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「ハムレット」 舞台内容 一幕五場

2009-09-10 14:50:18 | 「ハムレット」

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 亡霊とハムレットは、城壁の下の空き地へとやって来る。
ホレイシオとマーセラスはおらず、亡霊の言葉は、ハムレットのみが聞くことになる。


 そして亡霊が、語りだしたこととは
 'If thou didst ever thy dear father lover,――
   Revenge his foul and most unnaturl murder.'
 (もし、お前が亡き父を愛していたならば――
  忌まわしい、最も人倫に反する殺人の復讐をせよ)


 亡霊の言葉を聞いたハムレットは、驚愕する。確かに父の死には不当なことがあったかもしれないと薄々感じてはいたが、よもや殺人であったとは思いにもしなかったのだ。

 母の不実な結婚を考えただけで自殺まで考えるハムレットにとって、これはさらなる大いなる衝撃を受けた。
 しかも、父を殺したのが叔父であり、その叔父は母と結婚し、民衆の支持を得て王位に就いているのである。
 まさに驚天動地。繊細なハムレットにとって、彼のアイデンティティが、ゲシュタルト崩壊してしまったかもしれないくらいに。
 この後の展開で、ハムレットは狂気を装うことになるが、実は、この時、本当に一部、壊れてしまったかも……




 この後、亡霊は、殺害された時の委細を語る。
庭で眠っている間に、耳の孔に毒液を流し込まれ、命を奪われる。殺害の証拠は何一つ現れず、死因は毒蛇に咬まれたことになった。そして、そのことを誰も疑わなかったというものだった。


 さらに亡霊は続けて語る。
 'If thou hast nature in thee. bear in not,
   Let not the royal bed of Denmark be
   A couch for luxury and damned incest.
   Taint not thy mind nor let thy soul contrive
   And to those thorns that in her bosom lodge
   To prick and sting her. Fare thee well at once:
   The glow-worm shows the matin to be near
   And gins to pale his uneffectual fine.
   Adieu, adieu, adieu. Remember me.
 (お前に父を思う気持ちがあるのなら、黙っていてはならぬ。
  デンマーク王家の寝室を、
  情欲と忌まわしい近親相姦の温床にしてはならぬ。
  しかし、どのように事を運ぶにしても、
  己の心を穢してはならぬ。そしてまた、
  母のことは放っておけ。天に任せるのだ。
  自らの胸のうちに刺さった棘に苦しませるがよい。
  もう行かなければならぬ時間だ。
  蛍が、その弱い光をさらに弱くし始めた。
  朝がそこまで来ている。
  さらば、さらば、さらばだ。父を忘れるなよ)


 なんと、まあ! 無理難題を押し付けていったことか!!
ハムレットが行なう復讐は、ただの復讐ではダメなのだ。「心を穢してはいけない」といっている。
彼自身が、断固たる決意を持って遂行し、且つ、誰が見ても正当な行為であると思われなければならない。
 そして、復讐をするに当たり、「母親には手出しせずに、国王の受けるであろう罰に巻き込まれるようなことがあってはならない」といっている。

 しかし、復讐するということは、相手を殺すことなので、少なからず「心を穢す」ことになってしまう。
ハムレットは高潔な人物なので、例え、如何なる理由があろうとも、殺人をしておいて心を穢さすにおけるであろうか? 
 これこそが「ハムレット」が、現代人に突きつけている最大のテーマではないだろうか?




 亡霊が消え去った後、ハムレットの後を追ってきたホレイシオとマーセラスが登場する。
ここでハムレットは、取り敢えず、復讐のための行動に移るのだった。


 先ず、亡霊が語ったことが真実であるのかを確かめることであり、そのために狂気を装って時を稼ごうと考えたのである。
 そして、そのことを、ここいる二人には秘密にしておくことを誓わせる。


 一同が誓うと、ハムレットはさらに念を押し、有名な台詞を述べる。
 'The time is out of joint, O cursed spite
   That ever I was born to set it right !'
 (この世のたが<関節>が外れている、ああ、何という呪われた苦悩の種だろう
  それを正す<治す>ためにこの世に生を受けたとは!)


 ハムレットは、世の中を正すという名分と、神が禁じている殺人とを、どのように両立させるのか、それが深刻なジレンマであり、彼が、どの道を選ぶのか、それが問題なのである。




 ここで一幕は終わる。



「ハムレット」 舞台内容 一幕四場

2009-09-09 20:58:25 | 「ハムレット」

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 夜となり、酷く寒い中を、ハムレット、ホレイシオ、マーセラスの三人は、城の胸壁の上の歩廊で亡霊が現れるのを待っている。


 城内では国王たちが派手な酒宴を開き、徹夜で大騒ぎしている。
そんな騒ぎ声が、彼ら三人に届いてくるのだった。


 ここでハムレットは、デンマーク国民が大酒呑みでというあるという悪評に触れ、その習慣を非難し、禁止すべきだあると、彼自身の考え方を披見する。
 一見するとこの場面は、ストーリー上、必要がないように見える。
しかし、作者シェークスピアは、何らかの意図を持って挿入したに違い。それを推測してみると二つのことが考えられる。
 一つ目は、観客に対し、ハムレットの性格について重要な知識を与えるため。
 二つ目は、劇の理解を助けるためのヒントを与えるため。
ではないだろうか?

 一つ目は、ハムレットの性格が客観的なものではなく、主観的なもので、彼は物の表面を掴むことだけでは満足できず、その奥の奥まで求めるタイプであるということ。
 二つ目は、主人公ハムレットの性格の一部のみで、彼を理解せずに、劇の全体から、ハムレットという人間を理解して欲しい
ということではないだろうか?




 ハムレットが、自分の見識を述べている最中に亡霊が現れる。
 'Be thou a spirit of health, or goblin demned,
   Bring with thee airs from heaven, or blast from hell,
   Be thy intents wicked or charitable,
   Thou com'st in such a quesiionable shape,
   That I will speak to thee.'
 (お前が幸福の亡霊であっても、地獄に堕ちた悪鬼であっても、
  天からの空気を、または、地獄からの毒気を持って来ても、
  お前の目的が邪悪であっても、慈悲深くても、
  お前は、話しかけてもよさそうな格好をして現れてから、
  私は話しかけるのだ)


 ハムレットの二者択一のような問い掛けが続き、それに対して亡霊は無言でハムレットを手招きする。


 そして、ハムレットは、心配するホレイシオとマーセラスの静止を振り切って亡霊の後を追って行くのである。



「ハムレット」 舞台内容 一幕三場

2009-09-09 10:47:49 | 「ハムレット」

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 場所は、宮内大臣ボローニアス大臣家の一室。
ここは夜になるまでの繋ぎの場面で、いわば間奏に当たる。


 パリへ出発するレアーティーズが、妹のオフィーリアに別れを告げに来る。
彼は、オフィーリアとハムレット王子との間柄について、自分の認識に基づき意見を述べる。


 ハムレットの求愛は真面目なものではなく、王子というものは大臣の娘などとは結婚しないという、彼なりの理論を展開し、オフィーリアに対し行為を慎重にするようアドバイスする。
 自分の意見を持たない、ボローニアス家の綺麗なお飾り人形のようなオフィーリアは、一も二もなく兄に同意してしまう。
 'I shall the effect of this good lesson keep,
   As watchman to my heart.'
 (ただいまの良いご教訓の意味を、
  心の番人として大事にします)


 シャークスピアの悲劇のヒロインの中で、オフィーリアほど頼りない女性はいない。彼女の精神年齢は低く、全く自立していないのだ。




 そんなやり取りの中、父のボローニアスが登場する。
  彼はこの劇の喜劇的な人物で、精神の高潔さが欠けている、というよりも全くないのだ。
ボローニアスの口から出る言葉は、古今の格言や諺が散りばめられていて、それ自体、立派なのだが、彼の行動がそれに似合っていないどころか、正反対の行動するので、そこが滑稽に映る。
観客の失笑を買う、冷めた笑いといったところ。
 例えば、優に一ページ以上のおしゃぺり(台詞)するのだが、その話の中で「考えたことを口に出すな」などという言葉がついて出てしまう。




 ボローニアスは、パリに旅立つ息子に対し、的外れなアドバイスを送る。
「おまえ自身に忠実でありなさい。そうすれば、例えば夜が昼に続くように、おまえが誰に対しても事実ではありえないということにきっとなる」と、
 このこと自体、何を言っているのかよく分からないのだが、最悪なのは息子のレアーティーズの性格を全く心得ていない。知らなさ過ぎなのである。
 瞬間湯沸器みたいな血の気の多いレアーティーズに「自身に忠実でありなさい」などといえば、どうなるか、全く理解できていない。




 レアーティーズは、いざ出かけようとする別れ際に妹オフィーリアに対し、先程のアドバイスをよくよく憶えておくようにと念を押す。
 それに対し、オフィーリアは、
 ‘'Tis in my memory locked, and you yourself shall keep the key of it.'
 (そのことは私の記憶の中にしまって鍵をおろしましたから、お兄様は、その鍵を持っていらして)


 立派な言葉なのだが、その直後、父のボローニアスが「今、レアーティーズはお前に何と言っていたのか」と聞くと、
 'So please you, something touching the Lord Hamlet.'
 (ハムレット様のことをおっしゃていましたのよ)


と、自らおろした錠前を開けて、兄との秘密を暴露するというお間抜け振りを披露してしまう。
 つまり、何も考えていない、だからお人形さんといわれてしまう。




 ボローニアスは、ハムレットに対して、息子のレアーティーズと同意見で、純粋な愛情の深さを理解することが出来ない。
彼は、ハムレットの言葉を、女たらしの決まり文句にしか見れない。
そして、最悪なのは、オフィーリアも同類という点で、人形でなくて自立した一個の人間であれば、恋人の真情を理解できたのではないだろうか。少なくとも、何か、感じ取ったであろう、と思う。


 'I do not know, my load, what I should think.'
 (どう考えていいのか分かりませんわ。お父様」


 しかし、彼女は、こんな具合なのだ。全く頼りにならない。
そして、父から「これ以上、ハムレットと話してはならない」と命ぜられると、「お言いつけ通りにいたします。お父様」と答える。
 もっとも親しいはずの母と恋人が、こんな有り様では、ハムレットが絶望するのは当然なのかもしれない。





「ハムレット」 舞台内容 一幕二場 (2)

2009-09-08 19:58:08 | 「ハムレット」

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 さらにハムレットは、
 'to post with such dexterity to incestuous bed'
 (あのように大急ぎで不義の寝床へ急いだ)


といっている。
 'incest'はは近親相姦という意味であり、当時の西洋(キリスト教圏)では、結婚した人の双方の兄弟(姉妹)は皆真の兄弟と見なしていた。


よって兄は死んで、弟が、兄嫁と結婚するのは、近親結婚となるのだ。


 ハムレットは、この結婚が近親相姦であり、言葉が悪いが、犬畜生の結婚であると唾棄していたのである。
 'It is not, nor it cannot come to, good;
  But break, my heart; for I must hold my tongue!'
 (これはよくないことだ、よい結果になることなどありえない。
  ああ、張り裂けよ、この胸! わたしは黙っていなくてはならないのだから)


 と、苦しんでいるところにホレイシオたちがやって来る。
ホレイシオたちの話がつじつまが合っていないことを見て取ったハムレットは、亡霊が本物か否かを探るため、彼らに質問する。



ハムレット 「武装しておられたというんだね」
一同    「武装しておられました。殿下」
ハムレット 「その時、顔を見なかったのだね」
ホレイシオ 「見ました、殿下、顔当てを上げておられましたから」
ハムレット 「では、顔をしかめておられたのか」''
ホレイシオ 「怒りというよりは悲しみのお顔でした」
ハムレット 「青ざめていたか、それとも赤かったか」
ホレイシオ 「いや、真っ青」
ハムレット 「君に眼をすえておられたか」
ホレイシオ 「じっと、わき目もふらずに」


とこんな感じだった。



 ハムレットは、自分で亡霊を見ようという意思を表明し、この後、彼の独白で、亡霊の出現は、何か不正が絡んでいるのではないかという考えをほのめかすのだ。


 'My father's spirit in arms! all is not well;
   I doubt some foul play: would the night were come!
   Till then sit still, my soul.  Foul deed will rise,
   Though all the earth o'erwhelm them, to men's eyes.'
 (父の亡霊が武装して? 何かよくないことがある
  不正があるのではないか。夜が来ればいい!
  その時までは静かにしておくれ、わたしの魂よ。不正の行いは
  例え大地全体が押さえつけようとも、必ず人の眼に現れてくるものだ)





「ハムレット」 舞台内容 一幕二場 (1)

2009-09-08 15:24:12 | 「ハムレット」

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 舞台は場内の会議の場である。
場には新国王クローディアスと家来たちが集まっており、中にはハムレット王子もいた。


 国王は彼らに向かって公式の演説をするのである。
これは、彼の口を借りて観客に舞台状況を説明させているのだ。


・ 現国王クローディアスは、先王(老ハムレット)の弟であること
・ クローディアスは、若い王子ハムレットを押しのけて、自ら王位に就いたこと
・ 即位後、先王の妃ガードルード(ハムレットの母)と結婚し、そのことについて貴族たちの同意を得たこと
この内容は、先王の死が非業のでなかったかという噂が一つも流れていなかったという証拠になっている。


 次にクローディアス新王は、ノルウェイ国王に対してノルウェイ国王の甥であるフォーティンブラスのデンマークに対する軍事行動を禁止させることを要求する使者を送る。


 そしてレアーティーズを紹介する。彼は宮内大臣ボローニアスの息子であり、オフィーリアの兄である。彼の望みは、父の反対を押し切ってパリに帰ることで、国王はそれを許可した。


 さらにクローディアス新王は、ハムレットの方を向く。
ハムレットの思い詰めた暗い顔と、何か咎めるような素振りは、国王と王妃の神経を逆立てる。
彼らは、素知らぬ顔をして、ハムレットに話しかけ、機嫌を取ったり、他愛のない話などして、彼の気分を転換させようとする。


 しかし、ハムレットは毒舌で、国王の言葉「甥であり、息子であるハムレット」に対し、冷たい、皮肉な言葉を返すのだった。



 'A little more than kin, and less than kind'
(身寄りというよりはちょっとばかり濃い間柄だが、自然の情愛は薄い)


 国王が、父親が子に先立って亡くなることは普通のことだ、などと決まり切ったことを言い聞かせ、「お前を私の子として扱おう、その証拠に、お前がウィデンベルグの大学に帰らないように頼むのだ」
と言うと、義務感の強いハムレットは、国に留まることに同意してしまう。
 その言葉を聞いた国王や妃、家来たちは、喜びの色をあらわしながら退場し、ハムレットが独り残された。


 ここで一度、ハムレットの境遇を整理してみよう。
 大学に在学中だった彼は、父の突然の死のため呼び戻された。
父親の葬儀後、一ヶ月余りで母親が叔父と再婚した。その叔父が国民の賛成を得て王位に就く。
ハムレットは、あらゆる思いやりを持って扱われ、王子にふさわしい待遇を受けるのだが、そんな外観とは違い、彼の内面(気持ち)は深く沈んでいたのだ。






ハムレットは独りになると、自殺について考えはじめる。

その原因は母親の急ぎすぎた結婚であった。



  O that this too sullied flesh would melt,
  Thaw and resolve itself into a dew,
  Or that the Everlasting had not fix'd
  His cannon 'gainst self-slaugther. O God! God!
  How weary, stale, flat, and unprofitable
  Seem to me all the uses of this world!
 (ああ、このあまりにも穢れた肉体が溶けて、
  流れて、露と消えてくれたらよかったのに。
  あるいは、神がその掟によって
  自殺を禁じてさえいなければ。ああ、神よ!神よ!
  この世のあらゆる事柄が、なんと気だるく、陳腐で、退屈で、
  何の役にも立たないように思われることか)


 太陽神のように立派だった父に比べたら、その弟クローディアスは、好色で半分けだものような男ではないか。父もあんなにも母を愛し、母も父が亡くなったときは、あんなにもすがりついて悲しんだのに、ふた月とかからず、あんな男と結婚してしまった。と、


 ここでかの有名な台詞
  Frailty, thy name is woman!
 (弱きもの、お前の名は女!)


となるのだ。



ここの"Frailty”は、「体力がなくてか弱い」という意味でなく、「性的な誘惑に対して弱い」という意味。(一応、断わっておきますが、これはヴィクターの考えではなく、あくまでシェークスピアの、言い換えれば、当時のイギリス社会の一般的な通念です)




 母ガードルードが、父の死後まもなく、その弟と再婚し、新しい夫に寄り添って幸せそうにしている姿に、ハムレットは「女」見てしまった。
 そして、そのことをハムレットはどうしても受け入れることが出来なかったのだ。


 母の再婚は、ある種の裏切り行為であって、さらには母に見た「弱さ」を女性全体に広げてしまう。
よって恋人のオフィーリアに辛く当たってしまう。(どう見ても八つ当たりなのです)



しかし、ハムレットも子供ではないのだから、母親に対するこのような反応は、いささか幼すぎるし、潔癖すぎる。
 どう見ても、世間知らずのマザコンお坊ちゃまだ。この手の男は、いくら王子様といってもボーイフレンドに持たない方が賢明だと思うのだが、ヴィクターは男なので、よく分からないが、反って、こういうタイプに母性本能を揺さぶられる、という女性がいるかもしれない・・・って余計なお世話か?