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『とある化学(分子美食学)の調理法(レシピ)』Vol2.4a

2012-01-28 06:16:26 | とある化学
終章:That night was the beginning of Ramen Wars Ⅰ《その夜からラーメン戦争1は始まった》


 「パンさえあれば、たいていの悲しみは耐えられる」--ミゲル・デ・セルバンテス・サアベドラ




 御坂 美琴と木山 春生が、それぞれの自室で思いにふけっていた頃、とある高校のオンボロ学生寮の一室――


「はあ~~ぁ。不幸だ…… 」


 上条 当麻は冷蔵の中をのぞき込みながら、ため息を吐いた。


「はあ~~ 卵を全滅(皆殺し)させたのは痛かった…… 痛すぎるっ!」


 気合を入れて、毎月恒例のスーパーの特売の買い出しにいったのだが、その帰り道で転倒し、卵1パックすべてを割ってしまっていた。


「はあ~ へんなお姉さん(脱ぎ女)に出くわすわ。御坂 美琴(ビリビリ)に追いかけ回されるわ…… なんて不幸なんだ~」


 きょう一日の、自分の不幸にため息を吐く当麻だった。


 さらに言えば、月に一度の生活費(現金)支給まで数日あるだが、その日まで何とかやり繰りしなければならないビンボー学生の哀しいサガを呪った。


「しかっ~し、これぐらいで上条 当麻様はめげません! こんなこともあろうかと秘密兵器を常備している」


 当麻の秘密兵器とは、いざという時のために備蓄(ストック)しておいたインスタントラーメンだった。


「これで数日を耐えしのぶしかない!」


 グッとこぶしを握り締め、固く決意したその瞳は、どこか追い詰められた獣にも似た悲愴感がただよっていた。


 だが、彼は知らない。この数日後、さらなる不幸が襲ってくることに……



 一方、イギリスのロンドン聖ジョージ大聖堂内の一室―― いま二人の人物が対峙していた。
 ひとりは、身長2mの肩まで届く赤い長髪に耳に大量のピアスを着け、右目の下にバーコードの刺青を入れ、くわえタバコをしている。
 もうひとりは、とても長い金髪の若い女性で、修道服を身に着けているようなのだが、生地の色がピンクだった。


「ステイル。聖堂内は禁煙なのよ、よろしかのよし」


「ちっ! それで『最大主教(アークビショップ)』。用件とは?」


ステイル=マグヌスは、くわえていたタバコを床に投げ捨てブーツで踏みつけた。


「『禁書目録(インデックス)』の行方が判明したあるのよ」


「はっ! つまり追跡しろと」


そのままステイルは、『最大主教(アークビショップ)』ことローラ=スチュアートに背を向けて歩き出そうとした。


「お待ちなさいあることよ。ステイル…… 場所は日本、学園都市あるのよ」


「クソー! 科学サイド(あちら)に囚われたと!?」


 歩みを止めて、振り返るステイル。


「詳しいことは不明なのよ。だから潜入して、『禁書目録(インデックス)』の確保なのよ」


「しかし、僕は日本へ行ったことすらない。まして科学サイド(あちら)となると」


「だから、いちおうガイドをつけるからよし。入ってきてちょうだい?」


ローラ=スチュアートの声に応じて、Tシャツにジーンズの長身の美女が扉を開けて入ってきた。


「神裂 火織! きみがガイド? 『最大主教(アークビショップ)』、世界でも20人ほどしかいない聖人を投入されるのですか?」


「ええ、それほどのことなのよ、よろしかのよし。最善の注意を払ってね。もし『禁書目録(インデックス)』が科学サイド(あちら)側に落ちそうなときは…… 覚悟することよ」


 ―― ”調理”と”化学”が交差するとき、新たな物語が始まる ―― (完)







『とある化学(分子美食学)の調理法(レシピ)』Vol2.3b

2012-01-27 10:02:57 | とある化学
三章:I have thought to never forget it. b《忘れえぬ思い b》


 「神様と肉屋だけがソーセージの中身を知っている」--スウェーデンのことわざ




 「暴走能力の法則解析用誘爆実験(能力体結晶投与実験)」――


 それは表むき、AIMを制御するための実験として行なわれ、被験者である子供たちになんら問題の起こるものではなかったとされていた。
 しかし、実情は、AIM拡散力場を刺激し、暴走の条件を知ることが本当の目的だったのだ。


 暴走は、人為的に発せさせられたもので、人道を無視した人体実験だったのだ。あの子らを使い捨てのモルモットにしたのだ。


 実験に使用された子供たちは、重度の昏睡状態に陥り、数年経った今もなお、一度も目覚めることなく植物状態のままになっている。


 木山 春生が、実験の本当の目的を知ったのは、後になってからであり、こんな結果になるとは夢にも思っていなかった。
 しかし、彼女は、自分が仕出かしたおこないに恐怖し、自分を責め、その行為を悔いた。


 そして彼女は誓った。あの子たちを必ず元に戻すと…… 


 しかし、それは容易なことではなかった。23回―― 子供たちを回復手段を探るために世界一の演算能力を持つ学園都市のスーパーコンピューター、「樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)」を使用しようと試みたが、すべて使用却下されてしまった。


 なぜなら、実験に学園都市の運営を司る最高機関『統括理事会』が関与していて、あの実験自体を隠ぺいしておきたかったからである。


「もう一度、あの子たちに日のあたる場所を走らせてやりたい……」


 木山 春生は、目の前のパソコンを操作し、プログラムを立ち上げた。それは、『幻想御手(レベルアッパー)』のソフトだった。彼女は、みずから高性能な演算装置を作ることを思い立ったのだ。


 『幻想御手(レベルアッパー)』とは、聴くだけで簡単にレベルを引き上げるという効果を持った音楽ファイルのことだが、本当は使用者の脳に干渉することで、脳のネットワークを構築し、その演算能力を使って、「樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)」の代わりにしようと考案されたものだった。


「わたしは、あの子たちを救うためなら何だってある…… そのためなら、たとえ学園都市のすべてを敵に回しても、止めるわけにはいかない!」


 パソコンを見つめるその瞳は、みずから固く誓った決意の色をあらわしていた。







『とある化学(分子美食学)の調理法(レシピ)』Vol2.3a

2012-01-26 11:06:28 | とある化学
三章:I have thought to never forget it. a《忘れえぬ思い a》


 「少し食べ、少し飲み、早くから休むことだ。これは世界的な万能薬だ」--フェルディナン・ヴィクトール・ウジェーヌ・ドラクロワ



 ふたたびAIM解析研究所―― 


 自分のラボに戻った木山 春生は、机に座り、自身の過去を思い出していた。
 
「せんせい…… 木山せんせい」


 そう呼ばれたことがあった。一時期、先進教育局における小児用能力開発研究所での教師の経験があったのだ。それは統括理事会が進める実験の一部としておこなわれたもので、いわば小学校の先生だった。


 彼女が担当したのは、『置き去り(チャイルドエラー)』と称される子供たちで、彼らは、何らかの理由で学園都市に置き去りにされた身寄りない子らだった。


 しかし、木山 春生は子供が嫌いだった。だから気乗りせず、わずらわしい仕事だと思った。


「子供は、デリカシーがないし、失礼だし、いたずらはするし、論理的じゃないし、馴れ馴れしいし、すぐ懐いてくる。だから子供は嫌いだ」


 彼女にとって研究に没頭している方が、はるかに気が楽だった。



 しかし、そんなある日――


  外は雨だった。帰宅する途中で生徒に会った。枝先 絆理という女の子だ。どうやら、ぬれた路上で転んだらしい。


「どうした? 枝先」


「えへへへ…… すべって転んじゃった……」


「わたしのマンションはすぐそこだが、風呂貸そうか?」


「いいの! わあ~ぁ!」


 彼女は、絆理をつれて帰り、お風呂を貸した。


「わあ~あ! お風呂だ!!」


「風呂がそんなに嬉しいか?」


「うん! うちの施設、週二回のシャワーだけだもん。ねえ! 本当に入ってもいいの?」


「ああ……」


「やったー!! みんなに自慢しちゃおっと! うふふっ!!」


 そして風呂に入っている間に、ぬれて汚れてしまった絆理の服を洗ってやった。


「せんせい…… 」


「うむ?」


「あたしでも、がんばったらレベル4とか5になれるかな?」


「今の段階では、何ともいえないな。高レベルの能力者にあこがれでもあるのか?」


「う~~ん、もちろんそれもあるけど…… あたしたちは学園都市に育ててもらっているから…… 、この街の役に立てるようになりたいな~ って思って……」


 風呂から上がった絆理に服が乾く間に、温かいコーヒーを入れてやったのだが、彼女は寝てしまっていた。


 その日の研究する時間がなくなってしまった。しかし、絆理のいたいけな寝顔を見ていると、少しずつ気持ちが変わっていくのわかった。


 「本当に、いい迷惑だ…… 子供は…… 本当に…… きらい…… だ…… 騒がしいし…… デリカシーがない。失礼だし…… いたずらするし…… 論理的じゃないし…… だから子供は……」


  日を追うごとに子供たちに対する親しみがふくらんでいった。でも子供は嫌いだと、ずっと、そう思っていた。実験の最後となるあの日までは――







『とある化学(分子美食学)の調理法(レシピ)』Vol2.2b

2012-01-25 11:51:24 | とある化学
二章:Late-night Confusion ! Ⅰb《深夜の混乱! Ⅰb》


 「運動は食欲を生じせしめ、食欲は運動を必要とする」--ピエール・アンブロワズ・フランソワ・コデルロス・ド・ラクロ




「このあと、街中で上条 当麻(あいつ)と出会って、勝負の決着をつけようとしたのに、あの女(脱ぎ女)を押しつけられるし…… おかげで人目をはばからずに、服を脱ぎだすんだから、あたしの方が恥ずかしかったわよ、もう!」


 美琴は、パジャマに着替えおわり、ベットの上に座った。


「でも…… ちょっと常識はずれだけど、本物の怪物っていうわけでもないし。それより、上条 当麻(あいつ)よ。あいつ!」


 こみ上げてくる怒りを枕にぶつけた。


「上条 当麻(あいつ)の方が怪物よ。あんな、とんでもない能力を持っているなんて…… 」


 彼女は、当麻との勝負したときのことを思いだす。



 それは、街外れの河川敷での勝負のことだった。


「言われなくても、こっちは、ずっとこのときを…… 待ってたんだから!!」


 美琴は、身体から発する空中放電の電撃を、当麻にぶつけた。


「うっ!」


 辺りは、当麻にぶつけた電撃で煙に包まれるが、彼が突きだした右手にすべての電撃を無効化された。


「やっぱ、電撃は効かないか…… 、なら!」


 右手の電撃を地面に向けて放出する―― 


 放出された電撃は、地中に含んだ砂鉄を空中に巻き上げ、彼女の右手で刀に形成されていった。


「えっ? なに!? ちょっと、おまえ得物つかうのズルイんじゃねぇ!!」


「能力で作ったものだもん」


 振りまわした刀は、触れた草むらの葉っぱを真っ二つに引き裂いた。


「ええっ!?」


「砂鉄が振動してチェーンソウみたいになっているから、触れたりすると、ちょっと血とかでるかもね!!」


 美琴は、当麻めがけて走りだす――


「どう考えても、それだけじゃー、すまないと思うんですけど!」


 当麻は、美琴のくりだす刀を避けつづける。


「ちょこまか逃げ回ったって、得物(こいつ)には、こんなこともできるんだから!」


 美琴は、刀していた砂鉄をムチのように形を変える。そして逃げ回る当麻に振り下ろす。


「入った!! かわせるタイミングじゃ……」


 ムチは、完全に当麻に当たるかと思った、しかし、その瞬間、彼の右手がムチを打ち消した。


「強制的に砂鉄に戻された!? ……でも、ここまでは予想どおり」


 強制的に元に戻された砂鉄は風にのって、空中に舞っている。驚きをかくせない美琴だったが、次の手を考えていた。


「し・勝負あったみたいだな……」


「さあ? それはどうかしら!!」


 美琴は、いま一度、放電を発生させて空中に舞う砂鉄を操るのだった。


「おまえ…… 風のった砂鉄まで……」


 砂鉄が、束になって当麻を襲う――


「こんなこと! 何度やったって同じじゃねぇーか!!」


 今までと同じように右手を振るって、砂鉄を振り払った。


 しかし、これは美琴の作戦であり、本当の狙いは当麻の身体に接触することだった。


 つまり、彼が砂鉄を振り払うことに集中している間に右手をつかみ、直接電流を流せ込めば勝てると考えてのことだった。


「とった!! 飛んでくる電撃は打ち消せても…… えっ!? (電流が流れていかない…… 何なのよ!? こいつ!!)」


 『幻想殺し(イマジンブレイカー)』を宿す当麻は、右手で触れるものは、どんな特殊能力も打ち消すことができるのだが、美琴は知る由もなかった。



 当麻の右手を握りしめたことを思い出し、美琴は怒りの対象だった枕を抱きしめながら、顔を赤く染めた。


「あんな…… とんでも能力を持っていたなんて…… し…… 知ってたら、あんなに思いっきり上条 当麻(あいつ)の右手を握ったりなんてしないわよ……」


 美琴は高まりゆく自分の気持ちに動揺する。


「あ・ありえないから…… もう!」


 そして、自分の中の芽生えた複雑の想いを振り払うかのように、抱きしめていた枕を投げつけるのだった。







『とある化学(分子美食学)の調理法(レシピ)』Vol2.2a

2012-01-25 02:44:11 | とある化学
二章:Late-night Confusion ! Ⅰa《深夜の混乱! 1a》


 「新しい料理の発見は、新しい星の発見よりも人類を幸福にする」--ジャン・アンテルム・ブリア=サヴァラン




 木山 春生がビーカーのラーメンを食べていた頃、常盤台中学寮の一室で、御坂 美琴が目を覚ました。


「ふあ~~ぁ…… 、あれ? あたし服のまま寝ちゃったんだ。ふあ~ぁ…… しっかし、今日は疲れた……」



 この日は、美琴にとって忙しい一日だった――


 それは白井 黒子、佐天 涙子、初春 飾利といった、いつもの仲良し四人組でファミレスに集まったことから始まる。


「これは先輩の友達の彼氏さんが、実際に遭遇したっていう話です……」


 涙子の語りで、都市伝説『脱ぎ女』の怪談話をしていた。


「あるむし暑い日の夜、その彼氏さんが、人気のない公園を通りかかったときのこと、一人たたずんでいた女の人に、駅まで道を聞かれたんです」


 四人は窓際のボックス席に陣取って、雰囲気を出すために、大きな黒い布をかぶっていた。


「その彼氏さんが、こころよく道順を説明していると…… どこか虚ろな女の人が…… ふあ~と、手を上げて…… 」


 涙子は、怪談話をダウンロードさせたケイタイ画面を見ながら話す。


「突然! ガバーッと!! 」


「ごっくん……」


「はっ!」


 初春は生唾を飲みこみ、黒子は息を飲む。美琴は、涙子の言葉を弱々しく重ねた。


「ガバーッ…… と……」


 そして三人を見渡しながら、涙子は続ける。


「ブラウスを脱いだんです……」



「『……って、まったくぜんぜん怖くないじゃん!』 ……って思ったんだけど、まさか本当いたなんてねぇ……」


 美琴は、制服からパジャマへ着替えつつ、涙子の話を振り返っていた。