二章:Late-night Confusion ! Ⅰa《深夜の混乱! 1a》
「新しい料理の発見は、新しい星の発見よりも人類を幸福にする」--ジャン・アンテルム・ブリア=サヴァラン
木山 春生がビーカーのラーメンを食べていた頃、常盤台中学寮の一室で、御坂 美琴が目を覚ました。
「ふあ~~ぁ…… 、あれ? あたし服のまま寝ちゃったんだ。ふあ~ぁ…… しっかし、今日は疲れた……」
この日は、美琴にとって忙しい一日だった――
それは白井 黒子、佐天 涙子、初春 飾利といった、いつもの仲良し四人組でファミレスに集まったことから始まる。
「これは先輩の友達の彼氏さんが、実際に遭遇したっていう話です……」
涙子の語りで、都市伝説『脱ぎ女』の怪談話をしていた。
「あるむし暑い日の夜、その彼氏さんが、人気のない公園を通りかかったときのこと、一人たたずんでいた女の人に、駅まで道を聞かれたんです」
四人は窓際のボックス席に陣取って、雰囲気を出すために、大きな黒い布をかぶっていた。
「その彼氏さんが、こころよく道順を説明していると…… どこか虚ろな女の人が…… ふあ~と、手を上げて…… 」
涙子は、怪談話をダウンロードさせたケイタイ画面を見ながら話す。
「突然! ガバーッと!! 」
「ごっくん……」
「はっ!」
初春は生唾を飲みこみ、黒子は息を飲む。美琴は、涙子の言葉を弱々しく重ねた。
「ガバーッ…… と……」
そして三人を見渡しながら、涙子は続ける。
「ブラウスを脱いだんです……」
「『……って、まったくぜんぜん怖くないじゃん!』 ……って思ったんだけど、まさか本当いたなんてねぇ……」
美琴は、制服からパジャマへ着替えつつ、涙子の話を振り返っていた。