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「リア王」 舞台内容 三幕四場

2010-03-31 14:28:29 | 「リア王」

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 嵐の中の荒野、掘立小屋の前、リアとケントと道化か登場。


 ケントは、やっとの事でリアを小屋に入れるが、そこには姿を変え、乞食に身をやつし、狂気のふりをして追っ手から身を隠すグロスターの元嫡男エドガー(ここでは哀れなトムと名乗る)いた。
 ケントは良かれと思ってした事だが、皮肉にもそれが結果として仇となってしまう。狂気のふりをしているエドガー(リアたちは、目の前いる乞食がエドガーとは気がつかず、真の狂人と思っている)とのやり取りで、本物の狂気になってしまったのだ。
 彼は狂暴な感情から一転して子供のような無力者になってしまう。




 エドガーの裸同然の姿を見たリアは、自身の余分な物を捨てようということで、着ていた衣服を剥ぎ取ってしまう。そして彼はエドガーを樽に住んでいたアテネの哲学者ディオゲネスであると考えた。


 リアが真の狂気に取り付けれてしまっても、ケントと道化は彼に仕えることを止めはしなかった。
そこへリアを探しに来たグロスターがやって来る。思わず息子のエドガーと再会するのだが、グロスターは目の前の乞食が息子である事に気がつかない。


 グロスターが漏らした言葉により、エドガーは父が騙されている事に気がつく。リアが狂気になったのを見て驚愕したグロスターが述べた言葉がそれである。
 'I am almost mad myself: I had a son,
   Now outlawed from my biood; he sought my life,
   But lately, very late: I loved him, friend;
   No father his son dearer: truth to tell thee,
   The grief hath crazed my wits.'
 (わたしこそ気が狂いそうだ。わたしにも倅が一人いた。
 それをわたしは勘当してしまった、ついこの間の、
 ごく最近、この親の命を狙ったためだ。
 わたしはあれを可愛がってきた、どの親も息子をわたしほど
 大事にしてきたとは思われぬほどに、真の話、その悲しみが
 わたしの気を狂わせるのだ)


 この瞬間から、父に対するエドガーの怒りが憐れみに変わる。


 しかし、この間にもエドマンドは悪事を行なうことを休んでいなかった。三幕三場で父親がフランス軍侵入のことを漏らしたことを利用し、今度はグロスター伯爵になろうと企てる。
 'The younger rises when the old doth fall.'
 (若い者が出世する時は、年寄りが倒れる時さ)


と、冷然として言った。



「リア王」 舞台内容 三幕一場~三幕三場

2010-03-29 13:58:58 | 「リア王」

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・三幕一場
 前場までに、ある意味において、悪人である「私生児(natural son)」「親不孝な(unnatural)」者たちが「自然の情愛(nature)」の者たちを駆逐した。

 父親の軽率につけ込んで大財産にありついたゴネリルとリーガンは、彼の寛大さを悪用し、父の食い食い扶持を減らし、家来を減らし、挙句の果てに嵐の中へ追い出した。エドマンドもグロスター家の後継ぎとなり、兄を追い出してお尋ね者にしてしまった。

 ここまでのところは、悪が栄えたのだが、それがいつまで続くのか、それが今後の展開となる。




 場所は荒野、嵐の中ケントと一紳士はリアを探し回る。その中においてケントは、現在フランス国王妃となったコーディリアが、ブリデン国内の混乱に乗じて、軍を差し向けようとしているという知らせが届く。


 ケントは一紳士をドーバーへ送り、コーディリアたちにリアの現状を知らせることにする。
 リアが受けた不当な待遇に復讐するための軍勢が終結しつつあるということだ。





・三幕二場
 前場とは違う場所の荒野。
リアが嵐と戦っている。彼の激情は、荒れ狂う嵐と同調していて嵐が激しくなると共に高まり、その狂気も高まっていった。


 彼の呪いは激しく、その言葉はどぎつくなり、罪を咎める声は恐ろしくなる。
 リアは罪を犯す人間というよりは、罪の犠牲になった人間という立場になっている。




 リアがその様な惨めな状態になっているところをケントが発見し、お供の道化と一緒にボロ小屋へ非難するのだった。



・三幕三場
 グロスターの居城の一室。グロスターとエドマンドが登場する。
グロスターは、リアが冷遇されるのを見て憤慨する。とくにそれが自分の城の前で行なわれたから一層憤りが増した。


 グロスターは、先ず息子のエドマンドにその憤りを打ち明ける。エドマンドは、表向き同感の意を示し、「最も酷い蛮行で、親子の情に背くものだ」と述べた。


 それを聞いたグロスターは、さらに続ける。
   'Go to; say you nothing. There's a division between the dukes; and a worse
   matter than that: I have received a letter this night; 'tis dangerous to be spoken;
   I have locked the letter in my closet: there injuries the king now bears will br
   revenged home; there's part of a power ready footed; we must incline to the king.'
 (まあ、よい、もう何も言うな。両公爵の間には溝がある(仲違いしている)、
 いや、事態はそれより険悪だ。実は今夜、然る所から手紙を受け取った。その中身は、
 うっかり口に出せる事ではない、わたしはそれを私室のクローゼットに入れ、鍵を掛けておいた。
 今、国王が受けておられる苦しみが完膚なきまでに復讐される日が来るだろう。
 軍(フランス軍)の一部が既に(ドーバーへ)上陸している。
 我々は国王方にお味方せねばならぬのだ)


 そこでグロスターはリアの支援に出かけ、リアをドーバーへ連れて行く手筈を整える。


 しかし、それはエドマンドに新たなる悪事を行なわせるきっかけを与え、このことを公爵たちへ密告するのだった。



「リア王」 舞台内容 二幕四場(5)

2010-03-23 10:51:17 | 「リア王」

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 すでに三度も激情の嵐に曝されて、とうとうリアは頭がおかしくなり始める。自身の感情をコントロールしようと努力するのだが、思うようにいかずに、換わりに狂気が次第に襲い掛かってくるのを感じる。
          'You think I'll weep;
   No, I'll not weep:
   I have full cause of weeping; but this heart
   Shall break into a hungred thousand flaws,
   Or else I'll weep. O, fool, go mad.'
       (おまえら、余が泣くと思っているな。
 いや、泣くものか。
 泣きたい理由は幾らでもある。だが、この心を
 粉々に打ち砕いてしまうまでは、決して泣きはせぬぞ。
 おお、道化よ、余は気が狂いそうだ)


 こういう棄て台詞を残し、リアは激しい嵐の中に飛び出して行ってしまう。逆に娘たちは邸の中へ戻って行き、リアを探しに行くこともしなかった。
 激情の嵐に曝されたリアは、実際の嵐にも曝されるというわけだ。この辺りがシェークスピアの皮肉っぽいところを感じる。つまり心身ともに嵐にもみくちゃにされるということだ。




 そしてことごとに娘たちの冷酷な心が暴露する。グロスターとリーガンとの間に交わされた会話――
Gloucester: Alack, the night comes on, and the bleak winds
          Do sorely ruffle; for many miles about
          There's scarce a bush.

Regan:                   O, sir, to wilful men,
     The injuries that they themselves procure
     Must be their schoolmaster.

グロスター:ああ、夜になる、身を切る冷たい風が吹き荒れている。
     この辺りは、どこまで行っても
     草むら一つもありはしない。

リーガン:      ええ、でも頑固な人というものは、
    自ら招いた禍を、己の師とせねばなりますまい。


 そして城門は閉じられて、リアは追い出されてしまった。ここで二幕は閉じる。



「リア王」 舞台内容 二幕四場(4)

2010-03-17 11:26:24 | 「リア王」

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 リアに頼りにされ、すがりつかれても、リーガンは心を動かすことはなかった。
彼女はただ「御用の趣を言ってください」と、言うだけであった。


 そこへラッパ鳴り、ゴネリルが来たことを知らせる。
リーガンがゴネリルの手を取るのを見て、リアの最後の希望がつぶれるのだった。
そしてリーガンは、ことにあろうか、父に向かって姉の前に跪き、彼女の邸においてもらうように許しを乞えと命ずる。


 リアは愕然とし、リーガンのところへ留まることを懇願するのだが、リーガンは聞く耳を持たず、そして姉ゴネリルよりも冷酷な言葉が、リアに突き刺さった。
Regan: I pray you, father, being weak, seem so.
     If till the expiration of your month,
     You will return and sojorn with my sister,
     Dismissing half your train, come then to me:
     I am now from home, and out of the provision
     Whigh shall be needful for your enterainment.

リーガン:どうか、お父様、力の無き者は無いように振舞って下さいまし。
    一旦お姉さまのところへお戻りになられ、
    ひと月経つまでお過ごし頂き、お供の者を半分はお暇を与え、
    改めて私どものところへおいでになることです。
    ご覧の通り、私どもは、ただいま館を離れており、
    お父様を迎えるに必要な諸事の賄いも不足しておりますので、
    十分なお持て成ししかねます。


 さらにリーガンは、お供の騎士の数を25人にすることを要求する。
これらの言葉を聞いたリアは絶望し、まだゴネリルの方がましであると考えて、仕方なくゴネリルのところへ戻ろうとするのだが、その考えは甘かった。
 実は姉のゴネリルよりも妹のリーガンの方が性格がきついのだ。だとすると、判りきった事であるが、コーディリアは三姉妹の中で唯一、心優しい娘である、ということだ。


Lear: Those wicked creatures yet do look well favoured.
    When others are more wicked, not being the worst,
    Stands in some rank of praise.
                                        [To Goneril.]
                                 I'll go with thee;
    Thy fifty yet doth double five and twenty
    And thou art twice her love.

Goneril:                        Hear me, my lord;
       What need you five and twenty, ten, or five,
       To follow in a house where twice so many
       Have a command to tend you ?

Regan:                              What need one ?

Lear: O, reason not the need: our basest beggars
    Are in the poorest things superfluous:
    Allow not nature more than nature needs,
    Man's life's as cheap as beast's: thou art lady;
    If only to go warm were gorgeous,
    Why, nature needs not what thou gorgeous wear'st,
    Which scarcely keeps thee warm. But, for true need,――
    You heaven, give me that patience, patience, I need !

リア:他にもっと拗けた者がいるときは、拗けた者でも
   結構、良く見えてしまうというものだ。
  最悪でないということが、せめてもの救いとなる。
                  [ゴネリルに向かって]
                余はおまえと一緒に行こう。
  おまえのところの50人は、25人の倍の数だから、
  おまえの愛情は、この女の倍ということになる。

ゴネリル:            お父様、ちょっとお待ち下さいまし。
    既にその倍も召使がいて、お指図を待っておりますのに、
    どうして25人も、いえ、10人とか、5人もの数の
    お付の者が必要でしょうか?

リーガン:           どうして必要なのでしょうか、一人たりといえども?

リア:おお、必要だと言うな、如何に賎しき乞食でも、その取るに足らぬ持ち物には、
  何か余計な物が入っている。人間が必要とする以上の物を自然が与えなかったならば、
  人の暮らしは畜生同然の惨めなものになろうというもの。
  おまえ等は身分の高い女たちだ。もしも、ただ温かくさえあれば良いと、
  それが立派な衣装であると言うのなら、
  おまえ等のその様な温かさのためとは言えぬ立派な衣装は、
  そのようなもの、自然は必要としない。しかし、本当に必要なものは――
  おお、神々よ、余に忍耐を与え給え、忍耐、それこそ余が必要とするものだ!


 ここにも「nature」というキーワードがでてくる。ここでは「世界を司る自然の女神」とか、「世界の有り様」というような意味である。





「リア王」 舞台内容 二幕四場(3)

2010-03-14 12:18:22 | 「リア王」

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 一旦は自身の怒りを自制したリアであったが、拘束されているケントを見ると、怒りが込み上げてくる。
                                'wherefore
   Should he sit here ? This act persuades me
   That this remotion of the duke and her
   Is practice only. Give me my servant forth.
   Go tell the duke and 's wife I'll speak with them,
   Now, presently: bid them come forth and hear me,
   Or at their chamber-door I'll beat the drum
   Till it cry sleep to death.'
                 (なぜ、
 このような目に遭わせるのだ? これでおよその察しがつく
 公爵と娘が余に会わぬのは、何か企みがあって事に相違ない。
 余の家来をさらし台から解け、公爵夫妻のところに行って
 余が話がしたいと言っていると伝えよ、今、直ぐにだ。
 ここへ来て、余の言うことを聞けと言え、さもなければ
 余から彼らの寝室に出向き、眠りが破れるまで
 太鼓を叩き鳴らしてくれるぞ)


 リアの怒りにグロスターは仲裁の役を買って出て、急ぎコーンウォール夫妻の元へ向かうと、間もなく夫妻が家来を引き連れて出てきた。


 リアは、リーガンのことを盲目的に親孝行者であると考えており、姉娘ゴネリルの不親切を訴えて、援助を求めるのだった。


 しかし、彼は冷酷な心の持ち主に話しかけていることにも気がつかない、リーガンはゴネリルの完全な同類であることを。
 リアは自身の苦しみから逃れるためにリーガンにすがったのだ。リーガンがゴネリルと同類であることを認めたくなかった、というよりも認められなかった。それほどリアは追い詰められていたということだ。




 リーガンは、リアが不満を述べると、いちいち姉の味方をして、彼女を擁護する。それでもリアは、この娘にすがろうとする。


 リアがゴネリルを呪うと、リーガンがこう嗜める。
             'so will you wish on me,
   When the rash mood is on.'
 (無分別な気分におなりになると、
 わたくしにもその様に呪いを浴びせるのでしょう)


 それに対し、リアは答える。
 'No, Regan, thou shalt never have my curse:
   Thy tender-hefted nature shall not give
   Thee o'er to harshness: her eyes are fierce: but thine
   Do comfort and not burn. 'Tis not in thee
   To grudge my pleasures, to cut off my train,
   To bandy hasty words, to scant my sizes,
   And in conclusion to oppose the bolt
   Against my coming in: thou better know'st
   The offices of nature, bond of childhood,
   Effects of courtesy, dues of gratitude;
   Thy half o' the kingdom hast thou not forgot,
   Wherein I thee endowed.
 (何を言う、リーガン、おまえが余の呪いを受ける事はない。
 優しい気立てのおまえが酷い仕打ちに出る筈がない。
 あの女の目は残酷だが、おまえの眼差しは余の心を励まし、
 決して怒りに燃え上げさせたりしない。
 おまえは、余の楽しみにけちを付け、供の者を減らし、
 きつい減らず口を投げ返したり、余の決め扶持を減らし、
 挙句の果てに門を閉ざし、館へ入れまいとするようことはしない。
 おまえは子たる者の務め、親子の繋がり、礼儀を尽くし、
 恩に報いる道について姉よりも十分に心得ている。
 嫁入りの支度として与えた国土の半分は、余が与えたということを
 おまえは忘れておらぬ)