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「リア王」 舞台内容 五幕三場(2)

2010-04-29 14:49:15 | 「リア王」

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 オールバニーはエドマンドと決闘への意気込みを示すが、ここはエドガーとの約束を守り、彼の出番を待つ。


 伝令のラッパが3度吹かれると、覆面をつけて変装したエドガーが登場する。彼は伝令官に形式的な尋問に応えて、エドマンドの犯罪を告発するのだった。
                            'Thou art a traitor,
   False to the gods, thy brother, and thy father;
   Conspirant 'gainst this high-illustrious prince;
   And, from the extremest upward of thy head
   To the descent and dust below thy foot,
   A most toad-spotted traitor.'
         (貴様は、謀反人だ
 神々も、兄も、父をも裏切り、
 この高名な公爵に対し陰謀を企てた、
 頭の天辺から足の裏まで穢れきった
 ガマにも等しい謀反人なのだ)


 こうまで言われてしまったエドマンド。

 彼はここまで、凶悪一点張りの人物として描かれてきたのだが、作者であるシェークスピアは、ここで彼のもう一面を演出することで、彼を単なる悪役から抜け出させている。ある意味人間味を持たしたともいえるだろう。

 シェークスピアは、こんな卑劣な男にも一片の騎士道精神が宿っていることを示すのだ。




 エドガーは覆面をつけたまま、名前も告げずにエドマンドと決闘しようとする。本来であれば、エドマンドは騎士道のルールによって、この決闘を拒否することができた。しかし彼はそれを卑怯であるとした。


 エドマンドは、ルール違反を口実に、決闘を逃れようとはしなかった。いかなる敵であろうと、正々堂々と戦いを挑むなら、それ受けて立とうと思った。
 'In wisdom I should ask thy name;
   But, since thy outside looks so fair and warlike,
   And that thy tongue some say of breeding breathes,
   What safe and nicely I might well delay
   By rule of knighthood, I disdain and spurn:
   Back do I toss these treasons to thy head;
   Which, for they yet glance by and scarcely bruise,
   This sword of mine shall give them instant way,
   Where they shall rest for ever.'
 (本来であれば、おまえの名を尋ねるべきであろう、
 だが、その外観は立派で勇ましく見える、
 さらに言葉の節々に育ちの良さがうかがえる、
 故に騎士道の掟に従えば受けるに及ばぬ挑戦だが、
 そんな事はどうでもよい、相手になる、だが、
 反逆の汚名はおまえの頭上に投げ返し、
 おまえの口から出た忌まわしい嘘で、その胸を押しつぶしてやる、
 折角の汚名も素通りし、俺にはかすり傷一つもつかなかった、
 今度は俺の剣がそいつを元の場所に突き返し、永遠に止めてやるぞ)


 悪役にして格好良すぎる捨台詞だよね。





「リア王」 舞台内容 五幕三場(1)

2010-04-28 14:17:00 | 「リア王」

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 ドーバー付近のブリデン軍の陣営、軍鼓、軍旗と共に勝利者エドマンド、囚われのリア、コーディリアが登場、それ続く隊長と兵たち。


 エドマンドの言葉から、オールバニは彼ら二人を厚遇しようとしているが、エドマンドは彼らを殺そうとしていることが分かる。


 逆境にあってコーディリアは平静を失なわず、彼女は父の身を案じるばかりである。
              'We are not the first
   Who, with best meaning, have incurr'd the worst.
   For thee, oppressed king, am I cast down;
   Myself could else out-frown false fortune's frown.'
          (わたしくたちが、初めてという訳ではない、
 最善の志しを抱きながら、最悪の事態を招いたためしは珍しくありません。
 国王の御身でありながらこの苦しみ、それを思うと心が沈みます、
 わたくしだけなら、不実な運命のしかめ面など、睨み返してやりますのに)


 さすがコーディリア。シェークスピアの作品に登場する女性の中で人気を博しているだけあるよね。




 リアは、戻りはじめた正気をが、再び失われて、自分がおかれている逆境を認識できていない。
彼は、コーディリアと二人だけでいられたら、牢獄の中でも小鳥のように歌おう、と言うが、エドマンドは、容赦なくこの二人を処刑する手筈を整えていく。


 エドマンドの傲慢な指揮者面を見かねてオールバニーが嗜めると、彼はかえってオールバニーにくってかかる。その傍からリーガンがエドマンドに加勢する。


 すると、今度はゴネリルが夫のオールバニーがその場にいるにもかかわらず、競争意識からリーガンを罵り、エドマンドは自分のものだと主張するのだった。


 ここで、突如、リーガンは気分が悪いとうったえる。
 実はゴネリルは、エドマンドを独占する手を打っておいたのだ。つまりゴネリルは、妹のリーガンに毒を盛っていた。こわいですね~、これは恐い。




 それを見ていたオールバニーは、エドマンドの反逆と妻のゴナリルの不貞とを激しく告発する。
そして、苦い皮肉を込めて言う。
              'Edmund, I arrest thee
   On capital treason; and, in thine attaint,
   This gilded serpent [pointing of Goneril]. For your claim, fair sister,
   I bar it in the interest of my wife;
   'Tis she is sub-contracted to this lord,
   And I, her husband, contradict your banns.'
               (エドマンド、おまえを
 反逆の大罪で捕らえる。そして、それと同時に
 [ゴネリルを指しながら]、この金ぴかに着飾った蛇もだ。ところで美しき妹君、
 あなたの要求についてだが、わが妻に代わり、私の口から異議を申し立てたい。
 この女は既に伯爵(エドマンド)と婚約を取り交わしている、
 よって、私はこれの夫としてあなたの権利の行使を拒否するのだ)


 さらにオールバニーは、他の証人(エドガーのこと)が現れてエドマンドの反逆を 告発しない場合は、自分が代わりに告発すると宣言し、エドガーとの約束どおり、ラッパを鳴らすようにと兵士に申し渡すのだった。


 さらに場面は逼迫し、リーガンが胸を押さえて苦しみだす。それをゴネリルは冷酷な眼でもって妹の経過を見守っていた。
 いやあ~、修羅場ですね。舞台もクライマックスなので一気に進んでいくのだ。





「リア王」 舞台内容 四幕七場~五幕二場

2010-04-26 16:06:19 | 「リア王」

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・四幕七場
 フランス軍の陣営、コーディリア、ケント、侍医、紳士が登場。
リアはコーディリアに保護されて、ケントや侍医によって看護を受け、今は眠っていた。


 そしてリアが目を覚ます。手厚い看護によって彼は正気に還りはじめていた。
コーディリアは目覚めたリアの元にひざまずき、それを見たリアも彼女の前でひざまずこうとする。


 コーディリアはそれを留めて泣く。それ見たリアは言う。
 'Be your tears wet ? yes, 'faith. I pray, weep not:
   If you have poison for me, I will drink it.
   I know you do not love me; for your sisters
   Have, as I do remember, done me wrong:
   You have some cause, they have not.'
 (涙を流しておるのか? おお、やはりそうだ、頼む、泣かないでくれ。
 おまえが毒を飲めと言うのなら、余は飲んでみせるぞ、おまえは余を憎んでいるはずだ、
 おまえの姉達は、余を酷い目に遭わせたことは忘れぬ。
 おまえにはそれだけの謂れがあるのだ。だがあの女たちにはない)


 そして改めてリアはコーディリアに許しを請うのだった。
 コーディリアはリアに対して何ら恨みなどなく、心から彼を思い遣っている。ここは姉たちとも違いがはっきりと表面化する。




 リアが正気を回復しかかって愁眉をひらいた人々は、コーンウォールの死によって、代わりに指揮官になったエドマンドの率いるブリデン軍が迫ってきていることを知らされる。


 ここで四幕は閉じる。



・五幕一場
 ドーバー付近のブリテン軍の陣営、軍鼓が鳴り、軍旗が翻る中、エドマンドとリーガンが将兵を引き連れて登場する。


 エドマンドをはさんでゴネリルとリーガンがお互いに嫉妬の炎を燃やしていた。エドマンドはこの状況を利用し、二人ともに夫婦なる約束をし、オールバニーがリアやコーディリアに同情しているのを見抜いていて、戦が終わったら彼を処分することに決めていた。


 一方、エドガーは変装のままで陣中に忍び入って、オールバニーに例の手紙を渡し、勝ち戦だったら、ラッパで自分を呼び出すようにと言い添えて、急ぎ立ち去る。
 エドガーは、戦の後で、背徳者のエドマンドと決着をつけようとしていた。





・五幕二場
 両軍陣営の間の戦場、ラッパが鳴り響き、フランス軍と共にコーディリアがリアの手を引き通り過ぎる。その後をエドガーとグロスターが登場。


 戦はブリデン軍が勝利を収め、フランス軍は敗退。リアとコーディリアが捕虜となるのをエドガーが見届けるのだった。
 戦の場面は省略されていて、いきなりフランス軍が敗走する場面から始まる。
無駄は一切ない。これは人間模様を描くことが中心であり、戦いを描くことではない。





「リア王」 舞台内容 四幕六場(2)

2010-04-23 12:30:18 | 「リア王」

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 引き続き、ドーバー付近の野原、狂人のリアと盲目のグロスターの会話。
 リアの毒舌たっぷりの台詞をいくつか紹介したい。


         'Down from the waist they are Centaurs,
   Though women all above.
   But to the girdle do the gods inherit,
   Beneath is all the fiend's.
   There's hell, there's darkness, there's the sulphurous pit;
   Burning, scalding, stench, consumption. Fie, fie, fie! pah,pah!
   Give me an ounce of civet, good apothecary, to sweeten my
   Imagination. There's money for thee.'
 (腰から下は怪獣ケンタウロス、
 女であるのは上半身だけ、帯紐までが神の領域、
 それより下はすべて悪魔どもの領地だ。
 そこは地獄だ。暗闇だ、硫黄の燃える穴だ、火と燃え、煮えたぎり、
 腐れ爛れて悪臭がすべてを飲み込む。ええい、堪らん、ぺっ!ぺっ!
 麝香を一摘みくれ、頼む、薬屋、余の頭の中を清めてくれ、
 さあ、金をやる)


 どうしてここで、女性一般を呪う言葉出てくるのか、脈絡ははっきりとしないが、たぶん二人の姉娘のゴネリルとリーガンについていっているのだろうと思われる。

 一方、女性のの下半身を地獄と見立てるのはシェークスピアのソネット129番などに通ずるものがある。シェークスピアのソネットは、彼自身の経験が反映されているといわれているので、シェークスピアは女性に、しかも性的な事柄で、よほど酷い目に遭ったのかも知れない。


 'What, art mad? A man may see how the world goes with no eyes'
 (何だと、おまえは気違いか? この世の成り行きを見るのに目など要らぬ、耳で見ろ)


 眼を潰されたグロスターに対する台詞であるだけに、痛切に響く。
安易に目が見えてしまうだけに、人は簡単に騙されてしまう。グロスターもリア自身も、その愚かさにはまり、どん底の境遇に落ちてしまったのだ。

 しかし、すべてを失いかけて、初めて彼らに見えて来たこともある。
二人とも、それぞれの立場で、自身の浅はかさを認識し、暗黒の境遇に自己認識の光が差し込むのだ。
そうした点で、ここは後半のターニングポイントなのだ。


 'Through tatter'd clothes small vices do appear;
   Robes and furr'd gowns hide all. Plate sin with gold, 
   And the strong lance of justice hurtless breaks;
   Arm it in rags, a pygmy's straw does pierce it.
   None does offend, none- I say none! I'll able 'em.'
 (ボロボロの服を着ていればこそ、その破れから、些細な悪事も露見する。
 お偉方が着るローブや毛皮のガウンは、すべてを隠してしまう。
 罪を金の鎧で覆えば、どんな鋭い正義の槍も折れてしまい、中まで傷つくことがない。
 それがボロであってみろ、小人の藁しべだって見事に一刺しだ。
 この世に罪人はおらぬ。一人おらぬ、一人もな。余が保障する)


 リアは、権力を持った者の横暴に繰り返し触れている。
この台詞はその締めくくりで、権威の象徴である衣服を身にまとっているだけで、権力者は大きな罪からさえ逃れることができる。反対に、ボロをまとった貧乏人は、どんなに些細な罪でも暴かれてしまう。

 かつて権力者の頂点に立っていたリアが、ここで弱い者の視点から世の不正を権威というものの醜い姿を暴いているのだ。

 しかし、最後には、「この世に罪人などいない」という許しの言葉である。シェークスピアは、後期の作品の中で、繰り返し「許しと和解のテーマ」を取り上げていて、『リア王』でも、すべてを失ったリアが悟った真理の一つが、「人を裁くな」という聖書にある教え、許すことの大切さであったのだ。




 グロスターとエドガーは、狂気に取り付かれたリアに涙を流し、そこへ紳士が数名の従者を伴って登場する。
彼はコーディリアがリアを探していることを告るが、リアは、それが追手であると思い込み、逃げ出し、その後を従者たちが追っていく。


 そして、この場にオズワルドが現れて、賞金のかかっているグロスターを殺そうと襲い掛かるが、逆にエドガーによって討ち殺されてしまう。そして、死に際に、ゴネリルからエドマンドに渡すようにと託されていた手紙を差し出した。


 それはエドマンドに、彼女が、夫のオールバニーを殺して彼女と夫婦になろうともちかける手紙であった。エドガーはその手紙の内容をオールバニーに知らせて、彼の眼を事実に向かって開かせることにする。



「リア王」 舞台内容 四幕四場~四幕六場(1)

2010-04-22 14:03:12 | 「リア王」

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・四幕四場
 前場と同じくドーバー付近のフランス軍陣営。
コーディリアは、リアを探し出すように命じる。そこへ新たなる使者が登場し、イギリス軍がこちらへ向かって来ていることを告げた。それに対し彼女はリアの復権させるべく、イギリス軍を迎え撃つ。



・四幕五場
 グロスター伯の居城。リーガンとオズワルドが登場する。
イギリス軍は集結しつつあった。一体になってフランス軍に当たっているように見えたが、内部には、醜い嫉妬があった。


 父親を虐待するという点では、ゴネリルとリーガンは一致していたが、エドマンドが二人の間に介在するようになって、二人は恋敵となる。


 エドマンドが一方の女に接近すると、もう一方の女は落ち着きを失ってしまう。



・四幕六場(1)
 ドーバー付近の野原。グロスターとエドガーが登場する。


 盲目のグロスターは、乞食に変装したエドガーに導かれて、何とかドーバーに辿り着く。そしてドーバーの崖から身を投げようとするが、息子のエドガーが機転を働かし、父のグロスターに自殺をして、幸運にも死の淵から救出されたと思わせた。


 エドガーに諭されて、グロスターは、これからは苦難を耐え忍んで生きていこうと、心新たにするのだった。


 狂人となってしまったリアは、護衛するする者たちから逃れて、独り彷徨い出てしまう。彼の狂気は、今や子供のように無邪気であり、花の冠をかぶったりしている。そして、この場に狂ってしまったリアが草花などを身に着けて現れ、哀れな姿でゴネリルとリーガンを呪う。
 'When we are born we ery that we are come
   To this great stage of fools.'
 (人が生まれたときに泣き叫ぶのはな、
 この阿呆ばかりの大舞台に引っ張り出されたのが悲しいからじゃ)


 リアは、盲目のグロスターに、様々な断片的な話を、何の脈絡もなく、次々と語り聞かせる。
 この場面のリアとグロスターの会話には、一見、狂人の戯言のようでありながら、この世の真理を突く、鋭く心に突き刺さってくる印象的な言葉に溢れている。