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「マクベス」 舞台内容 <目次>

2009-12-31 09:25:28 | 「マクベス」
・舞台:マクベス


・場所:スコットランド、イングランド


・人物:マクベス    ・・・スコットランドの武将、のちに国王
    マクベス夫人  ・・・マクベスの妻
    ダンカン    ・・・スコットランド国王
    マルコム    ・・・ダンカン国王の息子
    ドナルベイン  ・・・同上
    バンクォー   ・・・スコットランドの武将
    フリーランス  ・・・バンクォーの息子
    マクダフ    ・・・スコットランド貴族
    レノックス   ・・・スコットランド貴族
    ロス      ・・・スコットランド貴族
    メンティース  ・・・スコットランド貴族
    シュアード   ・・・イングランドの武将、ノーサンランド伯
    小シェアード  ・・・シェアードの息子
    シートン    ・・・マクベスの鎧もち
    魔女たち
    ヘカティー   ・・・魔女の女王
    マクダフ夫人  ・・・マクダフの妻
    少年      ・・・マクダフの息子


・舞台:あらすじ













「マクベス」 舞台内容 五幕六場~九場

2009-12-29 21:44:43 | 「マクベス」

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 ダンシネイン城前で、いよいよ両軍が激突する。
城門の前ではマルコム、シェアード、マクダフら兵士たちが枝をかざして登場する。
 つまり「森が移動することがない限り大丈夫である」が覆ってしまった。




 魔女たちが予言した託宣は、すでにあと一つで全て実現してしまう。
 すなわち「女から生まれた者にはマクベスは倒せない」のみである。




 マクベスが鎧に身を固めて城門から登場する。そこにシェアードの息子である小シェアードが立ちはだかり、剣を激しく交えるのだった。


 しかし、「女から生まれた者にはマクベスは倒せない」不死身なので、小シェアードでは刃が立たず、斬り倒されてしまった。
 'Why should I play the Roman fool, and die on mine own aword ?'
 (誰がローマの馬鹿者どもの真似をして、己の剣で死ぬものか?)


 マクベスは、ジュリアス・シーザーを倒したブルタースのように自害にしない。


 そこでマクダフが登場する。不死身のマクベスであったが、マクダフは自然分娩ではなく、月足らずで帝王切開で生まれた者であり、つまり「女から生まれた者」ではなかった。
 ただ、これは少々こじつけになっているが、シェークスピアの時代では、殆ど自然分娩が普通で、帝王切開などは稀で、しかも月足らずとあれば、そのまま生存して成長することは難しかった。
よって、このような子供は不思議な力を持っていたと信じられていたのだ。




 終にマクベスは最後の望みも絶たれてしまうのだが、彼は最後の最後まで運命に刃向かおうと、マクダフとの戦いに臨んでいった。
 'Though Birnum wood be come to Duncinane,
   And thou opposed, being of no woman born,
   Yet I will try the last. Before my body
   I throw my warlike shield. Lay on, Macduff,
   And damn'd be him that first cries 'Hold, enough !'
 (たとえバーナムの森がダンシネインの城へ迫ろうとも、
 女から生まれぬ貴様が立ちはだかろうとも、
 これが最後の俺の運試しだ。さあ、このとおり、
 武勲に輝く盾も投げ捨てる、打ってこい、マクダフ、
 途中で「待て、降参だ!」と叫ぶ奴は地獄行きだ!)


 そしてマクベスは、マクダフに討ち取られた。魔女という超自然的な存在によって翻弄された人生になってしまった。
 まさに「消えよ、消えよ、束の間(短い)の蝋燭(命)! 人生は歩く影法師、哀れな役者だ、出番の時だけ舞台の上で、見得を切ったり、 喚き散らしたりしているが、芝居が終われば、それまでだ。人の一生なんて阿呆の語る物語。やたら激しく騒がしいが、何ら意味などありはせぬ」なのだ。

 ある意味、目に見えない世界の傲慢な力との闘争であったともいえる。最後は人間の勝利にはならなかった、もちろん彼は悪人であり、当然の報いかもしれないが、その善悪を超えて、死に際して彼の姿勢は偉大であったと思う。




 マクベスのいない軍勢は力を失い、マルコムら率いる軍が勝利を収め、ダンシネイン城に入城し、マルコムが新たなスコットランド王になるのだった。


 全ての幕が閉じた(完)



「マクベス」 舞台内容 五幕五場

2009-12-26 16:28:17 | 「マクベス」

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 ダンシネイン城内の中庭、太鼓や軍旗とともにマクベスと冑持ちのシートンが登場する。
 マクベスは自身に取巻く不運の中にあって、彼の心は挫かれるというより、むしろ高揚していった。
 赤く燃え上がるというよりも、冷たく醒めた鋭い刃物といった感じなのだ。


 'I have almost forgot the taste of fears:
   The time has been, my senses would have cooled
   To hear a night-shriek; and my fell of hair
   Would at a dismal treatise rouse, and stir
   As life were in't; I have supped full with horrors;
   Direness, familiar to my slaughterous thoughts,
   Cannot once strat me.'
 (俺は恐怖というものを殆ど忘れてしまった、
 以前は、闇夜に響く叫びを声を聞いて背筋を冷やし、
 恐ろしい話を聞けば、髪が生き物のように逆立った、
 しかし、ありとあらゆる恐ろしいことが、
 この身に沁みこんで、今や何が起ころうとも、
 人殺しの俺には日常茶飯事で、
 もうぎくりともしない)


 マクベスが以上の独白をしている間、シートンは城内で響く女たちの泣き声を聞き、様子を見に行った。そして戻ってきた彼は、マクベス夫人が亡くなったことをマクベスに告げるのだった。
               'Out, out, brief candle !
   Life's but a walking shadow, a poor player
   That struts and frets his hour upon the stage
   And then is heard no more: it is a tale
   Told by an idiot, full of sound and fury
   Signifying nothing.'
     (消えよ、消えよ、束の間(短い)の蝋燭(命)!
 人生は歩く影法師、哀れな役者だ、
 出番の時だけ舞台の上で、見得を切ったり、
 喚き散らしたりしているが、芝居が終われば、
 それまでだ。人の一生なんて阿呆の語る物語。
 やたら激しく騒がしいが、何ら意味などありはせぬ)


 『マクベス』の中で一番有名な台詞だ。短いけれど、言葉のリズムと意味が相まって強い印象を与えている。人生の儚さを、これほど見事に語った言葉はそうそう見当たらない。

 ちなみに「brief candle(短い蝋燭)」はオールダス・ハックスの小説の題名に使われている。

 直前に「恐怖すら感じなくなってしまった」と語っていたマクベスは、最愛だった妻が亡くなったという知らせに「She should have died hereafter」というだけである。

 この台詞は2通りの意味に取れて、一つは「何も今、死ぬことはなかったのっだ」で、もう一つは「いつかは死ななければならなかったのだ」である。日本語に訳すときは、どちらかの意味を取らなければならないが、原文では両方の意味が同時に響いている。

 つまり「どうせ死ぬにしても、もっと落ち着いてその死を受け止められる時に死んで欲しかった」という気持ちと、「いつかは死ぬ定めだったのだ。仕方ないのではないか」という気持ちが、マクベスの心中で同時に存在しているということになるのだ。




 そこに使者が登場し、バーナム森が動き出したと告げに来たのだった。
 魔女たちの託宣が現実になり始めた。マルコムのイングランド兵が手に木の枝を持って進軍してきたのだ。


 'Great Birnum wood to hight Duncinane hill
   Does come against him.'
 (恐れるな、マクベス。
 大バーナムの森が、ダンシネインの丘へやって来るまでは)


 このことが、いよいよマクベスの決死の覚悟を固めさせる。


               'Blow wind ! come wrack !
   At least we'll die with harness on our back.'
      (風よ、吹け! 破滅よ、来い!
 せめて鎧を着て死んでやるぞ)


 それでもマクベスは最後まで戦い続ける。何のために? 人間は自分に与えられた道を最後まで走り続けなければならないのか、たとえそれが破滅に続いていると分かっていても。

 絶望的な状況で懸命に生きようとする姿は、多くの人に感動を与える。それは結果ではなく、その過程を大切に感じるからではないかと思う。

 『マクベス』は悲劇であるが故に、最後は悲惨な結果をもたらすが、そこに至るまでの過程において多くの読者に考えるべき内容がたくさん盛り込まれているのではないだろうか。

 



「マクベス」 舞台内容 五幕二場~四場

2009-12-23 13:05:04 | 「マクベス」

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 ダンシネイン城内、及びその周辺。


 ダンシネイン付近ではメンティースらが暴君マクベスを倒すべく叛乱軍を集結させつつあった。
さらにバーナム周辺ではマルカムらがイングランド軍が進軍しつつある。
 マクベスにとって運命的な危機に直面する。しかし、彼は事態が絶望的な状況になるに従い奮い立つのであった。
 魔女たちが予言が成就することなど有り得ないと信ずるからでもあるが、彼は陰謀術数よりも戦うことの方が性に合っていた。だから、窮地に落ちていようとも生き生きとしてくるのだ。




 一方、レノックスや、アンガスらのスコットランド貴族たちがマクダフに加えられた悪行に対する復讐に燃えており、他方においてマルカムや、シュアードらイングランドの軍勢が、マクベスを倒すために進軍していたのだった。
 'Those he commands move only in command,
   Nothing in love.'
 (奴の率いる軍兵どもは、ただ命令で動くだけで
 心の繋がりなど全くない)


 マクベスに取巻く環境は、最悪だった。味方の人心は離れ、離反者が相次いでいる。打って出ることも出来ずにダンシネインの城に立て篭もるしかない。
 ある意味、これは悲劇ではあるけれども、主人公マクベスの成長の物語といえるかもしれない。
初めは妻に支えてもらわなければ、何も出来なかった彼が、人生の危機に直面するに従い、一人自立していくのだ。悲劇であるので、結果は惨憺たるものであるが、最後は魔女たちが残した予言にさえ完全と立ち向かっていくのだ。





「マクベス」 舞台内容 五幕一場

2009-12-15 11:19:27 | 「マクベス」

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 マクベス夫妻は、フォレスの宮殿から、ダンシネインの城に居住を移していた。マクベス夫人の侍医と侍女が登場し、夫人が病に患っていることが分かる。
 'Since his majesty went into the field, I have seen her rise from her bed,
   throw her nightgown upon her, unlock her closet, take forth paper, hold it,
   write upon it, afterwards seal it, and again return to bed; yet all this
   while in a most fast asleep.'
 (陛下が戦場にお出掛けになって以来、ずっと毎夜のこと、急に寝床から起き出して、
 夜着をお羽織となり、戸棚の鍵をお開けになるのです、そして紙をお出しになって、
 何やらお書きにして、もう一度お目を通され、封をしてようやく寝床にお戻りになるのです。
 しかも、その間ずっと、ぐっすりと眠っておられるのです)


 いわゆる「マクベス夫人症候群(シンドローム)」と呼ばれるもので、罪の意識が潜在的に本人を圧迫して、特に眠っている時など、無意識に行動に現れてしまうという精神錯乱の一種だ。
 夫人の場合、毎晩ベットから起き上がり、手に付いた血の染み(もちろん付いてなどいないのだが)を洗い落とそうと手を擦り合わせてる(手を洗っているつもり)、しかも全て無意識に眠ったまま行っているという夢遊病で、本人はその行為を憶えていない。


 'Fie, my load, fie ! A soldier, and afeard ?'
 (武人だというのに、陛下は、恐がる! それでよいのですか?)


 夫を励まして仕事をさせるかと思えば、自分自身の手に付いた血痕を清めようと空しい努力をする。
 'Here's the smell of the blood still: all the perfumes of Arabia will not sweeten this little hand,'
 (まだ、ここに血の臭いがする、アラビア中の香料を振りかけても、この小さな手に甘い香りを添えることが出来ない)


 また、彼女の心の中ではバンクォーのことが、ダンカンが殺された夜の回想と混ざり合っている。
 'Wash your hands, put on your nightgown; look not so pale:―― I tell you yet again, Banquo's buried; he can not come out of his grave.'
 (手をお洗いになって、寝間着をお召しになって。そんな顔色をなさっていたのではいけません―― 分かっておいででしょうが、バンクォーはすでに墓の中、出てこられるはずがありませんわ)


 彼女は、夫の秘密を分担したことから、自身を過信していた。自分が演じた血生臭い役割の記憶が恐ろしく、それに堪えられなかった。
 彼女が今までじっと耐えてこられたのは、彼女自身の重荷というより夫マクベスを助けるためであったのだ。だからこそ、苦しい緊張の日々であったが、夫を励まし、国王暗殺が露見する結果から彼を守らなければならない間は、その役割を見事に演じることが出来た。

 しかし、殺人が終わり、夫が戦場に出るようになって、巧妙な偽善から、直接的な打撃に舞台が移るようになってからは、彼女の介入の余地はなくなり、犯罪を隠し通してきた極度の緊張から神経が崩れ落ちてしまった。




 彼女の頭には、繰り返し繰り返し、あの殺人の回想がめぐっていた。眠っていても醒めていても、常に頭を休めることがなかったのだ。
 つまり、ここに至って彼女の役割が終わったことを意味する。冷たい言い方ではあるが、マクベスにとってもはや有用ではなくなったということなのだ。




 侍医は、夫人の病は心の病であり、自分にはどうすることも出来ない、原因に心当たりはあるが口の出すことは出来ないと侍女に話し、夫人から目を離さぬようにと告げるのだった。