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「ブランコの少女」<上>

2010-08-06 18:35:35 | リチャード・アダムス

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 『ブランコの少女』上、リチャード アダムズ著、百々佑利子訳、評論社


<あらすじ>
 イギリスで陶磁器の店を営むアランは、仕事先のコペンハーゲンで、輝くように美しいドイツ娘カリンと知り合い、たちまち恋に落ちる。
 アランは、彼女をイギリスに呼び寄せ結婚し、二人の甘い日々が始まった。


 当初カリンに不審をいだいていた人々も、やがて彼女の魅力に惹きつけられていく。しかし、アランは彼女の過去を何も知らないままだった…… 。




<感想>
 『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』や 『疫病犬と呼ばれて』といった動物ものファンタジーとはまったく違った雰囲気の恋愛小説になっている。


 アランは、彼の仕事で取り扱う陶磁器のように繊細で、もろさを備えた人物として描かれている。この点、著作者アダムスの心情を投影した、自伝的な小説といった趣きがある。


 相変わらずの描写の細かさ、美しさは当然のことながら、カレンの美貌について、意図的に細かい描写をしておらず、読者の想像にまかせて、より一層美しさを際立たせているのは鮮やかだ。


 あまり恋愛小説は読まないが、男性視点による本作品は、一気に読んでしまった。アダムスの読者を惹きつける文章力は、さすがというほかにない。
 



「疫病犬と呼ばれて」<下>

2010-07-27 19:31:51 | リチャード・アダムス

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 『疫病犬と呼ばれて』下、リチャード アダムズ著、中村妙子訳、評論社


<あらすじ>
 動物生態研究所では、ローフは毎日のように水槽につけられ、溺れるまで泳がされていました。スニッターは頭を開かれて外科的手術を施され実験の日々を送っていました。


 研究所を逃げ出した二匹の犬は、満足な餌を得ることができず、日々衰弱していきます。また、彼らに家畜を襲われ、被害を蒙った農夫たちの犬を討伐する狩猟隊が迫ります。
 そして、二つの不幸がおきました。一つは、銃が暴発しスニッターの前で一人の男が死んでしまいます。
 もう一つは、ローフを撃ち殺そうと狙った男が足を滑らせ転落死してしまったのです。さらには二匹の犬が研究所を逃げる際、ペスト菌に感染しているという疑いも受けてしまいます。


 新聞社がこぞって、このことを記事にして二匹の犬を「疫病犬」と称し追い回し始めました。政府の役人も登場し、事態はとんでもない方向に―― 。そして、軍隊まで出動するはめになるのです。


 果たしてローフたちは、飢餓、狩猟隊や軍隊の銃による死の脅威から逃れ、安住の地を見つけることができるでしょうか?




<感想>
 今回の『疫病犬と呼ばれて』は、著作者の思想や哲学がふんだんに語られていて、『ウォーターシップダウンのうさぎたち』に比べて、大人を意識して書かれている。


 作中にシェークスピア、ミルトン、ディッケンズ等のSFからファンタジーまで、数多くの引用が施されており、歯切れの良い作風に仕上がっていると思う。


 一見すると動物ものファンタジーという感じがするが、実はサスペンス風になっていて、二匹の犬が如何にして、絶望的な状況を乗り越えていくのか―― ということが作品の中心に据えられている。


 現在、この『疫病犬と呼ばれて』は、絶版になっているが、是非とも復刻してもらいたい一冊である。



「疫病犬と呼ばれて」<上>

2010-07-22 11:54:24 | リチャード・アダムス

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 『疫病犬と呼ばれて』上、リチャード アダムズ著、中村妙子訳、評論社



<あらすじ>
 イギリスのとある田舎に動物生態研究所があった。そこでは来日も来る日も多数の動物たちが過酷な実験を課せられていた。
 ある日、その中の二匹の犬、ブリタニー・スパニエル犬に似た黒い雑種のローフと、白と黒の斑があるスムース・フォックステリア犬のスニッターが逃げだす。


 彼ら二匹は、追っ手をかわしつつ野生の犬として生きていくことを決める。しかし、現実は厳しくなかなか餌を獲ることもままにならなかった。
 そんな時、彼らの前に野生の一匹のキツネが現れた。このキツネは野生での生き方を教える代わりに共同で餌を確保することを提案したのだ。


 かくして二匹の犬と一匹のキツネという奇妙な組み合わせは、イギリスの片田舎で放牧された羊や、農家で飼っているニワトリを襲い始めるのだった。
 そんな彼らに被害を受けた農夫たちは、野犬狩りと称して狩猟隊を組織し、ローフたちを撃ち殺すため山へと入っていった―― 。果たしてローフたちの運命は如何になるのか?




<感想>

うさぎの次は犬が主人公の話。『ウォーターシップダウンのうさぎたち』でも、そうであったが、動物の視点から世界を見ると、かくいう見えるとった感じで、描写の細かさが光る。

 さらに構成の妙があって、スニッターたち、それ追いかける農夫たち、はたまた動物生態研究所の所員、といった別々構成を組みながら話を進めていくので、読者を飽きさせない。


 追われる立場である主人公たちが、様々な危険を切り抜けていく場面などは、ちょっとしたサスペンスを思わせる内容だ。



「ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち」<下>

2010-07-15 22:14:46 | リチャード・アダムス

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 『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』下、リチャード アダムズ著、神宮輝夫訳、評論社


<あらすじ>
 新天地のウォーターシップ・ダウンにたどり着いたヘイズルたち十一匹のうさぎたちは、このうさぎ村を発展させるため、様々な困難に知恵と勇気と友情で立ち向かっていく。


 村には一匹の牝もいません。これでは一代限りで、村は滅んでしまいます。そこで隣のうさぎ村であるエフラファへ赴き、うさぎの移住を持ちかけに行くのですが、そこには独裁者のウンドワート将軍が立ちはだかり、ヘイズルたちも自らの支配化に治めようとするのです。


 はたしてヘイズルたちは、この難局をどのように乗り切っていくのでしょうか―― 。




<感想>
 この物語のウサギたちは、典型的な架空の動物物語に比べると、あまり擬人化されておらず、習性や身体的能力は現実のうさぎに近い形で描かれています。
 しかし、それとは反対に精神的な面においては、彼らは高い知性を持ち、独特の言語やことわざ、さらには詩歌や神話といった高度な文化まで持つ存在になっています。
 ある意味、イソップ童話のような動物のお話とは全く種類の異なった生粋の英雄物語のような味わいをもったファンタジーです。
 最後のエピローグは、ちょっぴり感動してしまいました。



「ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち」<上>

2010-07-15 21:55:01 | リチャード・アダムス

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『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』上、リチャード アダムズ著、神宮輝夫訳、評論社


<あらすじ>
 ウサギたちの楽園・サンドルフォードに一匹のうさぎがいました。彼の名はヘイズル。まだ経験も浅い若いうさぎ(一年子)です。
 ヘイルズには、ファイバーという一見、神経質で見た目はひ弱ですが、意志は強く危険を察知する能力をもった親友がいました。
 二匹はサンドルフォード繁殖地で気楽な日々を送っていました。そんなある日、ファイバーが得体の知れない危険を察知し、この地を離れるようにと言い出したのです。
 しかし、ファイバーの言うことを周りは信じませんでした、ヘイズルとその仲間たちを除いて。


 そして新天地を目指し、ヘイズルとファイバーを含めた、十一匹のうさぎたちが大きな冒険へと旅立ったのです―― 。




<感想>
 『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』は、イギリスのファンタジー作家リチャード アダムズの処女作で、イギリスの二大児童文学賞、カーネギー賞とガーディアン賞を受賞した大ベストセラー作品です。
 うさぎたちの習性とか、野に咲く雑草の花や川とか、土地のあらゆるものを、こまかく精密に描写していて、作者はうさぎの視点で物語を描ききっています。
 また、物語の構成も素晴らしく、二重プロットになっており、ヘイズルたちの筋と、うさぎたちに伝わる伝説のうさぎ、エル=アライラーにまつわる寓話の筋がちりばめられて、面白くて最後まで一気読んでしまいました。