思ったものだ。『空虚』
なんて死と同じだと。傷ついたって
いいじゃないか。

あのときこうしておけばよかったのに、
と、取り返しもつかないようなあとに
なって後悔するほどむなしいことは
ない。

やりたいたいことをやって後悔する
なら後悔のしがいもあるが、やらな
かったことを後悔するのは、なんとも
つらいだろう、と。

そんなわけで、私が歩んできたのは、
ずっと例外なく『傷心』の人生だった。

で、あらためて、いま、私は自分に
問うてみるのだ。『傷心』か『空虚』
かと。

驚いたことに、私は、「なにがなんでも
『傷心』に決まっている」と飛びつけ
ないのだ。

若いときの傷のなおりははやい。傷口
はすぐにふさがり、傷あとさえ残らない。
肉体的にもそうだ。ヤケドなどしても、
二~三日で消えてしまう。

ところが年をかさねるにつれて、傷は
なおりにくくなり、傷あともなかなか
消えない。へたをすると、傷口は永久
に残ってしまうこともある。

しかし冷静になって考えると、男と女
の関係、いいではないか。別れもまた
いいではないか。大事なのはどのよう
な別れをするか、その別れの質なのだ
から。

せめて、いい別れ方のできる恋愛であ
るよう、と心をくだくべきであって、
ティーンエイジャーのように尻込みす
るときではない。

いまは秋である。庭を吹く風に透明度
がくわわり、ひんやりと冷たい。
それにしても妙にさびしいものだ。

人間の出会いの最初の段階で、もう
別れ方のあれこれを考えているなんて。

「草紅葉」  ーくさもみじー

2019年10月11日 09時00分20秒 | owarai
別れ際にきみが見せた表情は
ぼくの知る どんな顔とも違って
いた
淡々とした哀しみが 金色の光を
放つ
それは 去ってゆくものだけが
持てる輝き

『野に広がる紅葉』
秋も深まると、山の木々の紅葉が
野や里に下りてきます。
同じころ、田の土手や畦などの
草もいっせいに色づいて、

靴で踏むのが惜しいほど美しく
なります。それが「草紅葉」。
「草の錦」ともいわれます。

でも、その美しさもほんのひと
ときで、霜が降りるととたんに
枯れてみすぼらしくなってしまう
のが草紅葉のはかなさでしょう。

紅葉する草の中でもほうき草は
変わっていて、夏は緑色の細い
茎が秋になると濃いピンクにな
ります。

名前のとおり、茎は乾かして
ホウキにし、実は「とんぶり」
といって、畑のキャビアといわれ
るほどおいしいものです。

『汲む』

2019年10月11日 06時07分21秒 | owarai
大人になるというのは
すれっからしになることだと
思い込んでいた少女がいました。

立居振舞いの美しい
発音の正確な
素敵な女のひとと会いました

そのひとは少女の背のびを
見すかしたように
なにげない話に言いました

初々しさが大切なの
人に対しても世の中に対しても
人を人とも思わなくなったとき

堕落が始まる 落ちてゆくのを
隠そうとしても 隠せなくなった
人を何人も見ました

少女はどきんとし
そして深く悟りました
大人になってもどきどきしたって
いいんだな

ぎこちない挨拶 醜く赤くなる
失語症 なめらかでないしぐさ

子供の悪態にさえ傷ついてしまう
頼りない生牡蠣のような感受性
それを鍛える必要は少しもなかった
のだな

年老いても咲きたての薔薇 柔らかく
外にむかってひらかれるのこそ難しい
あらゆる仕事
すべてのいい仕事の核には
震える弱いアンテナが隠されて
いる きっと・・・・

少女はかつてのあの人と同じくらい
の年になりました

たちかえり
今もときどきその意味を
ひっそり汲むことがあるのです