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第無夜 怪談 コーヒーブレイク 其の六

2010-08-27 19:22:07 | 不思議夜話

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 今回は、一休みということで、「コーヒーブレイク」の回です。しかし、何を書こうかと、かなり悩みましたが、やはり怪談に関連ある話を…… 。
 現在、NHK・BSで「文豪怪談」という特集をしています。近代の著名な作家が書いた怪奇作品を映像化したものですが、それにあやかって本の紹介をしたいと思います。


 その本とは、『日本怪奇小説傑作集1』紀田 順一郎 (著)/東 雅夫 (著)、創元推理文庫という本で、いわゆる文豪といわれる作家たちが書いた怪談アンソロジーです。


 爽々たるメンバーが名を連ねていています。


・小泉八雲 「茶碗の中(平井呈一訳)」
・泉 鏡花 「海異記」
・夏目漱石 「蛇」
・森 鴎外 「蛇」
・村山槐多 「悪魔の舌」
・谷崎潤一郎 「人面疽」
・芥川龍之介 「妙な話」
・内田百間 「儘頭子」
・室生犀星 「後の日の童子」
・大泉黒石 「黄夫人の手」
・岡本綺堂 「木曾の旅人」
・江戸川乱歩 「鏡地獄」
・大佛次郎 「銀簪」
・川端康成 「慰霊歌」
・夢野久作 「難船小僧」
・田中貢太郎 「蟇の血」
・佐藤春夫 「化物屋敷」


 どれも力作ぞろいで、さすがと言ったところでしょうか。
 ただ、怪談というと、読者を怖がらせることを主眼に書かれてあるものですが、文豪たちは、ちょっと違っていて、怪奇の中に現れる人間の情念とか、異常な想念といったものを主眼において、人間を描いている、そんな作品集になっています。


 ヴィクター個人としては、面白かった作品は、以下の通り。


 小泉八雲の「茶碗の中」(未完作品ですが、面白い。続きが物凄く気になる。でも、ある意味、未完だからこそ、思い白いのかもしれません)。


 泉鏡花の「海異記」(さすがに幻想小説を書かせたら、右に出るものはありません。ただ、一種独特の世界に着いて行けるかどうか。読者の感性による)


 室生犀星の「後の日の童子」(この中で一番怖かった、と言うより不気味さと合間見えた切ないを感じさせる作品)


 大泉黒石の「黄夫人の手」(不気味さでは一、二を争うか?)


 江戸川乱歩の「鏡地獄」(乱歩の独特の感性が光る作品です)


 川端康成の「慰霊歌」(康成が、こんな作品を書いているとは、ちょっと驚き!)


 夢野久作の「難船小僧」(どこが怪奇なのか、突っ込みたくなるが、面白さでは「茶碗の中」に引けを足らない)


 まあ、こんなところでしょうか。近代の文豪たちの意外な一面を見られる作品群で、そう言った意味で怪奇なのかもしれないですね。



第三十話 怪談 魔の交差点(五)

2010-08-25 11:43:40 | 不思議夜話
 暑い日が続きます。こうも暑いと何もする気がありません。ブログの更新も例外ではないのですが、かんばっていきま~す。


 事故の詳細は、次の通りでした。


 「魔の交差点」から、2~3キロ離れた場所に小学校があって、そこの3年生の男子生徒が被害者です。仮にA君としておきましょう。
 その日、A君は、友だち(B君とします)と一緒に自転車で併走する形で、件の交差点を通りかかっていました。すると、後方から一台の大型トラックが二人の自転車を追い抜いていこうと横を通り過ぎたのです。
 しかし、その瞬間、B君の横を走っていたA君が、急に向きを変えてトラックの車体に突っ込んでしまった
 A君は、後方の大きなタイヤに巻き込まれて即死。一瞬にして、それは無残な姿に変わり果ててしまったのです。


 B君は、友だちが人間でない形に変わり果てていく光景を間近で見たことで、大きなショックを受けて1週間ほど入院。
 その後も1ヶ月くらい、口が利けなくなってしまい、学校に通えるようになったのは、3ヶ月も経ったあとでした。


 そして、事故を起こしたトラックの運転手は、半年後に自分の行為を悔いて自宅の部屋で首吊り自殺してしまいます。
 実は会社名も、彼が住んでいた場所も知っているのですが、割愛します(ただ、住んでいた場所は、件の交差点から1キロほど離れた社宅です)。



 ヴィクターが、この事故の詳細を知っているのは、事故を目撃して、一時的に口が利けなくなってしたB君の担任の先生(Cさんとします)と知り合いで、かなりあとになってから、彼がこっそりと話してくれたんですよね。


 でも、この事故の話を聞いて、――あれっ、前に聞いたことがあるような―― と、感じるのはヴィクターだけでしょうか? 前にお話した「犬の事故」「OLさんの事故」とシチュエーションが似てなくないですか?


 そこで、今までヴィクターが体験したことをCさんに話すと、「やっぱり…… 」という返事か返ってきた。
 そして、Cさんは、次のような話をしてくれました。


 「あそこは、出る(幽霊が)って、もっぱらの噂ですよ。夜中に通ると、白装束の老婆が乳母車を押しているのを見たとか、鎧姿の武者が馬に乗って闊歩していたとか。そんな話をたくさん聞きますよ。あの辺りじゃ、かなり有名です」


 老婆の話はともかく、馬に乗った武者の話は、背筋に寒いものが・・・・・・ というのも、その辺りは昔(江戸時代)、馬場があって馬を教練していたんですよ。
 だから地名に馬具や乗り物に関する名前が多いんです(具体的に地名を挙げちゃうと場所が特定できてしまうので、あえて割愛します)。
 それで馬、つまり乗り物の祟りじゃないかと、推測したんです。だって辺りに、それに関する供養碑とか、塚や神社なんかが点在するんですよね。


 ヴィクターは、コンビニのバイトを始めるまで、件の交差点というか、その近辺に行ったことがなかったので、全く知らなかったんです。
 知らないってことは、ある意味、怖いことですよね。つづく。



第二十九夜 怪談 魔の交差点(四)

2010-08-23 10:40:47 | 不思議夜話
 まだまだ暑い日が続きます。お体に気をつけて、夏バテしないようにがんばりましょう。


 「魔の交差点」の続きです。


 コンビニのバイトを始めて半年、OLさんの事故に遭遇してから3ヶ月ぐらいは経ったと思います。
 3ヶ月という時間は、人間を油断させるというか、慣れさせるのに最適で、薄気味悪いと感じながら通っていた道も、慣れてしまえば、気にならなくなるんですよね。


 もちろんその間の、相変わらず事故は起こっていたみたいですが、自分がその場にいなければ、他人事ですし、毎日バイトへ行っていたわけではないですから、まったく隙が開いていたんです。


 そんなある日のバイトの帰り、だいたい午後8時過ぎだったと記憶しています。いつものように件の交差点へ通じる道を走っていると、前方に赤色ライトが点滅していました。パトカーが止まっていました。


 ――検問かな? でも珍しいな、こんな場所で―― などと、考えながら先に進もうとすると、おまわりさんに呼び止められて、「ここから先、通行止めだから、迂回してください」と言われたんです。


 その場所から、件の交差点まで数百メートルほどありますが、すり鉢状の地形と周りには田んぼしかないので見晴らしが良かった。だから、はるか先まで見渡せる。ただ夜だし、明かりのないところだから、交差点を取り囲むようにパトカーの赤色ライトとが点滅しているのが鮮明に映りました。そして交差点地点にもパトカーを2~3台止めて何かやっていました。


 つまり、数百メートル前から交差点に近づくことができないようにパトカーが配備されていた、ということです。
 ――何か、とんでもないことが起こったに違いない―― と感じたヴィクターは、おまわりさんに聞きました。


 「何かあったんですか?」


 「事故が発生して、今、検分中なので、それが終わるまで通行止めです」と説明してくれました。


 いくら事故多発地帯といえども、今までにこんなことは初めてです。 ――ただの事故じゃないな――と思いながら、遠回りして帰宅しました。


 翌日、その場所を通ったときは、道路の脇に花束とお菓子が備えてあって、線香から煙が立ち昇っていました。


 そうです。とうとう死亡事故が発生してしまったのです。それも尋常じゃない悲惨な事故でした。つづく。



「鉄のオオカミ」 夢の冒険<2>

2010-08-21 11:54:48 | リチャード・アダムス

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 『鉄のオオカミ』 夢の冒険<2>、リチャード アダムズ著、井辻朱美訳、新書館


<あらすじ>
 「鉄のオオカミ」をはじめ、10の短編が収められている。


・「鉄のオオカミ」 (契約どおりにオオカミは襲ってきた。結婚式は大変なことに)
・「カラスよ月の光」 (エスキモーために、カラスは光を盗んでくる)
・「蛇のおくりもの」 (動物の言葉がわかるようになった羊飼い)
・「おしゃべりなキツツキ」 (キツツキが、なぜ長いくちばしで木を突きまわすようになったのか?)
・「月に行ったネズミ」 (月はチーズの岩山とおいしいクリームの湖だった。しかし月の猫がいた)
・「目の見えない少年と犬」 (愛犬ファンと一緒に苦難を乗り越えた少年の放浪記)
・「タヒチの大ウツボ」 (さんご礁の島々にココナッツが実るようになった伝説)
・「神さまの絵の具箱」 (ナイティンゲールが、あんなきれいな声で鳴くようになったのは?)
・「コマドリ」 (コマドリの胸が赤いのはなぜか?)
・「王子と魔法の馬」 (王子は馬の知恵で、永遠の若さを手に入れたが――)




<感想>
 短編の作品は、結末(オチ)がしっかりしていないと、面白さが半減してしまう。その点、本に収められている10篇の作品はしっかりとしていて、どれも面白い。


 前作の『コルサンの岩山』と同様に挿絵の出来が良い。


 収録されている作品は、そのままの民話・童話を載せているのではなくて、どの作品にも語り手を設けて、独自の味付けをしている。まさにアダムス風であり、前作品と同じく、テクスト理論に基づいた創りとなっている。


 巻末の訳者のあとがきがで、アダムスとトールキンを比較しているのが興味深い。



第二十八夜 怪談 魔の交差点(三)

2010-08-20 19:22:16 | 不思議夜話
 引き続き、「魔の交差点」からお送りします。


 犬の悲惨な事故から、およそ1ヶ月くらい経った頃だったと思います。やはり、バイト先へ向かうため自転車に乗って、件の交差点に向かっていたときでした。
 あのときの同じような赤い軽自動車が自分を追い抜いていき、 ――おや、見覚えのある車かな?―― と思って見ていると、車が交差点に差し掛かった瞬間に、急に向きを変えて、交差点脇に立っている外灯に激突してしまったのです。


 はじめは右折するためハンドルを切ったかとも考えたのですが、それにしてはウィンカーも出さず、ブレーキもかけずにいきなり曲がったのでした。
 スピードの勢いから、――これは曲がれない!―― と思うまもなく、道を外れて外灯に突っ込んでいきました。


 この「魔の交差点」は、回りは田んぼしかありませんので、基本的に外灯はなくて、交差点の脇に2本あるだけなのです。
 しかし、その外灯も満足に機能を果たしていませんでした。なぜなら、新しい外灯を立てても、すぐに車が突っ込んで壊してしまうからです。
 平均すれば、1ヶ月として持たず、ひどいときなど付け換えた翌日には、事故で壊してしまったことが1度や2度ではありません。


 外灯にブレーキもかけず突っ込んだ軽自動車は、けたたましいくエンジンをふかす音がして(たぶん、ぶつかった瞬間にアクセルを踏んだのだと思います)、エンジンルームから白煙を上げて止まりました。
 そして、中から紺のスーツを着た、あのOLさんが頭から血を流して、フラフラと降りてきたのです。


 ヴィクターは、あわてて自転車から降りて、駆け寄ってOLさんを反対車線の脇へ連れて座らせました(エンジンルームから白煙が上がっていたので、最悪、爆発するかもしれないと、危惧したからです。結局、爆発はしませんでしたが)。
 そして、ケイタイから119番し、救急車を要請したのでした。もちろんその道を通っていた車のドライバーも降りてきて手伝ってくれました。


 その後、救急車が到着し、パトカーもやって来て、ヴィクターは、おまわりさんに事故の状況を説明。
 事故の原因は、わき見運転によるハンドル操作の誤りと、いうことになったのですが、でも、今にしてみれば、かなり不自然な曲がり方をしたように、ヴィクターは感じます。


 すべて終わってバイト先へ行ったら、完全な遅刻でした(当然、事態を説明したので、怒られなかったですけど)。


 こんな感じで、あの場所はやたら事故が多いんですよね。


 こんなこともありました。バイトの帰り、その場所を自転車で走っていると、目の前を黒い物体が横切ったんです。大きさは40~50センチくらいあったと思います。
 それは、地上から1メートルくらいの空中をサッと通り過ぎていきました。あまりスピードに、何が横切ったのか分からなかったのです。
 ――エッ! なになに?―― と思っていたら、ちょうど反対車線に車が走っていて、そのフロントガラスに黒い物体が激突したんです。


 あまりの衝撃だったのか、フロントガラスが割れて車は急ブレーキ。運転手は無傷でしたが、激突した黒い物体は、跳ね飛ばされて20メートルくらい先に、地面へ墜落。その物体の正体は、キジでした。
 あの空飛ぶ鳥の、1万円札に載っているキジです―― 


 さすがにここまでくると、鈍感なヴィクターも薄気味が悪くなりまして、できれば、その道を通りたくはないと考えるようになったのですが、その道を通らずに迂回すると、倍以上の時間かかかってしまうので、やむなく走っていました。


 そんなある日のことです―― 、つづく。