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Innsmouth

2010-09-29 10:33:24 | 闇住まう場所

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 「Deep Ones(深きものども)」の血を引く者たちに支配される、クトゥルフ崇拝者の住まう地。頽廃と堕落の中で、ほろびゆく港町を覆う邪悪な影。」


 マサチューセッツ州エセックス郡のInnsmouth(インスマス)は、マニューゼット河の河口にある寂れた港町である。
 鉄道が通っておらず、Arkham(アーカム)とニューベリーポート間を結ぶバスだけが、唯一の交通手段を提供している。


 1643年に建設され、独立戦争以前には造船業が盛んだった。19世紀に入ると、中国やインドとの東洋貿易の港として繁栄する。


 Innsmouth(インスマス)が転機を迎えたのは、町の有力な貿易商のひとりで、東インドや太平洋に船を出していたオーベット・マーシュ船長が、「Deep Ones(深きものども)」を崇拝する西インド諸島に位置するとある島の住民に接触したときだった。


 安物のガラス細工などと引き換えに大量の金製品を持ち帰った船長は、マニューゼット河を動力とする金の精錬所を創業し、この地域の軽産業の中心地となった。
 しかし、その繁栄の影で、1840年にはダゴン秘密教団が設立され、Innsmouth(インスマス)沖合いの悪魔の暗礁において、海底都市イハ=ントレイに住まう「Deep Ones(深きものども)」との直接取引きが始まっており、1846年には決定的な事件が起こっている。


 この年のある晩、「Deep Ones(深きものども)」がInnsmouth(インスマス)に大挙して上陸、反対派の住民を虐殺し、マーシュ船長一家と、彼らに従った高級船員たちに連なるウェイト家、ギルマン家、エリオット家、そしてフィリップ家の五名家を頂点とする邪神崇拝の拠点に町が変貌してしまったのであった。


 1927年、ウィリアムズという青年から報告を受けた政府は、町に覆う影について憂慮し、翌年に海軍とFBIの共同作戦による一斉手入れが行なわれた。
 このとき、数百体の「Deep Ones(深きものども)」が殺害されると共に、多くの信者が逮捕され、悪魔の暗礁も潜水艦の魚雷攻撃で破壊された。


 ただ、噂によれば、難を逃れた有力な信者たちが、時期を置いてInnsmouth(インスマス)に舞い戻って、幾度となく教団の復活を試みているらしい。



Miskatonic University

2010-09-28 10:59:27 | 闇住まう場所

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 「マサチューセッツ工科大学に比肩するほどの名門。大学附属図書館には、ある種の研究家たちにとっての聖地となっている。」


 マサチューセッツ州の街、Arkham(アーカム)の中心部にキャンバスを構えるMiskatonic University(ミスカトニック大学)は、マサチューセッツ工科大学やコロンビア大学、シカゴ大学に並ぶアメリカ東岸のアイビーリーグの名門である。


 大学が創立されたのは、1765年。街の名士であるジェレマイア・オーンが莫大な遺産と900冊に及ぶ蔵書を遺して死んだ際、その遺言に従って創立されたミスカトニック・リベラル・カレッジが前身に当たる。


 ボストンに近いという地の利と、潤沢な蔵書から徐々に名の知れた研究者が集まり始め、やがて本格的な研究機関に成長し、南北戦争後になって総合大学に昇格。名前をミスカトニック大学と改めた。


 Arkham(アーカム)のニューイングランド地方の古い伝統を色濃く残す土地柄に恵まれ、民俗学、人類学の分野において注目すべき数多の研究が進んでいる。


 1930年の南極探検、34年の西オーストラリア砂漠探検などを通して地質学、考古学の分野においても多大な成果を挙げている。


 地元で有名な「魔女に家」の遺物が運び込まれている博物館など、大学の数多ある貴重な知的財産の中でもとりわけ注目すべきは、附属図書館の存在といえる。


 同図書館は、1878年に地元産の御影石をふんだんに用いたゴシック様式の三階建ての堂々たる建物に改装され、現在は40万冊以上の貴重な文献・資料を収蔵する施設である。


 中でも、世界に5冊しか現存していないと言われているラテン語版「Necronomicon(ネクロノミコン)」を筆頭に数々の魔道書を有している。
 その種の分野を専門とする研究者にとって垂涎の的であり、蔵書を持ち出そうとする不埒な輩が後を絶たないため、「Necronomicon(ネクロノミコン)」を含む一部の書物について、自由に閲覧することが許されない特別室に収められている。



Arkham

2010-09-27 11:30:04 | 闇住まう場所

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 「マサチューセッツ州の伝統を色濃く残し、古い幽霊譚や魔女伝説が今なお息づく街」


 Arkham(アーカム)は、マサチューセッツ州エセックス郡に位置する古い地方都市だ。現在、アイビーリーグの名門、ミスカトニック大学のベットタウンとして主に知られている。


 街の中央を東西に流れるミスカトニック河の北側にボストン=マサチューセッツ鉄道が走り、ボストンに2時間足らずで行くことができる。


 この街の礎を築いたのは、改革派教会の押し付けがましさを嫌い、信仰の自由を求めてボストンやセイレムから17世紀後半に移住してきた人々で、1692年セイレムで魔女裁判の騒動が発生した際に逃亡者やその家族を向い入れ、屋根裏部屋などに匿ったこともある。


 街の中には、セイレムと共通した地名が幾つか存在しており、彼の地から逃れてきた魔女たちが、ミスカトニック河の中洲の島で饗宴を開いていたという噂がささやかれている。


 18世紀には、西インド交易の拠点のひとつとして発展し、19世紀に入ると、工業へと主要産業を移し、マサチューセッツ州の有数な繊維工業地として栄えていった。


 近隣のインスマスやキングスポートなどの街に比べると、古い歴史があるところではないが、密集する駒形切妻屋根の家、ジョージ風の欄干といった数世紀前の街並みを、「時の止まった街」という言葉で形容されており、そんな雰囲気が、老人たちが語り継いできた魔女や幽霊にまつわる数々の物語共々、変化のない街として現在に至っている。


 そのためニューイングランド地方の歴史、風俗を研究する学者、北部アメリカの伝統的な文化を好む懐古趣味の芸術家が、この街をよく訪れ、長期に渡って滞在することが多い。


 主要な新聞は、1806年創刊の伝統がある「アーカム・ガゼット」紙と、比較的軽めの話題を取り扱う「アーカム・アドヴァタイザー」の大衆紙がある。



「秘密の心臓」

2010-09-19 20:49:36 | デイビィッド・アーモンド

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 『秘密の心臓』、デイヴィッド アーモンド著、山田 順子訳、東京創元社


<あらすじ>
 さびれた村ヘルマス。少年ジョーは、吃音のためにうまく喋ることができない。自分の想いをちゃんと表現できずにいた。唯一の理解者は、母親のみ。しかし、父親は、誰だか分からない。
 そんな悩みを抱えている彼は、周りに解けこめずに、学校も不登校を続けていた。


 ある日、ジョーは不思議な夢を見る。トラの夢だ。それも巨大なトラで、ドラゴンやユニコーンといった想像の世界でのみで生きているトラだった。
 同時に村の空き地へ落ちぶれたサーカス団がやってくる。彼は空中ブランコ乗りの少女コリンナと出会う。
 二人は、今までに一度も逢ったことなどないはずなのに、なぜか懐かしさを覚えた。以前から知っているような気がした。


 ジョーは、コリンナによって不思議なサーカス団員のもとへと導かれていった。そして彼の中に眠る秘密の心臓が動き出す…… 。




<感想>
 アーモンドの長編4作目にあたる本作品です。彼の作品には、共通して不思議な生き物が登場します。『肩甲骨は翼のなごり』では、天使をイメージする翼を持った生き物スケリグ。本作では、想像上の巨大なトラです。
 このトラは、夢の世界と現実の世界を行き来します。姿を見ることができるのは、特別な目を持った人にしか見れないのです。
 さらに秘密の心臓を持ったジョーは、そのトラを呼び寄せることができるのです。


 ジョーは、周りから白目で見られる負い目と、反面、特別な人間であるという自負のギャップで揺れ動きます。
 今までは、どちらかというと負い目であると感じていました。しかし、サーカス団の少女コリンナとの出会いによって変わりはじめる。そんな過程を描いています。


 寂れた町に落ちぶれたサーカス団。作品全体に滅びの雰囲気がかもし出されていて、活き活きとしたジョーとコリンナとは対照的で、そのコントラストが素晴しい。
 文章の簡潔さと相まって絵本を読んでいるかのような感じの作品です。



「肩胛骨は翼のなごり」

2010-09-17 21:32:39 | デイビィッド・アーモンド

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 『肩胛骨は翼のなごり』、デイヴィッド アーモンド著、山田 順子訳、東京創元社


<あらすじ>
  主人公のマイケルは、家族とともに新しい家に越してくる。彼はサッカーが好きで、作文が上手い少年。環境の変化のせいで多少の不安や寂しさがあっても、本来なら楽しい気持ちでいっぱいのはず。
 でも、生れて間もない妹は、生命が危ぶまれるほどの心臓の病気を患っていた。マイケルやお父さん、お母さんにも、その暗雲がのしかかっていた。


 引越し先の家の裏庭には、古ぼけて、今にも崩れそうなガレージがあった。お父さんには、危険だから中に入ってはいけないと止められていたが、マイケルはこっそりと入ってしまう。
 そしてガラクタと埃まみれの中から、翼を持った生き物スケリグと出会う。マイケルは、とても衰弱していたスケリグを、新しい友だちの少女ミナとともに命を助けようとした。



<感想>
 デイヴィッド アーモンドの処女作で、カーネギー賞とウィットブレッド賞を受賞した英国児童文学の新しい傑作。
 主人公マイケルの目を通して描かれる物語は、夢と現実の間にあって、繊細で美しく、まるで澄み切った満月の晩に水面に映った月のように、ときには美しく。風が吹けば、波紋が起きれて消えてしまうようなに、ときにはかなさを感じる作品です。


 短い章(多くても4~5ページほど)をいくつも積み立てて構成されていて、すべてを語らずに曖昧な部分を故意に(たぶん)入れている。
 こうすることでゆれる少年の心の繊細さ、物語り全体における神秘さをかもし出しています。


 なんでもない出来事が、10歳の少年には、大きな不安ともたらすことを気づかされる。
 そんなピュアな時が、自分にも有ったんだと思い起こさせてくれた、心洗われる作品でした。