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「闇の底のシルキー」

2010-10-09 15:28:13 | デイビィッド・アーモンド

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 『闇の底のシルキー』、デイヴィッド アーモンド著、山田 順子訳、東京創元社


<あらすじ>
 廃坑の町ストーニーゲイト。13歳の少年キットは、祖母を亡くし意気消沈する祖父と一緒に暮らすため一家で、この町に越してきた。


 むかし炭鉱夫だった祖父は、キットに暗闇の炭鉱の恐怖や炭鉱事故、事故で亡くなった少年坑夫たち、シルキーと呼ばれる闇の精霊の話をしてくれた。


 まもなく、風変わりな少年・アスキューと知り合い、彼がおこなう臨死体験をする<死>のゲームに加わることになるが、それがきっかけで、キットは少年坑夫たちの亡霊や、シルキーが見えるようになってしまった。


 アスキューは、ゲームのことが学校の教師に知られてしまい、退校処分になってしまう。さらにアル中の父親の暴力に耐えかねて失踪。
 しかし突然、キットの前に現れ、キットを廃坑の隠れ家の洞窟へ連れ出した。キットは、どうにかしてアスキューを連れ戻そうとするが…… 。




<感想>
 デイヴィッド・アーモンドの二作目にあたる作品。ファンタジーでありながら物静かで簡潔な描写は物語としてのリアリティーをもたらしてくれます。


 陰惨さと暗鬱さをもった作品テーマでありながら、アーモンドの文章によって詩的で静謐な感じに仕上がっていることは、さすがといったところです。


 彼の作品の共通点は優しさと慈しみのあふれていること。ザ・サンデー・タイムズをはじめ、各誌で賞賛されていて、大人の鑑賞も十二分に堪えうる作品であると評されています。


 社会性のあるテーマの盛り込み方、物語の中心に至る手法としてミステリー、ホラー、サスペンスの要素をふんだんに取り入れていること。
 短い章に分けられていて読みやすさに富んでいるといったエンターテイメント性が高い作品であるということです。
 そして主人公に加え、それを支える登場人物もとても魅力的に描かれている、これがアーモンド作品の特徴です。


 13歳の多感な少年少女期における危うさ、もろさ、繊細さ等を表現することにかけて、彼は天下一品の筆をもつ作家ではないかと思います。



Dunwich

2010-10-04 11:50:51 | 闇住まう場所

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 「堕落と頽廃に包まれた、滅びへと向う古い村。Salem(セイレム)から持ち込まれた恐怖の残滓が、おぞましく凄惨な怪事件を数多く引き起こした。」


 マサチューセッツ州の北部中央、いくつものドーム状の丘を蛇行するミスカトニック河を西へ遡っていくと、環状列石のあるラウンド山の急斜面と、河に挟まれた荒涼たる土地に出る。ここがDunwich(ダンウィッチ)だ。


 朽ちかけた腰折屋根の家屋が軒を連ねた寒村であり、ネイティブ・アメリカンの邪悪な儀式や秘密集会が18世紀頃まで頻繁に行なわれていた。
 荒々しくも狂おしい祈りに応えて、地の底から響く大音響が山々を震わせていたという。


 ウェイトリー家やビショップ家など、1692年の魔女裁判の折、Salem(セイレム)から逃れてきた一部の名家を除き、付近一帯の住民の多くは、近親結婚を繰り返したことによる堕落と頽廃のきわみにある。


 時として尋常ならざる事件が発生しては、「アイルズベリイ・トランスクリプト」などの地元新聞の紙面を賑わせた。
 わけても、同じエセックス郡内のInnsmouth(インスマス)で起きた政府機関による手入れがあった1928年は、凄惨な事件が多発した年として皆に記憶されている。


 ダン・ハロップが引き起こした連続殺人事件。肉体の成長が異常に早く、近隣のみならずArkham(アーカム)までも、その名が知られていた神秘学者ウェルバー・ウェイトリーの事件(ミスカトニック大学附属図書館に侵入を試みて番犬にかみ殺された)。
 そして、姿の見えない巨大な怪物が夜な夜な暴れまわり、家々を踏み潰して住民たちを震え上がらせた事件など、いくつもの奇怪な事件がDunwich(ダンウィッチ)周辺で発生した。


 その後も、魔法使い、治療師などと呼ばれて住民から恐れられていたセプティマス・ビショップの失踪事件など、奇怪な事件が続いている。


 これら同時多発的な怪事件の間には、密接に何らかの関わり合いが存在しているらしい。