Ivan Lins、Keith Jarrett、Ravel、を聴き
張り裂けるようにして
すがるようにして
弾き始めた音の
そのあまりの醜さ
技巧を置き去りにする音の流砂が
頭蓋の奥底の漏斗の中心へと沈み込むとき
感傷との紙一重の差で
紙で手を切るようにして
痛みを残す
取り残されるものの音
見送るものの音
孤独のなか だれひとり 聞き手のない音
狂い 獰猛に鍵盤を掻き毟り . . . 本文を読む
世の中には、孫をひざに抱き、預金通帳を見せ、
「さあ、○○ちゃん、ここ見てごらん。
そうそう、そこそこ。
さあ、0の数が、いくつあるか、数えてみようかぁ。
いーち、にー、さーん、しー、ごー、ろーく、しーち、
はーち、・・・ほーら、8つもあったねぇ、うひひひひ。
億っていうんだよ、これねえ、いひひひひ。」
と笑う爺がいるそうであるが、
これぞ人間であり、小市民であり、愛らしいことこの上 . . . 本文を読む
「夏幾日かを
咲いている薔薇たちとともに生きて
ひらいている彼女らのたましいの
まわりにただようものを呼吸する。
散っていくひとつひとつの花を
心をうちあける伴侶となし
散っていくこの姉妹に先立たれる
それは ほかのどの花の中にももういない。」
「あの当時なら 吹く風が
われらの愛の傷口から
静かな炎を奪い去ろうとすれば
できたのだし
われらの魂の中にまで
不 . . . 本文を読む