鞍馬の火祭
次代へ伝える
鞍馬にいる知人からこんな話を聞いた。
昔ながらの火祭存続への不安は、
増加する観光客のせいばかりではない。
祭りの主役である松明(たいまつ)の材料となる
ミツバツツジほか各種のシバやフジヅルなどの確保が、
年々難しくなっているせいでもある。
これはなかなか深刻な問題だ。
春から始まるシバ刈りは、
最近では、どこに十分なシバがあるのか、
その場所探しから難航を極めるという。
以前のように、
常日ごろから山に入る人がほとんどいなくなったことも原因。
また、
仮にシバを見つけても、
花の咲くことを楽しむ人も多い。
環境意識の高まりもある。
容易にシバを刈りとれなくなってきたという。
「毎年毎年、保存会の方に探し回ってもらい、
見つかれば、持ち主にお願いして、
刈り取らしてもらっているが、
こんな不安定なことではいけない」と話すのは、
鞍馬本町の区長さんだ。
祭りの存続をかけて
鞍馬の山中に由岐神社名義で、
土地約6万平方メートルを確保した。
木々を伐採した後の場所で、
そのまま放置すれば、
さまざまなシバが自然に生えてくるという。
「時代も環境も変わった。
人のふんどしで相撲をとろうとしても、
いつまでも続かないですよ」と、
自立して祭りを続けようとする鞍馬のチャレンジを語る。
鞍馬ではどんな変化があっても、
昔ながらの火祭ができるよう、
祭りのさまざまな決まりごとを正しく伝えなければという意気込みが強まっている。
今のうちに、祭りの記録を完全に残しておこうというのも、その一つ。
昨年、鞍馬では初めて火祭の生中継を実施した。
鞍馬温泉や御旅所などに大画面を置いて、
祭りの観客に離れた場所でもクライマックスを味わってもらおうという試み。
観客の分散化で、
少しでも祭りをやりやすくしようという狙いがあったが、
その一方で、
祭りの記録を残す目的もあったという。
映像作家唐津正樹さんと
演出助手を務めた木村文洋さんを中心とした
町家プロダクションのメンバー。
「火のすごさはさりながら
、御所から御霊が来たことが、
仲間から他の仲間へと伝達されていく諸礼の儀式など、
なんと興味深い祭りか、と驚きました。
家をあげて取り組む鞍馬の姿勢にも、
祭りを超えた感動がありましたねえ」と唐津さん。
青森出身でねぶた祭を知る木村さんは
「ほんとうに地域に密着した祭り。
祭りの全容、衣装や松明などの詳しい解説もいれた。
地元の人でも役割が厳しく、
祭り全体を見ることができないという人もいるので、
このDVDは役に立つと思う」と語る。
同様の中継は、今年も行われていた。
一方、
行政も、火祭の保存と活性化に向け動き出している。
地元の伝統行事などにかかわる組織の連携を図り、
共通する問題の解決を目指すシンポジウム開催や、
映像による記録を行う京都市の事業。
春からの火祭の準備作業にも同行し、
その魅力に目を見張った。
「春からシバ刈り、シバ出し、
9月にはシバ分け
、松明作りだけみても町中の共同作業。
鞍馬のコミュニティーの結束力そのものに、
火祭のパワーのすごさがあるんだなと気付かされました」という。
鞍馬は今年(2013年)も盛大に火祭が行なわれた。
さまざまに環境が変わる中で、
昔ながらに独自の祭りを、
という住民たちの思いは如何なく発揮されたと思う。
今年も、例年以上の人出と興奮の一夜だった。
末永く続いて欲しいと思う。
1073年ものの歴史がある
京都の三大奇祭を続けて欲しいと願うばかりです。
祭り大好きオヤジ・・