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( kindle版あり )
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「 ◆プロローグ一部公開◆
私が息子を持つ母親となった最初の年は、
マスコミ、芸能界、政界の権力者による性的暴力が
全国的に明るみに出始めた年とほぼ同時期だった。
ニューヨーク・タイムズ紙とニューヨーカー誌で、
ハーヴェイ・ワインスタインの性的暴行疑惑
に関する最初の記事が掲載されたのも、
息子がまだ生後六週間のときだ。
授乳しながら、
私はそれらの記事をスマートフォンで読んだ。
その後も次々と同じような話が浮上した。
その後も次々と同じような話が浮上した。
ロイ・ムーア、チャーリー・ローズ、
マット・ラウアー、ルイス・C・Kなど。
責任逃れをしてきた男性たちの話、
何年にもわたり口をつぐんできた女性たちの話、
性的暴行疑惑の加害者を擁護してきた大勢の人々の話。
それらの話が突然ソーシャルメディア上に溢れ返った。
押し寄せてくるその波に、
その重さに、息苦しさと、
時折、激しい怒りを感じていた。
そしてそれは、
絶えず頭を悩ます、ある疑問を心に残した。
息子がそうならないように、
どう育てればよいのだろうかと。
私が息子に教えたかったのは、
私が息子に教えたかったのは、
性暴力を振るわないということだけではない
(そんなことは言うまでもない!)。
彼には、性差別的あるいは暴力的な行動から目を背けず、
それに立ち向かえるような人になってほしいと考えていた。
そして、少女や女性、他の少年や男性、
また自分自身との関係を育む方法を知ってほしかったのだ。
息子を出産した半年後、私は育児休暇から戻り、
息子を出産した半年後、私は育児休暇から戻り、
ワシントン・ポスト紙の調査記者としての仕事に復帰した。
その五ヵ月後、ポスト紙の情報受付窓口に、
匿名の女性から、
彼女がまだ高校生だった三〇年以上も前に、
同じく高校生だったブレット・カヴァノーから
性的暴行を受けたという内容のメールが届いた。
当時、カヴァノーはトランプ大統領が指名する
次期最高裁判事の最終候補者の一人であった。
私の元に舞い込んできたその情報を受け、
私の元に舞い込んできたその情報を受け、
私は彼女に電話をかけた。
彼女はワシントンの有力者に
自分の体験を知ってほしかった一方で、
公に名乗り出ることは望んでいなかった。
その後の二ヵ月間、
どのように話を進めていけばいいのか
頭を抱える彼女と私は連絡を取り合い、
可能な場合はどんなときでも
(職場の窓のない一室で息子のために搾乳していたときも、
バーモント州のある山の頂上を目指して
家族と土砂降りの中、
ハイキングをしていたときも)、
彼女と会話やメールを交わすよう努めた。
最終的に、
彼女は自分の話で何かが変わるわけがないと考え、
口をつぐむことを選んだ。
しかしその後、彼女の訴えに関するニュースが、
彼女の許可なく他のメディアに流れ始めたのだ。
そうして、夏の終わりに、
カリフォルニア州で心理学教授を務める彼女、
クリスティン・ブラジー・フォードは、
自分の体験談が公にされるのであれば、
自分の口で語るべきだと判断したのであった。
——プロローグより
著者について
【著者】
エマ・ブラウン Emma Brown
ワシントン・ポスト調査記者。
エマ・ブラウン Emma Brown
ワシントン・ポスト調査記者。
Center for Investigative Reporting
とThe Boston Globeでインターンを務めた後、
2009年にThe Washington Postに入社。
著書に本書To Raise a Boy: Classrooms,
Locker Rooms, Bedrooms,
and the Hidden Struggles
of American Boyhoodほか多数。
【訳者】
山岡希美(やまおか・きみ)
翻訳家。16歳まで米国カリフォルニア州で生活。
山岡希美(やまおか・きみ)
翻訳家。16歳まで米国カリフォルニア州で生活。
同志社大学心理学部卒。
訳書にジェニファー・エバーハート
『無意識のバイアス――
人はなぜ人種差別をするのか』(明石書店)。
共訳に『リモートワーク』(明石書店)、
『教えて! 哲学者たち』(全2巻、大月書店)など。 」(内容)