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「リア王」 舞台内容 二幕二場~二幕三場

2010-02-26 14:19:13 | 「リア王」

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・二幕二場
 グロスター伯爵の居城の前、ケントとオズワルドが、ばったりと出会う。前場からの因縁で両者の対立は続いていた。


 二人は取っ組み合いの喧嘩となってしまう。そこへコーンウォール公爵がやって来て、二人の間に割って入り、事の次第を問い詰める。
 オズワルドは軽蔑すべき人物として描かれていて、ケントがリアの良心であるのに対し、オズワルドはゴネリルに対して悪心となっているのだ。

 オズワルドは嘘つきであり、女主人の悪行を阻止しようとせずに、逆にそれを増長させる。ケントはオズワルドを評してこう言う。


Conwall: Why art thou angry ?

Kent: That such a slave as this should wear a sword,
    Who wears no honesty. Such smiling rogues as these,
    Like rats, oft bite the holy cords a-twain
    Which are too intrinse t' unloose; smooth every passion
    That in natures of their lords rebel;
    Bring oil to fire, snow to their colder moods;
    Renege, affirm, and turn their halcyon beaks
    With every gale and vary of their masters,
    Knowing nought, like dogs, but following.

コーンウォール:なぜ怒っているのか?

ケント:こんな下司下郎が剣をさげているからです。
   こんな風にいつもニヤついている奴は、
   どんなに解け難く絡み合った固い親子を繋ぐ神聖な絆を、
   鼠のように二つに噛み切るのです。
   主人の心に兆す欲望なら、何であろうと逆らわず、
   火には油を注ぎ、冷たい気分には雪を被せ、
   主人の風向き次第で、ぐるぐると嘴の向きを変える始末。
   犬と同じで、何も知らずに、ただ、後をついて行くだけです。


 二人の殴り合いで最初に手を出したケントであることから、ケントはさらし台に掛けられることになった。


 ここで新たな事実について知ることになる。ケントがコーディリアと文通しているともらしたことである。
 この事実は今後の展開の鍵となる。





・二幕三場
 野原にてエドガーが登場。彼はグロスター家から出奔し、独り野原を彷徨っている。


 エドマンドの計略に乗せられた形で、父グロスターから勘当され、追われる立場に成り下がった彼は、賎しい姿の乞食となり、気の狂った振りをして、追っ手から身をかわそうとしていた。
 この時点でエドガーは、全てを失ってしまったのだ。これはケントの姿と符合し、リアの近い将来を暗示する。





「リア王」 舞台内容 二幕一場

2010-02-24 14:48:46 | 「リア王」

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 グロスター伯爵の居城の中庭。
 ここは再びサイド・ストーリーへと移る。




 エドマンドはグロスター伯爵の居城にいて、グロスター家の廷臣カランと中庭で出会い、彼からコーンウォール公爵夫妻が父の所に滞在するためにやって来ることを聞く。


さらにはコーンウォール公爵とオルバニー公爵との間に戦が起こるかもしれないという噂を聞くのだった。
 エドマンドは、この重大なニュースにより、自らの陰謀を進める好機であると捉え、速やかに判断し直ちに実行に移すのだ。




 エドマンドの父グロスターは、エドマンドが作成したエドガーからの偽りの手紙を本物であると思い込んで、エドガーを捕まえるために見張りをおいていた。


 エドマンドはそれを理由に兄エドガーをこっそりと匿っていたのだが、先のコーンウォール公爵夫妻が父の所に滞在するためにやって来ることを聞くと、それを利用し、エドガーがコーンウォール公爵のことを悪く言ったので、コーンウォール公爵が彼を捕らえるためにここへ訪れるのだということを仄めかす。


 エドガーには全く身に覚えがないので、躊躇している間に、エドマンドはしきりに逃げるように促し、父が近づいてくる音を聞くと、剣を抜く。小声で彼は兄に逃げてくれと頼みながら、大声で助けを求める。


 エドガーは慌てて逃げ出し、彼が背を向けるや否や、エドマンドは刺客から身を守るために負傷したという作り話をもっともらしく見せるため、自分の腕を傷つけるのだった。
 この陰謀は強引で奇怪きわまるものだけど、成功するのだ。グロスターはすっかり狼狽し騙されてしまう。




 エドマンドは、エドガーが書いた手紙の内容を一歩進めて、今度は父殺しに加担するようにと頼みに来たのだと告げた。


 そしてこの悪巧みに応じないのを見ると、エドマンドを殺して悪巧みを隠そうとしたという作り話をした。


 グロスターはこの作り話を鵜呑みにしてしまい、彼は親不孝な悪党のエドガーを捕らえ、さらにはエドマンドを正式な後継ぎにする。


 次にエドマンドは、コーンウォール公爵夫妻に慎み深いそうな態度を装って取り入り、リーガンが「もしやエドガーは、わたしの父に仕えている乱暴な騎士どもと親しく付き合っていませんでしたか」との問いに、狡猾にも、控えめに承認して、いかにもそれが事実であるという印象を与えた。
 エドガーの名付け親はリアであり、父のリアに対し、腹に一物を企んでいるリーガンは、この状況をリアと無理やり結び付けようとしているのである。




 また、父を守るために負傷したことをコーンウォール公爵に褒められると、「あれは当然の事を行なったまでです」と答え、益々の信用を得て、コーンウォールの仲間に加わるのだった。
 



「リア王」 舞台内容 一幕五場

2010-02-22 11:19:19 | 「リア王」

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 前場と同じく、オルバニー公爵邸の内庭。リア、ケント、道化が登場する。


 ゴネリルに見切りをつけたリアは、次女のリーガンの所に居を移す決心をした。彼女だったら自分を喜んで迎え、彼女によって権勢を取り戻すことが出来るであろう、と考えてのことだった。


 そこでリアは、現在リーガン夫妻(コーンウォール公爵)が滞在している居城の主のグロスター伯爵に手紙を書き、ケントに持たせやる。しかし、一枚上手のゴネリルは、それに先回りして自分に都合のいいような具合に事を知らせるためにオズワルドを使いに出していた。


 リアはゴネリルの策略のもとに今まで味わったことの無い厳しい試練を受けたため、とても惨めな気持ちになっていた。これまで他人に加えてきた権勢を、よりよって我が娘から受けることになったからである。


 リアは心を無力感で満たし、それに堪えられなくなっていた。
 'O, let me not be mad, not mad, sweet heaven !
   Keep in temper: I would not be mad !'
 (おお、神よ、余を気違いにしないでくれ、気違いにだけは!
 お願いだ、正気でいさせてくれ、気違いだけにはなりたくない!)


 リアは、今まで人の下に付いたことがなく、自分の思いのままに振舞ってきたのであろう。しかしこの歳にいたって初めてこんな境遇になったしまったのだ。

 たぶん今までの自分を全て否定されたしまったような気持ちになったに違いない。その事にリアは堪えられなかったのだ。




 これで一幕は閉じる。



「リア王」 舞台内容 一幕四場(4)

2010-02-20 13:31:54 | 「リア王」

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 年老いた父親の当惑しているのを見ても、ゴネリルは少しも哀れとは思わず、反って父に向かってもっと賢明になるようにと説教し、彼の家来の不作法や乱暴な行動を厳しく非難する。
そして厳重な審査によって人数を半数に減らすようにと要求するのだった。しかもこれは厳命であり、有無を言わせないものだった。
        'The shame itself doth speak
   For instant remedy: be then desired
   By her, that else will take the thing she begs,
   A little to disquantity your train;
   And the remainder, that shall still depend,
   To be such men as may besort your age,
   And know themselves and you.'
        (恥知らずな振る舞いも
 ここまで来れば、早急に策を施さねばなりません。
 わたしの言うことをお聞き届けください。
 万が一お聞き入れ頂けぬとあれば、
 直ちにこちらで始末せねばならなくなります。
 そうしてお供として残ります者は、ご自分のお年に
 ふさわしい者、自らの分を弁えて、
 主人の立場をよく心得ている者だけにして下さいまし)


 これらの言葉は、全盛時代のリアが言った言葉であって、それは今、自分の娘から投げつけられたのだ。
この親子地位の逆転は、全てリア自身から出たサビである。自身の愚かさから、娘の手によって苦杯を舐めさせられるのである。




 リアは激しい口調で娘を呪う。コーディリアを罵倒したときは、彼に全て非があったが、今度の正義はリアにあるといってよい。
 'Hear, nature, hear; dear goddess, hear !
   Suspend thy pupose, if thou didst intend
   To make this creature fruitful !
   Into her womb convey sterility !
   Dry up in her the organ of increase;
   And from her derogate body never spring
   A babe to honour her ! If she must teem,
   Create her child of spleen; that it may live,
   And be a thwart disnatured torment to her !
   Let it stamp wrinkles in her brow of youth;
   With cadent tears fret channels in her cheeks;
   Turn all her mother's pains and benefits
   To laughter and contempt; that she may feel
   How sharper than a serpent's tooth it is
   To have a thankless child !'
 (聞け、自然よ、聞け、親愛なる女神(自然)よ、聞いてくれ!
 この雌(ゴネリル)を孕ませる事だけは思い止まって貰いたい。
 こやつを石女(うまずめ)にしてくれ!
 子を生み育てる働きを悉く奪い去るのだ!
 この女の忌まわしい体から尊い子宝を生じさせてくれるな!
 もし、どうしても子を生まねばならぬなら、
 心の拗けた子供を授けてやってくれ、それがやがて長じて、
 この女の苦しみの種となるような無情残酷な怪物を!
 その子をして、この若き母親の額に深い皺(しわ)を刻ませ、
 頬には、流れる涙で溝をえぐらせて、子を育てる母の苦労も
 慈悲も悉く嘲笑と侮蔑の種と化してやるのだ。
 蝮の牙(は)に咬まれるより、恩知らずな子を持つ事の方が
 何倍も苦しいこと思い知れ!)


 凄まじいまでの呪いの言葉、というより捨て台詞! ゴネリルもここまで言われたら根に持つと思う。 

 ここにも(nature)が出てくるが、これは親を思うという意味での「自然の情愛(nature)」であり、
一幕二場でエドマンドの使う(nature)とは正反対の意味である。
この後の自然と言う意味で使う「女神(goddess)」も同様で、いわばリアとエドマンドは対極に位置する。劇が進むにしたがって全てを無くしていくリアと、何もかも手に入れていこうとするエドマンドを対比していくと面白い。




 激怒のために心身ともに疲れ果てて、リアはその場を飛び出していく。しかし、再び戻ってきた彼を、娘は前より冷酷な心で迎えるのだった。


 既にリアの家来は半分の五十人にされていた。リアがあの気まぐれな宣言をしてから、まだ二週間も経っていない間に。



「リア王」 舞台内容 一幕四場(3)

2010-02-17 10:39:05 | 「リア王」

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 リアと娘のゴネリルとの立場が逆転した。そのことの道化は皮肉を込めて次のように評した。
 'Thou wast a pretty fellow when thou hadst no need to care for her frowning;
   now thou art an O without a figure: I am better than thou art now; I am a fool,
   thou art nothing.'
 (娘のしかめっ面を気にせずに済んでいた頃は、おっさんも少しはかわゆげがあったが、
 今のおっさんは数字なしのゼロで、今じゃ、おいらの方がまだましだ。
 おいらは馬鹿(道化)だが、おっさんは何でもないからね)


 ここにも「無(nothing)」が使われている。前にも述べたが、この『リア王』では主人公のリアが劇が進むにつれて全てを失い、限りなく「無(nothing)」に近づいていく。しかし、全てを剥ぎ取られ、「無(nothing)」に近づくことによって、彼自身は、むしろ自己認識を深め、自分の周囲の世界やこの世の不正や不幸といった真実が見えるようになってくるのだ。




 ゴネリルの言葉は、権威に背く、地位も何もない小癪な人間に向かって言うような横柄な言葉であった。
 'Not only, sir, this your all-licensed fool,
   But other of your insolent retinue
   Do hourly carp and quarrel; breaking forth
   In rank and not-to-be-endured riots.'
 (言いたい放題のこの道化ばかりではなく、
 そのほか、お付の家来たちは暇さえあれば
 喚き散らして大喧嘩を引き起こすので、
 余りの事にどうにも我慢できないのです)


 この非難が当たっているにせよ、オズワルドに対するケントの仕打ちを彼女が根に持っていたにせよ、所詮は当初から計画であり、リアは彼女の策に乗せられていた。


 リアは、ゴネリルの物言いにショックを受ける。
 'Are you my daughter ?'
 (おまえは余の娘か?)


 ゴネリルがさらにリアを嗜めるような事を言うのを聞き、リアは激怒するよりは、むしろ唖然としてしまう。
Lear: Doth any here know me ? This is not Lear:
    Doth Lear walk thus ? Speak thus ? Where are his eyes ?
    Either his notion weakens, his discernings
    Are lethargied――Ha ! waking ? 'tis not so.
    Who is it that can tell me who I am ?

リア:誰でもよい、余を知っている者はいるか? この身はリアではない。
  リアはこんな風に歩くか? こんな風に話すか? 目はどこにある?
  気力が弱まり、知力が鈍ったか――ハッ! これでも醒めているとでも?
  そうではあるまい。誰が教えてくれ、余が誰であるのかを?


 この哀れな問いかけに、道化が答える。
 'Lear's shadow.'
 (リアの影さ)