終章:That night was the beginning of Ramen Wars Ⅰ《その夜からラーメン戦争1は始まった》
「パンさえあれば、たいていの悲しみは耐えられる」--ミゲル・デ・セルバンテス・サアベドラ
御坂 美琴と木山 春生が、それぞれの自室で思いにふけっていた頃、とある高校のオンボロ学生寮の一室――
「はあ~~ぁ。不幸だ…… 」
上条 当麻は冷蔵の中をのぞき込みながら、ため息を吐いた。
「はあ~~ 卵を全滅(皆殺し)させたのは痛かった…… 痛すぎるっ!」
気合を入れて、毎月恒例のスーパーの特売の買い出しにいったのだが、その帰り道で転倒し、卵1パックすべてを割ってしまっていた。
「はあ~ へんなお姉さん(脱ぎ女)に出くわすわ。御坂 美琴(ビリビリ)に追いかけ回されるわ…… なんて不幸なんだ~」
きょう一日の、自分の不幸にため息を吐く当麻だった。
さらに言えば、月に一度の生活費(現金)支給まで数日あるだが、その日まで何とかやり繰りしなければならないビンボー学生の哀しいサガを呪った。
「しかっ~し、これぐらいで上条 当麻様はめげません! こんなこともあろうかと秘密兵器を常備している」
当麻の秘密兵器とは、いざという時のために備蓄(ストック)しておいたインスタントラーメンだった。
「これで数日を耐えしのぶしかない!」
グッとこぶしを握り締め、固く決意したその瞳は、どこか追い詰められた獣にも似た悲愴感がただよっていた。
だが、彼は知らない。この数日後、さらなる不幸が襲ってくることに……
一方、イギリスのロンドン聖ジョージ大聖堂内の一室―― いま二人の人物が対峙していた。
ひとりは、身長2mの肩まで届く赤い長髪に耳に大量のピアスを着け、右目の下にバーコードの刺青を入れ、くわえタバコをしている。
もうひとりは、とても長い金髪の若い女性で、修道服を身に着けているようなのだが、生地の色がピンクだった。
ひとりは、身長2mの肩まで届く赤い長髪に耳に大量のピアスを着け、右目の下にバーコードの刺青を入れ、くわえタバコをしている。
もうひとりは、とても長い金髪の若い女性で、修道服を身に着けているようなのだが、生地の色がピンクだった。
「ステイル。聖堂内は禁煙なのよ、よろしかのよし」
「ちっ! それで『最大主教(アークビショップ)』。用件とは?」
ステイル=マグヌスは、くわえていたタバコを床に投げ捨てブーツで踏みつけた。
「『禁書目録(インデックス)』の行方が判明したあるのよ」
「はっ! つまり追跡しろと」
そのままステイルは、『最大主教(アークビショップ)』ことローラ=スチュアートに背を向けて歩き出そうとした。
「お待ちなさいあることよ。ステイル…… 場所は日本、学園都市あるのよ」
「クソー! 科学サイド(あちら)に囚われたと!?」
歩みを止めて、振り返るステイル。
「詳しいことは不明なのよ。だから潜入して、『禁書目録(インデックス)』の確保なのよ」
「しかし、僕は日本へ行ったことすらない。まして科学サイド(あちら)となると」
「だから、いちおうガイドをつけるからよし。入ってきてちょうだい?」
ローラ=スチュアートの声に応じて、Tシャツにジーンズの長身の美女が扉を開けて入ってきた。
「神裂 火織! きみがガイド? 『最大主教(アークビショップ)』、世界でも20人ほどしかいない聖人を投入されるのですか?」
「ええ、それほどのことなのよ、よろしかのよし。最善の注意を払ってね。もし『禁書目録(インデックス)』が科学サイド(あちら)側に落ちそうなときは…… 覚悟することよ」
―― ”調理”と”化学”が交差するとき、新たな物語が始まる ―― (完)